医療分野の取り組み
基本的な考え方
NTT東日本が運営する3つの病院は、以下の取り組みを通じてCSRの向上に貢献しています。
安心・安全で良質な医療サービスの提供による地域・社会への貢献
NTT東日本病院における持続的な病院経営の実現に向けて、国の医療政策に適時的確に対応しています。各病院がそれぞれのエリアで「なくてはならない病院」として地域・患者さまから選ばれるよう、各病院の強みや特性を活かしたビジョンを明確にし、ガバナンス強化に重点的に取り組みつつ病院経営改善施策に取り組むことに加え、地域の医療機関との積極的な連携を通じて、それぞれのエリアにおけるニーズに対応しています。
NTT東日本関東病院(東京都品川区)は地域の中核病院として高度急性期・急性期機能という重要な役割を担っており、2019年8月には、「地域医療支援病院※」にも認定されています。2021年6月現在約970施設の医療機関と連携し、手術や入院、精密検査を必要とする患者を受け入れ、治療後には患者が円滑にかかりつけ医へお戻りいただけるよう心がけています。
NTT東日本 伊豆病院では、近隣の急性期病院16施設と連携し、急性期治療を終え、継続した治療が必要となる方や身体機能の改善のためリハビリテーションが必要な方等を受け入れています。地域の医療、福祉、介護を担う約250施設の方々と外来だけでなく入院中から退院後まで連携し、患者さまが住み慣れた場所で安心して生活できるように支援しています。
地域でその人らしく生活が継続できるようにするには、ケアの質を高めることが重要です。近隣の急性期病院や訪問看護ステーション、地域包括支援センターの多職種と連携をとることで地域全体のケアの質を高める中心的な役割を担います。また、地域の健康祭り等に参加し、健康相談や生活相談等、住民の皆さまの安心な暮らしや健康への意識向上を支援しています。
2022年に開院100周年を迎えるNTT東日本 札幌病院は、全国の22%の広大な面積に位置する北海道における急性期医療を担っています。地域の医療機関との連携強化を通じた対応に加え、「北海道がん診療連携指定病院」、「札幌市災害時基幹病院」に指定され、地域において安心・安全な医療を提供し続けています。
札幌病院としての使命は、地域に必要とされる良質な医療を、安全に効率良く提供し、患者さまにとっても、職員一人ひとりにとっても魅力的な病院であり続けることと考えています。札幌市の中心部に位置する病院として、この地域において生活する人たちにいつまでも必要とされる病院であり続けることをめざして、次世代のためにどのような医療を展開する必要があるのかを熟慮し、地域の健康管理に責任を持ち、一歩一歩着実に歩みを進めていくことが病院に課せられた責務です。
なお、NTT東日本関東病院およびNTT東日本札幌病院では、2020年1月に日本でも発生した新型コロナウイルス専用病棟を開設し、罹患した患者を受け入れて診療を行っています。また、新型コロナウイルスに罹患した患者を重点的に受け入れる他病院で診療の継続が難しくなった、罹患されていない重症患者の受け入れも積極的に行うことで、地域における診療体制の継続に貢献しています。
- ※地域医療支援病院:紹介患者に対する医療提供、医療機器の共同利用等の実施を通じてかかりつけ医等を支援し、効率的な医療提供体制の構築を図る役割を担う病院
充実したがん治療の提供
ロボット手術の様子(左、右)
がん相談支援センター職員
NTT東日本 関東病院は、地域がん診療連携拠点病院の指定を受け、専門的ながん医療の提供、がん診療の地域連携協力体制の構築、がん患者・家族に対する相談支援および情報提供等を行っています。また「地域がん診療連携拠点病院(高度型)」として「がんゲノム医療連携病院」として東京大学医学部附属病院と連携し、国策であるがんゲノム医療を推進しています。
がん治療においては、術後の回復が早く入院期間が短縮できる、合併症リスクを抑えられる、機能温存が向上するといったメリットが期待される「ロボット手術」でのがん治療に積極的に取り組んでいます。2019年4月に設立した「ロボット手術センター」において2020年度は約220件の手術を実施しました。また、腫瘍内科や放射線科等とも連携し、手術だけでなく、化学療法や放射線治療の提供まで幅広く対応しており、あらゆる方法でがんに対応できる体制を整えています。
加えて、がん患者さまとそのご家族に対する緩和ケア※の提供も行っています。緩和ケア病棟・緩和ケア外来・緩和ケアチームを統括する「緩和ケアセンター」では、すべてのがん患者さまとそのご家族に対して迅速かつ適切な緩和ケアを切れ目なく提供するよう努めています。
