人的資本経営の取り組み
基本的な考え方
NTT東日本グループは、多様性に富んだ社員一人ひとりが、主体的に自身のキャリアを考え専門性を高め、挑戦し続けることによって働きがいを実感しながら「個」を成長させることや社員自身がワクワク感をもって働くことが、お客様への新たな価値提供、ひいては企業価値の向上や会社の持続的な成長・発展につながると考えており、人事給与制度の見直しや、専門性・スキルを磨く機会の提供等の環境整備を進めています。
具体的には、
@ジョブ型人事制度の導入(管理職)・専門性を軸とした人事給与制度への見直し(一般社員)
A社員のワークインライフの実現に向けた時間と場所にとらわれない柔軟な働き方の推進
B社内外副業の推進や次世代リーダー・デジタル人材育成に向けた自律的なキャリア形成・成長支援
社員のEX向上の実現
人事制度見直し
事業構造を転換し、新たな価値創造が求められる中、経営戦略と人事の連動性をこれまで以上に高めていく必要があります。
2021年10月から全管理職に導入しているジョブ型の人事給与制度は、年次・年功から脱却し、従来の適材適所から適所適材へと転換を図り、会社業績や個人の業績と報酬がより連動する仕組みとしました。これにより、戦略実現に必要な役割・仕事(ポスト)に見合う人材の配置を可能とし、社員のチャレンジ機会の創出・拡大を図っています。
ジョブグレード制度
一般社員については、高い専門性やスキルを発揮し、自らのキャリアを切り拓き、真に実力あるプロフェッショナル人材へと成長していくことを目的として、本年4月に新たな人事給与制度を導入しました。
具体的には、営業(セールス・SE等)、開発(サービス・プロダクト開発等)、IT(ITアーキテクト、ITスペシャリスト等)、インフラエンジニア、コーポレート(総務・人事、財務等)、不動産・建築、スマートエネルギー、研究開発等、外部市場を意識した18の専門分野を設け、分野ごとに求められる専門性や行動レベルを明確化した“グレード基準“を設定しました。また、これら“グレード基準“に基づき、高い成果を上げた社員が適正な評価を受けることが可能な絶対評価の導入や、昇格における最短在級年数廃止等を行い、専門性の獲得・発揮度に応じて昇格・昇給していく仕組みとしました。
今後は、採用・育成・配置すべてのフェーズにおいて、専門性を意識した運用へ転換を図り、社員の自律的なキャリア形成を支援していきます。
また、一般社員における専門性を軸とした人事給与制度の導入にあわせて、特に市場価値の高いスキル、高い業績を発揮する社員をより高く処遇するスペシャリストグレードを創設しました。
マネージャーにならなくても、高い専門性を背景に管理職と同等の処遇を受けられる仕組みを設けることで、社員のキャリアの選択肢を広げ、更なるモチベーションの向上やパフォーマンスの発揮につなげていきます。
社員のワークインライフの実現に向けた時間と場所にとらわれない柔軟な働き方の推進
NTT東日本グループではこれまで、時短勤務や分断勤務、スーパーフレックス制度等、社員が自律的に働く時間を選択できる制度を整備してきましたが、2022年7月、日本全国どこでも自由に居住して勤務できる「リモートスタンダード」を導入し、より自身のライフスタイルに合わせた働き方を選択可能にしました。
オフィスワーカー中心の本社組織では96%がリモートスタンダードの対象となっており、リモートワーク実施率は70%を超えています。
また、リモートスタンダードの活用により、東京の本社に勤務しながら地元へ移住し、本業と並行して社外の副業を行うことで地元に貢献したいという夢を実現したり、パートナーの転勤に伴い遠方に移住し、家族と共に育児を楽しみながら仕事と両立したりするなど、社員個々人のキャリア・ライフステージに合わせた働き方を可能にしています。
また、社員の勤務時間に加え、クラウドワークプレイスのデータ(会議参加、メール送信数、資料作成等)を可視化することで、マネージャーは社員の日々の作業内訳の把握が可能となり、体調を確認するパルスサーベイの結果と合わせて、社員の状況を知ることでリモートワーク下においてもりより精度の高いマネジメントにつなげています。
さらに、リモートワーク下における働きやすさの向上にも注力しており、サテライトオフィス等の「座席予約アプリ」を内製し、場所・時間問わず手軽に座席予約ができることに加え、心理的安全性向上に向けて、「感謝・称賛し合えるアプリ」も内製し、社員の活躍の見える化や活発なコミュニケーションを推進しています。
リモートワーク実施率推移
2022年度 | 2023年度 | |
---|---|---|
