2040年カーボンニュートラルの実現
基本的な考え方
気候変動はグローバル社会へ甚大な影響を及ぼし、当社の事業活動における影響も例にもれません。NTT東日本グループは、気候変動への取り組みを推進することは、NTTグループの役割の1つだと考え、再生エネルギーの導入等による自社の事業活動における温室効果ガスの削減に全社一体となって取り組んでいきます。
NTT東日本グループの環境基本方針(抜粋)
- 温室効果ガスの削減
IOWNの導入や再生可能エネルギーの開発・利用拡大、カーボンニュートラルに貢献するサービス提供等により、NTTグループの事業活動および社会における温室効果ガス削減に取組みます。
NTTグループ「NTT Green Innovation toward 2040」
目標と実績
| 指標 | 2022年度 | 2023年度 | 2024年度 | |||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 目標値 | 実績 | 目標値 | 実績 | 目標値 | 実績 | |
| 温室効果ガス排出量(スコープ1&2) | 52.4万t-CO2e (対前年:▲10%) |
46.8万t-CO2e (対前年:+4%) |
45.5万t-CO2e (対前年:▲3%) |
45.5万t-CO2e (対前年:▲3%) |
44.0万t-CO2e (対前年:▲3%) |
44.0万t-CO2e (対前年:▲3%) |
| 消費電力量(自責分) | − | − | − | − | 13.9億kWh | 13.9億kWh |
| 一般車両のEV化率 | − | 26% | 40% | 40% | 53% | 56% |
- *対象範囲:NTT東日本グループ
温室効果ガス(GHG)排出量と電力使用量実績
NTT東日本グループはGHG排出削減目標を設定し、GHG排出量削減につながる取り組みの推進により、2024年度のスコープ1および2排出量は約44.0万t-CO2eとなり、2018年度比39%削減を達成しました。
今後も、排出量の削減に向けて、NTT東日本グループ全体で取り組んでいる省エネ・節電や自社の消費電力のグリーン化、ガソリン等を使用する業務用車両の削減等、CO2排出量の削減につながる施策をさらに推進していきます。
また、サプライチェーン全体を含めた環境負荷低減に向けて、「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン(Ver2.7)(2015年3月改訂 環境省・経済産業省)」に基づき「スコープ3」を算定しています。「スコープ3」の算定精度を向上させるとともに、サプライチェーン全体での環境負荷低減に向けた取り組みを強化していきます。
NTT東日本グループ 温室効果ガス(スコープ1、2)排出量・削減率推移

- *対象範囲:NTT東日本グループ
NTT東日本グループ 温室効果ガス排出量(スコープ1、2、3)
| スコープ、カテゴリ(単位:万t-CO2e) | 2022年度 | 2023年度 | 2024年度 | |
|---|---|---|---|---|
| スコープ1 | 2.5 | 2.4 | 2.2 | |
| スコープ2(マーケット基準) | 44.3 | 43.1 | 41.8 | |
| スコープ3 | 216.6 | 174.7 | 229.2 | |
| カテゴリ1 | 購入した製品・サービス | 21.3 | 12.3 | 52.2 |
| カテゴリ2 | 資本財 | 60.1 | 48.1 | 41.9 |
| カテゴリ3 | スコープ1,2に含まれない燃料およびエネルギー関連活動 | 9.3 | 9.2 | 8.9 |
| カテゴリ4 | 輸送、配送(上流) | 0.1 | 0.1 | 0.1 |
| カテゴリ5 | 事業から出る廃棄物 | 0.4 | 0.3 | 0.3 |
| カテゴリ6 | 出張 | 0.2 | 0.6 | 0.7 |
| カテゴリ7 | 雇用者の通勤 | 0.1 | 0.1 | 0.1 |
| カテゴリ8 | リース資産(上流) | 算定対象外 | 算定対象外 | 算定対象外 |
| カテゴリ9 | 輸送、配送(下流) | 算定対象外 | 算定対象外 | 算定対象外 |
| カテゴリ10 | 販売した製品の加工 | 算定対象外 | 算定対象外 | 算定対象外 |
| カテゴリ11 | 販売した製品の使用 | 21.6 | 21.5 | 28.5 |
| カテゴリ12 | 販売した製品の廃棄 | 1.4 | 1.4 | 1.4 |