- ※緩和ケア:重い病を抱える患者やその家族一人ひとりの身体や心等のさまざまなつらさをやわらげ、より豊かな人生を送ることができるように支えていくケア(特定非営利活動法人日本緩和医療学会『市民に向けた緩和ケアの説明文』)
地域における新たな療法の提供
rTMS治療
歩行訓練支援ロボットによる治療
NTT東日本 伊豆病院では、うつ病を改善させる新しい治療法であるrTMS療法を開始しました。脳の特定部位に繰り返し磁気エネルギーを与える薬を使用しない治療法です。また、回復期リハビリ病棟に入院した患者が今まで以上に、できるだけ早く高いレベルの歩行能力を獲得いただく歩行訓練支援ロボットを導入しました。新たな治療の実施により地域医療に貢献いたします。
救急医療・災害医療における役割
災害総合訓練(図上訓練)(10月)の様子
NTT東日本 関東病院は、二次救急医療機関として救急患者の受け入れを積極的に行っています。特に脳卒中・胸部・腹部の3領域では、関東病院の専門医にダイレクトにつながる、地域の医療機関・救急隊専用ホットラインを設けており、24時間365日(腹部は日中帯のみ)の救急対応を行っています。
災害医療においては、関東病院は、東京都に80施設ある災害拠点病院の1つとして、地震等の広範囲災害時においておもに重症患者の収容・治療を行う任務を負っています。例年10月に実施している総合防災訓練については、新型コロナウイルスの院内感染防止等を踏まえ、2020年度は内容を変更し、少人数(20名程度)で首都圏直下型地震が夜間・休日において発生した場合を想定した当直者の初動にかかる図上訓練を実施しました。
NTT東日本 札幌病院では、2018年9月に発生した「北海道胆振東部地震」の経験を踏まえ、大規模地震の際に、札幌市中央区の5病院が連携し、医療機器や薬品、医療材料、食料、その他応急物資の支援措置や、医師、看護師、コメディカル職等の人材派遣、患者の移送、代替医療、入院患者の転院、受入等病院相互で協力する「災害時における病院間の相互支援に関する協定書」を締結しています。
これによって、札幌市中央区や札幌市のみならず道内全域で災害が発生した場合についても、5病院が連携し、患者の搬入や人員派遣に対応していきます。
患者サポートセンターの開設
患者サポートセンター
患者さまとの面談の様子
NTT東日本 関東病院では従前より入院が決定した一部の患者さまを対象に、安心して入院できるよう看護師をはじめ、薬剤師、栄養士、ソーシャルワーカー等が連携しながら、入院前から多方面でのサポートを行ってまきました。2019年10月に開設したワンストップで入退院関連業務を行う「患者サポートセンター」が業務の効率化とチーム医療を提供することで、より充実した患者サポートを実践しており、これまで以上に患者さまに安心して入院いただけるよう努めています。
地域住民等を支えるへき地診療所への医師派遣および認知症医療への貢献
NTT東日本 伊豆病院では2019年4月より、静岡県からへき地医療拠点病院の指定を受け、熱海市の「初島の診療所」へ医師を派遣し、住民健診等の実施による予防医療・健康増進および診療による早期の処方対応の実現等、医師不足が著しいへき地における住民の皆さま等への医療を確保し、安心で良質な医療サービスを提供しています。
また、2010年より認知症疾患医療センターの支援を受け、地域の認知症医療への貢献を行っています。
医療分野におけるICTサービス導入の先導的な役割を果たし、安心で豊かな社会の実現に貢献
国の医療政策を踏まえ、地域ニーズへの対応を継続して取り組むことに加え、医療業務でのICTの活用・デジタルトランスフォーメーションの推進による医療分野の業務効率化で、より重要度の高い業務に専念し、高いスキル・ノウハウの共有を進めることで、さらに安心・安全な医療サービスを提供していきます。
電子カルテや健診システムを中心とした医療情報システムを導入し、他に先駆けて機能の高度化を図るとともに、ICTを活用した地域の病院・診療所の連携や専門医の少ない遠隔地との連携、在宅診療の支援等、安心で豊かな社会の実現に向けて、先導的な役割も果たしていきます。
ICTを利用した患者サービスの向上
NTT東日本 関東病院・札幌病院では、「デジタルサイネージ※1」を導入することで、患者サービスの向上に取り組んでいます。たとえば、関東病院では、外来の待合室等で過ごされる患者に対して、病院の紹介ビデオ、医療情報・健康情報、健康保険証の切り替え、病院開催セミナーのご案内、治験※2 参加の募集等の患者さまへのお知らせ、札幌病院では、ニュースや天気予報等を掲示して、患者サービスの向上に努めています。