リモートワーク実施率※ | 72% | 71% |
- ※オフィスワーカーのみ
人材育成・キャリア支援戦略
基本的な考え方
NTT東日本グループでは、「つなぐ、を、つよく」の精神で変革を成し遂げるため、人材育成理念「つなぐDNA」を旗印に掲げ、主体的な能力開発を促す施策の積極的展開に加え、多様な人材開発プログラムによる個々のキャリア開発支援等、事業活動を支える高い実務遂行能力を有する人材の育成に取り組んでいます。
人材育成理念「つなぐDNA」という言葉には、物理的に通信回線をつなぐ、人や社会を通信ネットワークでつなぐ意味合いに加え、先輩から受け継いだ技術・ノウハウに磨きをかけ、その時代に相応しいサービスとしてさらに発展させ、後輩へと「つなぐ」ということにこだわり、今後も全力をあげてつなぎ続ける気概を持った人材を育成していく、という思いも込められています。
また、人材戦略の基本コンセプトとして「個の成長」「組織・チームの成長」の連動を掲げ、社員の専門性の向上や能力開発を通じて、新たな価値創造をめざしています。
NTT東日本の人材育成戦略
ソーシャルイノベーション企業の実現に向けた多様な人材の育成
NTT東日本グループでは地域の未来を支えるソーシャルイノベーション企業の実現に向けて、「個」の成長と「組織」の成長を連動させ、新たな価値創造をめざしています。
個の成長においては社員の主体性・挑戦性を最大限に引き出すために、役職に応じた階層別研修や、社内外研修・資格取得へのチャレンジを推奨・支援しています。具体的には社内研修では約90のコースを揃えており、ビジネス営業力を強化するための提案営業研修、設備をつなぐ知識を習得するための開通業務知識研修など、2023年度に延べ約9,400名の社員が自ら受講しました。さらに通信教育講座約300講座、社外研修約180のコースをラインナップし、2023年度は約12,800名が受講しました。そして、社員に対して専門性を高めるために社内外資格の取得を推進し、NTT東日本の独自資格である社内資格には2023年度に延べ約13,200名がチャレンジしました。
階層に応じた社員向けの研修では、個々人の強みを伸ばし組織力・チーム力の最大化へつなげるためのさまざまな研修を実施しています。
具体的には、役割認識や能力開発の習得を目的として、各階層に応じた新入社員研修・リーダー層研修・マネジメント層研修等を実施しています。
また、昨年度より経験者採用社員オンボーディング研修(管理者向け)を新しく設け、経験者採用社員の早期立ち上がり支援方法、より良いチームへの再構築方法なども取り組んでいます。
ソーシャルイノベーション企業の実現に向けては従事する業務の専門性に加えてデジタルスキルが重要となることから、独自のデジタル認定制度を発足し、社員一人ひとりの基礎的なデジタルスキルから、各専門分野の事業推進に必要な高度デジタルスキルの習得を強化しています。
具体的にはデジタル技術のスキルレベル等に応じて4段階の人材を定義するとともに、専門スキルごとに11のジョブタイプに分け、現在までにデジタル人材約5,000名を創出しています。
研修実績(NTT東日本グループ)
2022年度 | 2023年度 | |
---|---|---|
研修時間 | 111万時間 | 111万時間 |
一人当たりの研修時間 | 36時間 | 37時間 |
研修費用 | 23.7億円 | 26.9億円 |
一人当たりの研修費用 | 146,487円 | 168,470円 |
資格取得者 | 18,452人 | 15,904人 |
自律的なキャリア形成・成長支援(リスキリング)
NTT東日本グループでは、多様な人材が主体的にキャリアを考え、実現に向けて行動することが、社員一人ひとりの人生の充実につながると捉え、社員のキャリア自律や成長を支援しております。社員が自らキャリアを切り拓き、高い専門性を有する人材へと成長することで、組織・チームの成果の最大化を図り、事業の成長を目指してまいります。
社内ダブルワーク、社外チャレンジワーク(社外副業)、キャリアコンサルタント面談の推進
2022年10月、就業時間の20%および6ヶ月を目安として、NTT東日本グループ内の本業以外の業務に従事することが可能なダブルワーク制度を開始するとともに、2023年5月より、平易に副業案件を探索・応募することが可能な社外副業プラットフォームの運用を始めています。
社内ダブルワークは、これまでに800名以上の社員が組織の枠組みを超えて取り組んでおり、社員のスキルアップだけでなく、組織理解や新たな人脈形成など社員のキャリア形成支援を図っています。また、社外チャレンジワークは、300名を超える社員が社外にも活躍の場を広げており、社内外での高度かつ実践的なスキルの磨き上げや、習得した知識・スキル等の本業への還元をめざしています。
