ケーブルをドローンでつなげて、
新たな通線技術をうみだせ。

ケーブル

ケーブル
課 題
災害により、人の立ち入れない
場所でケーブルが断線する

ドローン

ドローン
解 決
ドローンを本格運用
災害対策と設備点検で活躍

新たな通線技術

新たな通線技術

Project Story #04

新通線技術開発プロジェクト

災害発生時、人が立ち入れない場所で発生したケーブル断線は、その設備復旧に多くの時間がかかっていました。「一刻も早く通線を復旧し、通信を途絶えさせない」。NTT東日本には新たな通線技術が求められていました。
2015 年、NTT東日本は無人小型飛行機「ドローン」の本格運用をスタート。災害対策に加え、平常時の設備点検への活用もはじめています。

Project Member

芹田 尚

芹田 尚

NTT東日本
ネットワーク事業推進本部
高度化推進部
アクセス開発部門
アクセス技術推進担当 課長
プロジェクトの責任者として、「新たな通線技術」の確立に向けて奔走した。
長谷川 衛

長谷川 衛

NTT東日本
ネットワーク事業推進本部
高度化推進部
アクセス開発部門
アクセス技術推進担当
現場へのヒアリングなど、実現に向けた取り組みに従事。
菅原 誠

菅原 誠

NTT東日本-東北
宮城事業部
設備部
サービス運営部門
運営企画担当
全国普及を目指し、ドローンが配置された現場で、本格的活用推進のフロントに立つ。

NTT東日本が持つ「安心・安全」のDNAを、ドローン技術につなげる。

新たな通線技術の開発にあたり、ドローンに着目した背景について教えてください

芹田

契機となったのは、2011年3月11日に発生した東日本大震災です。その甚大な被害は、日本全体に大きな影響を及ぼしましたが、NTT東日本が所有する通信設備も例外ではありませんでした。たとえば、岩手県の気仙川では、180mにおよぶ気仙大橋が重要なケーブルとともに流され、川を横断するケーブル復旧は困難を極めました。その経験から、高度化推進部は、震災直後より「安全・確実・迅速な復旧作業」に資する新たな通線技術の開発を喫緊の課題にしていました。その実現に向けて着目したのがドローンでした。

ドローンを活用するアイデアというのは当初からあったのですか?

芹田

いえ、はじめからドローンありきではなく、ロケットランチャーや釣り竿、農薬噴霧用のヘリなど、本当に数多くのものを検討しました。結果として、通線距離・確実性・安全性の観点から選定されたのがドローンだったのです。

長谷川

ご存じだと思いますが、ドローンとは“遠隔操縦できる無人小型飛行機”のことです。ビジネスへの応用から個人が趣味として使うケースまで、その用途は広がっていて、使うことのメリットは数多くありますが、問題点も少なくありません。何より最大の懸念材料は安全性です。天候が良く、障害物が何もなければ全く問題はないのですが、ひとたび環境が悪化した場合、どこまで対応できるかが不透明でした。また操縦ミスや障害物との衝突などで墜落した場合、人的・物的被害が発生する可能性もあります。

芹田

ドローン活用において最も求められるのは安全の確保であり、NTT東日本にとって安全性を担保することは必須の課題でした。つまり、NTT東日本が長年通信事業で培ってきた「安心・安全」のDNAをドローンへどのように移植するか。それが、このプロジェクトを成功させるカギでした。

実際の開発はどのように進められたのでしょうか?

芹田

当初は、災害対策のツールとして開発を進めていました。災害によってケーブルが寸断された際、ドローンがケーブル敷設用のリード線を運搬し、手元のコントローラーによりそれを切り離すことで、対岸などで待つ作業員に通線用のリード線を渡すことができる。これにより、山間部や広い川など、人の立ち入りが困難な場所においてもケーブルを敷設することが可能となるというわけです。

長谷川

さらにドローンの動画撮影・配信機能を活用すれば、被害を受けた通信ルートの被災状況も確認できます。動画・静止画撮影を平常時にも利用できるようにして、災害対策だけにとどまらず、各種設備点検業務でも活用できるよう検討を進めました。対象となるのは、人の立ち入りが困難な橋梁添架管路の点検業務などです。そして2015年3月、NTT東日本の全6事業部へのドローン配備が完了しました。

なるほど。実用化はスムーズに進んだようですね

芹田

いいえ、ここでやっと本格的な実用化に向けたスタートラインに立てたのです。端的に言ってしまえば、ドローンは配備されたものの、この時点ではまだまだ現場で円滑に使えるものではありませんでした。

実用化に向けて、実際どのようなハードルが立ちはだかったのですか?

菅原

当時、現場ではドローンを見たことも触れたこともない社員がほとんどでしたので、現場で活用するためには多くの課題がありました。

芹田

わたしたちが取り組むべきことは、「ドローン活用におけるリスクを洗い出し、そのリスクを技術で排除していく」ことでした。すでに6事業部に配備されたドローンの試験飛行ははじまっていましたが、多くの課題が報告されていました。その原因を明らかにするためにも、パイロットへヒアリングすることが必要不可欠でした。

長谷川

ほぼ毎月、事業所を訪問してパイロットへのヒアリングを重ねました。操縦の習熟度を上げるのも重要ですが、一番多く出た意見は、操縦が「怖い」というもの。その心理を払拭する必要性を強く感じました。ドローンが世間で注目される背景には、「危険な飛行物体である」というネガティブな部分もあります。パイロットの心理的負荷は大きかったですね。たとえば、万が一墜落させてしまったら……。誤りは誰にでも起こりえますから。

ヒアリングを重ねることで、改善の方向性をパイロット目線での安心・安全の追求に定めたのですね

芹田

そうです。パイロットの不安を払拭し、安心して操縦できる機能を搭載することが安全性担保に必要不可欠な要素と考えました。その実現のためにまず挙げられたのが、操作性の向上。ドローンは高度な操縦スキルを必要としますが、わたしたちは巧みな技を駆使する操作ではなく、パイロットが思ったように動く、つまり直感をそのまま伝えられるコントローラーに改良しました。

長谷川

二つ目のポイントは、誤操作による衝突回避のために超音波センサーを備え付けた点です。対象物までの距離をセンサーが測定し、対象物を検知すると衝突を防止するようにしたことで、格段に安全性が向上しました。

芹田

また、「操作不能状態をどのように回避するか」という課題もありました。ドローンはGPSの信号を受けて安定したホバリング(空中停止)を行います。したがって、GPSの信号を受信できない環境ではホバリングが不能、つまり操作不能となる危険性がありました。たとえば、GPS信号の届かない橋の真下の点検では、この問題をクリアしなければ使用することができません。

その問題に対してどのような工夫をされたのですか?

長谷川

そのために採用したのがステレオカメラセンサーです。ステレオカメラで画像を撮影・解析することで飛行を補正し、GPSの信号を受信できなくても、安定した飛行を実現できるようにしました。

災害復旧用から通常の設備点検用まで、用途が拡がる中で生じた課題はありましたか?

芹田

はい。大きな課題が残りました。それが小型化です。通常の設備点検で使用するには機体が大きすぎ、「運搬するにもひと苦労で、現実的ではない」との声が現場から多く寄せられました。

長谷川

通線機能などいくつかの機能を外せば小型化は可能だったのですが、すべてがトレードオフの関係になっていました。飛行時間や性能等々、同等の能力保持を試みても「あちらを立てれば、こちらが立たない」状態に陥っていました。しかし粘り強く最善の着地点を見出すことで、ようやく本格運用に向けて動き出すことができました。