また、関東病院では、退院後に在宅療養する患者に対して、医療機関・介護関係者・患者家族等がワンチームとなってケアに取り組むための多職種連携支援システム「ひかりワンチームSP」を導入しています。
2019年秋に脳神経内科よりスタートし、2020年冬には呼吸器内科でも導入しており、これまでに15の協力施設と連携し、延べ20名を超える患者をサポートしています。その他、新生児連れ去り対策や高齢者無断離院防止等の安全強化を目的とした「mobiconnect 見守りシステム」が稼働しています。
- ※1デジタルサイネージ:電子掲示板
- ※2治験:医薬品・医療機器の製造販売に関して承認を得るために行われる臨床試験
地域で親しまれる病院として、医療セミナーや交流イベントを開催
市民公開講座(関東病院)の案内例
「健康セミナー」(札幌病院)の様子
クリスマス・スプリングコンサート(伊豆病院)の様子
地域住民の方々に向けて医療に関するセミナーを定期的に開催し、医師等が健康に役立つ情報や病院で取り組んでいる医療についてわかりやすく説明する機会を提供しています。
NTT東日本 関東病院では、市民への疾患啓発活動として、市民公開講座を2020年度下半期より原則毎月開催しています。2020年度は、コロナ禍の状況においても参加いただけるようWEB配信形式に見直し、「がん」や「ひざ」をテーマとした講座を開催しました。特に肺がんをテーマとした回は、新型コロナウイルス蔓延期における肺がん診療にスポットを当てた講演内容ということもあり一般市民の関心が高く、約160名の参加申し込みがあり、大変盛況な講座となりました。また、五反田図書館で市民公開講座のビデオ上映会を開催する等、ICTが苦手な方でも参加できる機会も提供しています。
NTT東日本 札幌病院では、「健康セミナー」を毎月開催しています。2019年度後半は、新型コロナウイルス感染拡大防止のため開催の中止を余儀なくされましたが、前半は「排尿の悩みあれこれ解決します(泌尿器科部長)」「がん手術支援ロボットの時代(外科部長)」「知っておこう!医療用麻薬の良いところ・悪いところ(薬剤科・緩和ケアチーム)」等、医師だけではなく専門医療チーム等による講演も行い、多くの方々に聴講いただきました。
NTT東日本 伊豆病院では、新型コロナウイルス感染拡大防止のために多くの制限を強いられている入院中の患者に癒しの時間を提供しようと「クリスマスコンサート・スプリングコンサート」を実施しました。外部の方を招くことはできないため、病院スタッフの演奏により密を避けるために広いリハビリ室で演奏をし、患者さんの笑顔にスタッフも癒されました。
緩和ケアイベントを開催
デジタルサイネージでの表示スライド
NTT東日本 札幌病院では、緩和ケアの普及啓発活動の一環として、ホスピス緩和ケア週間に合わせ、2020年10月5日から5日間、緩和ケア週間の周知と、相談窓口であるがん相談支援センターの紹介を行いました。2021年は新型コロナウイルスの感染拡大を防止する観点からイベント実施することで人が密集しやすい環境となることが懸念されたため、各科外来に設置のデジタルサイネージを活用してのスライド表示とパンフレット配布による実施となりました。
「がんと共に生きる思い」展示会を開催
「がんと共に生きる思い」2019年の展示会の様子(左、右)
NTT東日本 札幌病院では、例年、「リリー・オンコロジー・オン・キャンバス」の絵画・写真・絵手紙コンテストで受賞された作品およびその作品に添えられたエッセイのレプリカを展示し、がんと告知されたときの不安、がんと共に生きる決意、そしてがんの経験をとおして変化したご自身の生き方等、言葉だけでは伝えきれない思いが込められた、絵画・写真・絵手紙を患者はじめ、多くの方々と分かち合っていただく「場」として、「がんと共に生きる思い」展示会を開催しています。7回目となる2020年は新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、やむなく中止としました。
「落ち葉拾い」の実施
「落ち葉拾い」の様子(伊豆病院)
NTT東日本 伊豆病院では、遊歩道を歩く、患者さんや地域の方が気持ちよく散歩できるように、月に1回スタッフのボランティア活動で落ち葉拾いを行っています。約50名のスタッフが参加して、一気に落ち葉を一掃しています。