| カテゴリ13 | リース資産(下流) | 102.2 | 81.1 | 95.1 |
| カテゴリ14 | フランチャイズ | 算定対象外 | 算定対象外 | 算定対象外 |
| カテゴリ15 | 投資 | 0.0 | 0.0 | 0.0 |
| スコープ1,2,3合計 | 263.4 | 220.2 | 273.2 | |
- *対象範囲:NTT東日本グループ
NTT東日本グループ 電力使用量推移
| 単位 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | 2024年度 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 使用量 | 億kWh | 13.3 | 13.0 | 13.4 | 13.9 | 13.9 |
| うち再生可能エネルギー | 0.8 | 3.2 | 2.7 | 3.5 | 4.7 |
NTT東日本グループ 電力使用量および温室効果ガス排出量の内訳
| 単位 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | 2024年度 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 電力 | 億kWh | 13.3 | 13.0 | 13.4 | 13.9 | 13.9 |
| 排出係数※ | kg/kWh | 0.425 | 0.335 | 0.438 | 0.433 | 0.421 |
| 電力起因のCO2 | 万t-CO2e | 56.4 | 43.7 | 44.2 | 42.7 | 41.8 |
| 社用車のCO2 | 0.8 | 0.7 | 0.6 | 0.5 | 0.5 | |
| ガス・燃料のCO2 | 2.4 | 2.2 | 2.0 | 2.2 | 2.2 | |
| CO2排出量合計 | 59.7 | 46.6 | 46.8 | 45.5 | 44.0 | |
| NTT東日本グループ 全体におけるカバー率 |
% | 100 | 100 | 100 | 100 | 100 |
- ※排出係数は、NTT東日本グループが電気事業者ごとに使用している電力量に応じて、各電気事業者が毎年公表している排出係数を加重平均した値です。
自社に関するCO2排出削減
通信設備およびオフィスにおける省エネ
NTT東日本グループの事業活動におけるCO2排出量の90%以上は、通信設備やオフィスでの電力使用に伴うものです。特に、近年のデータセンターにおけるIT装置の高密度化および高発熱化に伴い、データセンターの電力使用量は今後ますます増加することが予想されます。電力使用量の多い通信会社としての社会的責任を果たす観点からも、節電による省電力化が重要なポイントとなり、NTT東日本グループ一丸となって節電に取り組んでいます。
2022年度から2023年度にかけて、初台本社ビルにスマート照明システムを導入し、温度センサによって認識した人の在不在情報に基づく、オフィスの照明の点消灯・調光を実施した他、AIを活用した省エネ支援システム(DiAs)を導入し、AIとRPAを活用して建物のエネルギー運用を最適化するなど、エネルギーコスト削減や環境負荷低減、さらなる省エネに取り組んでいます。
また、函館市内の通信設備である戸井ビルでは、太陽光発電設備に加え蓄電設備を導入することで、夜間や災害時の給電を可能としており、地産地消型による再生可能エネルギー100%の通信局舎を実現しました。
駒込データセンターのLED照明(左、右)
屋根のうえに設置された太陽光パネル
太陽光発電計測システムにより電力使用量を把握
初台本社ビルにおけるスマート照明システムの導入
おもな省エネの取り組み
| オフィスビル |
初台本社ビルにおけるスマート照明システムの導入(導入前と比較し、年間約96,000k-CO2の削減効果) 夏季等における日本の電力需給バランスの維持に貢献する自主DR※1の実施(2024年8〜9月に弊社36ビルにおいて計9日間実施し、全日程について電力削減・需給バランスの維持に貢献) 初台本社ビルにおけるAIを活用した省エネ支援システム「DiAs(Daily energy improvement AI system)」の導入(空調熱量の約10%削減(219,264 MJ/年 → 195,307 MJ/年) オフィスの空調の抑制(タイマーで空調起動を分散化し電力使用量のピーク量を削減) 共用部における照明間引き オフィスビルにおける屋上緑化活動 オフィス照明のLED化推進 |