さらに、2022年10月より、社内外の国家資格キャリアコンサルタント保有者と1対1で面談をおこなう企業内キャリアコンサルタント施策を展開し、社員のキャリアに関する悩みの解消を通じて、社員一人ひとりが自分らしく働くことができる環境をめざしています。
公募型人材育成プログラムの展開
NTT東日本グループでは、中核人材として将来の経営環境の変化や事業フィールドの拡大に即応して自ら事業変革を牽引できるリーダー人材を育成することを目的に、NTT East College、社外派遣施策などの公募型人材育成プログラムを導入しています。
次世代リーダーの育成に向けて2023年7月より公募型育成プログラムとして、NTT East Collegeを開校し、経営・次世代リーダー人材の創出をめざすNext Generation Executiveおよび、個人特性に応じた多様な学びとともに、視野拡大をめざすFundamentalの2つのコースを創設しました。2023年度はNext Generation Executiveコースに約20名、Fundamentalコースに約100名が参加し、他企業との交流プログラムを通じて、社外に通用するためのスキルの習得、経営観の醸成に取り組んでいます。
また、社外派遣施策では経営全般に関する体系的なビジネススキルや理論、あるいは専門性の高いスキル・理論の習得・実践を目指す海外・国内の大学院への派遣コース、および、各分野の専門的かつ先端的な知識を他企業への派遣によって伸長・拡大させ、さらに異文化での経験によるリーダーシップやバイタリティの醸成を目指す海外・国内企業への派遣の2コースを設けています。
このコースでは1年〜2年間の社外経験を通じて、将来の経営環境の変化や事業フィールドの拡大に即応して、自ら次号変革を牽引できる人材を多く輩出し、NTT東日本グループへの還元を目指しています。
NTTグループの学び舎「NTT中央研修センタ」
育成施策の基盤となる「NTT中央研修センタ」では、ICTを支える企業の研修環境の提供に加え、NTTe-City Laboをオープンし、スマート農業、ドローン、eスポーツ等、さまざまな分野の最新技術やソリューションを実証・体験できる施設としても展開しています。
NTT中央研修センタでは、現役の社員だけでなくOBの方々に施設を見学いただく他、お花見の時季には地域の方々に桜並木を開放する等、多くの皆さまに愛される施設として活用しています。
〈学是の由来〉
昭和41年に社員の精神的支柱となるべきサービス精神の自主的高揚・浸透を図るための2本柱として「反省・協調」を学是として制定しました。その後、昭和47年に情報革新と時代の進展に呼応し、社員に最も要請されるのは創造性の開発であるとの理念から「創造」を加え、新たな学是としました。
男女の賃金差異
男女の賃金の差異(単体)
区分 | 男女の賃金の差異 | |
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2023年度 | 全労働者 | 76.6%※ |
- ※男性の賃金に対する女性の賃金の割合
- ※「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)に基づき算出
人的資本に関するその他の取り組み
健康経営の推進
社員本人はもとより、社員を支える家族の健康保持・増進にも配慮することが、社員一人ひとりの働く意欲や活力の向上、ひいてはグループの成長と発展につながるものと考え、健康保持・増進、メンタルヘルスケア、福利厚生の充実等に取り組んでいます。
ダイバーシティ&インクルージョン(女性活躍推進等)
市場環境の変化やお客さまニーズの多様化等を背景に、身近な総合ICT企業としての今後の成長のため、ダイバーシティ・マネジメントを重要な経営戦略として位置づけ、ダイバーシティビジョンおよびダイバーシティコミットメントを策定し、それらに基づいた各種施策に取り組んでいます。
労働安全衛生水準の向上
社員の安全・健康が、健全な事業活動の基盤であるとの認識の下、グループ内はもとより、パートナー企業とも一体となって安全・健康の取り組みを推進しています。
コンプライアンスの徹底
すべての役員および社員についての企業倫理に関する具体的行動指針である「NTTグループ企業倫理規範」に基づき、NTT東日本グループ全体で企業倫理の確立に向けた取り組みを推進しています。