|
|---|---|---|
| 通信設備 | トータルパワー改革(TPR)運動※2施策 | ネットワーク設備の更改 統廃合や高効率な設備への更新および運転台数適正化 |
| 空調環境改善 | 空調設定温度の適正化 余裕空調機の停止 老朽化空調機の更改による冷却効率の向上 |
|
| ネットワーク設備のシンプル化 省エネルギー技術の導入を検討・推進(高電圧直流給電システムや間接外気冷房等) |
||
| データセンター | アイルキャッピング※3の導入 LED照明や太陽光発電の導入 壁面緑化 遮熱・断熱コーティングの採用 冷涼な外気を活用して電力使用量を抑える新型の空調設備の導入(北海道データセンター) 室外機への散水システム※4の導入(一部の拠点) 空調自動制御システム「SmartDASH※5」の導入 |
|
- ※1DR(ディマンド・リスポンス):消費者が電力使用量を制御することで、電力需給バランスを調整するためのしくみ。
- ※2トータルパワー改革(TPR:Total Power Revolution)運動:NTTグループ独自の電力エネルギー削減に向けた活動。
- ※3アイルキャッピング:ラック列間の通路を壁や屋根で区画し、IT装置への給気(低温)とIT装置からの排気(高温)を物理的に分離して効率的な空調環境を実現する気流制御技術で空調消費電力の約20%の削減が期待できる(NTTファシリティーズ調べ)。
- ※4室外機への散水システム:放熱フィンへ直接散水し、水の気化熱を利用することで、空調消費電力の約30%の削減が期待できる(メーカー調べ)。
- ※5「SmartDASH」はVigilent社の登録商標、または商標。
アイルキャッピング(NTT東日本データセンター)

- ※アイルキャッピングはNTTファシリティーズの商標登録です。
インターナルカーボンプライシング制度の導入
カーボンニュートラル実現に向け、CO2排出量を仮想的にコスト換算することで、環境負荷の低減を促進するしくみである「インターナルカーボンプライシング(ICP)制度」を2022年5月より、調達等の意思決定に活用をしています。
NTTグループが導入するインターナルカーボンプライシング制度の概要
| 社内炭素価格 | 21,000円/t-CO2※ |
|---|---|
| 適用範囲・方法 | 「脱炭素に関わるプロジェクト判断」、および「調達(製品選定等)」において、製品製造時および使用時のCO2排出コストを考慮して意思決定を行う |
| 適用対象例 | 自社の通信設備の更改に伴う通信機器の調達 等 |
- ※社内炭素価格は2022年5月から6,500円/t-CO2、2024年10月から19,000円/t-CO2、2025年4月から21,000円/t-CO2で運用
再生可能エネルギー使用拡大に向けた取り組み
NTT東日本グループは、電力を消費している事業者として、事業活動による電力使用量の低減を図っていくことも重要な社会的責任の1つであると認識しています。この責任を果たし、低炭素社会の実現に貢献するために、自社の消費電力のグリーン化率を目標に掲げ、太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギーの使用促進に取り組んでいます。2024年度は、自社の消費電力のグリーン化率34%という目標を達成しました。
太陽光発電設備の設置
当社は、当社保有の建物への太陽光発電設備の設置を進めており、2025年3月末時点で、東日本研修センタ・東日本本社ビル・横浜戸塚ビル等の29カ所のビルへ太陽光発電設備を45台設置、毎年の発電量を把握しています。2024年度は太陽光発電で約102.6万kWhを発電、432.08t-CO2に相当するCO2を削減しました。
2020年度からは温室効果ガス排出の主要因である電力のグリーン化を進め、2024年度は非化石証書の活用により、使用電力の約30%にあたる4.1億kWhを実質再生可能エネルギー使用としています。温室効果ガス排出削減に向け、今後も再生可能エネルギー使用を拡大していきます。
NTT東日本 再生可能エネルギー使用量(グリーン化量)※
| 単位 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | 2024年度 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 使用量 | 億kWh | 0.8 | 3.2 | 2.7 | 3.5 | 4.7 |
| 自社の消費電力のグリーン化率 | % | ― | ― | 21 | 25 | 34 |
- ※集計範囲:当社が保有する建物で利用する再生可能エネルギーの使用量であり、当該建物のテナント等による使用量も含みます。
グリーン電力の地産地消への取り組み
群馬支店管内の65ビルは、2024年度より3年間、群馬県企業局が所有する水力発電所で発電された電力(約5,600万kWh/年)の供給を受ける計画をしています。自社のみならず、再生可能エネルギー由来の電力で運営するデータセンターをお客さまへ提供することで群馬県全体のカーボンニュートラルに貢献し、パーパスに掲げる「地域循環型社会の共創」の実現を目指しています。
一般車両のEVの取り組み
当社グループは、低炭素社会の実現に向け、車両配備基準の見直しやカーシェアリングの推進等による車両保有台数の削減に取り組んでいます。
また、2018年10月にNTTグループとして「EV100」へ加盟したことから、NTT東日本グループとしても2030年までに一般車両の100% EV化をめざしていきます。
さらに、エコドライブの推進・実践のため、講習会の開催やエコドライブコンテストに参加する等、全社的に取り組みを進めています。
NTT東日本グループ 一般車両のEV化率実績
| 単位 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | 2024年度 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| EV率 | % | 9 | 16 | 26 | 40 | 56 |
- *対象範囲:NTT東日本グループ
NTT東日本グループ 業務用車両におけるCO2排出量
| 単位 | 2020 年度 |
2021 年度 |
2022 年度 |
2023 年度 |
2024 年度 |
|
|---|---|---|---|---|---|---|
| 排出量 | 万t-CO2e | 0.8 | 0.7 | 0.6 | 0.5 | 0.5 |
- *対象範囲:NTT東日本グループ
NTT東日本グループ 業務用車両における燃料使用量
| 単位 | 2020 年度 |
2021 年度 |
2022 年度 |
2023 年度 |
2024 年度 |
||
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ガソリン | kl | 2,185 | 1,866 | 1,101 | 1,361 | 1,246 | |
| 軽油 | 888 | 917 | 775 | 803 | 696 | ||
| ガス | LPG | kg | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
| CNG | m3 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
- *対象範囲:NTT東日本グループ
カーボンニュートラルに寄与する技術
リサイクルPETを用いた新しい粉体塗装を開発
通信回線の架線・支持には鋼管柱等の金属設備を用いており、腐食による劣化を防ぎ設備の長寿命化を図るために重防食塗装を施しています。しかし、従来の塗装に用いていた塗料には揮発性有機化合物(VOC)が含まれ、人体や環境への影響が懸念されてきました。そうした問題の解消に向け、当社技術協力センタの主導でVOCを含まないPET樹脂を原料とした粉体塗料(「SAPOE」)を開発し、金属設備の塗装に用いてきました。「SAPOE5000」として製品化も実施し、電柱やマンホール、ガードレール等の塗料として、NTTグループ以外の一般事業者様の設備にも使用されています。
さらに、環境負荷の一層の低減を視野に、リサイクルPETを原料とした粉体塗料(「ECO-SAPOE」)を開発しました。原料であるPET樹脂に対するリサイクルPETの配合率を100%とした塗料にて耐久性などの品質面で有効な検証結果が得られ、2025年度から腐食リスクが比較的高い沿岸地域や温泉地域を中心にトライアルを実施しています。石油由来のPET原料をリサイクルPETに転換することで、原油価格の高騰に左右されない安定的な供給、および製造プロセスでのCO2排出の削減が見込めます。コストなどの導入障壁の解消を進め、一般事業者に向けた新たな利用シーンへの適用を模索するとともに、当社設備への実装に向けて注力していきます。
