Project Story 仕事を知る
Project Story #08
AI解析技術の活用による路面点検・診断・措置トータルソリューション
道路×AIプロジェクト
普段何気なく使い、日常の一部と化している道路。現在、日本の道路の多くで老朽化が進行し補修が必要となってきている一方、財政上の都合で全てを直すことができないことが社会課題に。そんな社会課題を解決しようと立ち上がったのが、NTT東日本、NTTコムウェア、ニチレキの3社。AIの画像解析を舗装事業へ応用し、大きな社会課題をどのように解決へ導いていったのかをご紹介します。
Project Image
道路
- ・ 老朽化で補修を要する道路が全国各地に
- ・ これまでは集積した道路の画像を目視で確認
AI画像解析
- ・ 道路の画像を集積し、AIが画像を解析
インフラメンテナンスの変革
- ・ AIが本当に補修を必要とする箇所を特定することで、より効率的かつ低コストで補修が可能に
Project Member
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Ayaka OHKUBO大久保 彩香
ビジネスイノベーション本部 BBXマーケティング部 新ビジネス創造担当
あらゆる新規ビジネスの検討・立ち上げに従事しながら、本プロジェクトをメインで担当。ビジネスモデルの検討やプロジェクトを広めるために各支店と連携し、営業施策を考案。
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Takahumi MIYATA宮田 貴史
ビジネスイノベーション本部 BBXマーケティング部 新ビジネス創造担当
社会課題の解決を目標に、新規ビジネスの検討・立ち上げを取りまとめるチームリーダー。NTT東日本だけではリーチできない社会の課題を、他社と協業して解決している。
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Kensuke NIIMURA新村 賢祐
ビジネスイノベーション本部 BBXマーケティング部 新ビジネス創造担当
本プロジェクトだけでなくスマートシティの観点から新規ビジネスを日々推進中。大久保と連携しながらビジネスモデルの検討や各支店との連携、技術開発を担う企業との調整に携わる。
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Mayu HAZAMA硲 真悠
ニチレキ株式会社 道路エンジニアリング部 調査課
道路舗装工事、点検・補修などを実施する舗装材料メーカー大手でNTT東日本との連携を担当。本プロジェクトにて開発したAIを活用し、道路を調査。自治体への補修計画をフィードバックするなど、安心安全なインフラを作るために奮闘。
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Takahumi ONO小野 貴史
NTTコムウェア株式会社 ビジネスインキュベーション本部 ビジネスインキュベーション部
NTTグループのシステムを開発・保守するNTTコムウェアで、システムエンジニアとして主に画像解析を行うAIを開発し、日々アップデートしている。解析の精度を高めるためにNTT東日本・ニチレキのフィードバックを受けながら、技術の面からアプローチをしている。
Project Interview
AI画像解析を活用!効率的な道路点検を実現し、安心安全に貢献!
─このソリューションの開発に至った背景を教えてください。
宮田 : 多くの道路が高度経済成長期に整備され、約40年以上が経過し、急速に老朽化が進んでいます。補修を要する道路が増える一方、多くの自治体は限られた財源の中で効率的に点検・補修をしなければいけない課題を抱えています。そのような社会課題の解決に、NTTコムウェアが提供する「ひび割れ解析AI」を駆使することで、NTTグループとして貢献できないか検討をはじめました。ちなみに、この「ひび割れ」というのは道路にどれだけの損傷があるかを表すものです。
大久保 : 道路点検のソリューションを実現するには、道路の知識や技術も欠かせません。そこで、道路業界大手のニチレキが持つ業界ノウハウ、NTTコムウェアのAI技術、NTT東日本のICT基盤を融合させることで、実現可能なプロジェクトとして始動しました。
硲 : ニチレキは道路舗装に関する材料メーカーですが、道路点検も行っています。測定車で撮影した道路の画像を「目視」で確認し、ひび割れの状態を確認していました。これまでの点検手法を更に進化させ、より局所的に補修が必要な箇所を抽出し、補修コストを低減させる新たな手法を検討していましたが、「目視」では損傷箇所の抽出に非常に時間がかかり、現実的でないと頭を悩ませていました。そんな時に、NTT東日本からAIによるひび割れ解析の提案があり、協業することになりました。
─AIを利用したひび割れの解析とは、どのような仕組みなのでしょうか?
新村 : 従来のひび割れの点検手法は、道路を広範に補修することを前提としていました。広範に補修するということは、それだけコストがかかり自治体の財政を圧迫することになります。この自治体の課題を解決するために、補修に緊急性を要する損傷を局所的に抽出することが可能なAIを開発しました。このAIの開発には、ニチレキのノウハウとNTTコムウェアの技術力が必須でした。
硲 : 局所的な損傷を自動で抽出できるAIのおかげで、我々が検討していた、従来の点検手法を更に進化させた新たな手法を実現することができました。目視で解析していた従来の手法では、約8km分の道路を1日1人で解析していたのに対し、AIを用いることで、1時間ほどで済ませられるようになりました。作業を劇的に効率化できたことで、ピンポイント且つ最低限に費用を抑えた点検・補修の提案が可能になりました。
─開発を進めていくにあたり、どのような壁がありましたか?
新村 : 最初に大きな壁となったのは、誰も取り組んだことのない道路業界に踏み入れたことでした。ICT企業であるNTT東日本にとっては道路業界の慣習、言葉、法令、予算など、すべてが未知の領域。まずは国土交通省の資料や日本道路協会の専門書をもとに勉強し、ニチレキとの共通言語をもつところから始めました。
小野 : AIの学習についても困難を極めました。詳細に教えすぎてもAIが混乱して解析精度が落ちてしまったり、逆に間違いのパターンも教えなければいけなかったり、何をどのように教えれば効率があがるのかを検討することが大きな壁となりました。
大久保 : マーケティングの観点でいうと、この技術を自治体へどのように販売していくかが重要な課題でした。そもそも予算の限られている自治体に販売しなくてはいけないため、コストを抑えつつも3社それぞれにメリットを持たせるにはどのようなビジネスモデルにしていくかを考えていかなければなりません。今後は、ニチレキの営業力に加え、NTT東日本が持つ地域密着の営業網も活用し、どのように自治体へ展開していくかを考えています。
─この開発が世の中で広く活用されていくと、未来はどのように変わるでしょうか?
硲 : 短期的な未来で言えば、国道のような主要道路だけでなく、生活道路の調査も手軽に行えることが道路業界の大きな変革になると思います。人々の生活に密接した部分まで見逃さずに全国の道路補修を進めていくことで、より強固で安心安全なインフラ社会を実現できるのではないでしょうか。
宮田 : 今後は、AIの画像解析技術を他のインフラメンテナンスにも活用することができると考えています。道路だけでなく橋梁、電柱、街路樹などの様々なインフラの老朽化が進行している現在、AIを活用することで、致命的な損傷となる前に効率的に補修をすることが可能になり、街の安心安全を向上させることができると考えています。また、自動運転時代の到来に向けて更なる道路の整備が必要になることからも、今回の取り組みが道路メンテナンスの基盤となっていくと信じています。
Side Story
ロメンキャッチャーLY Jr.
車にカメラを搭載し、道路を走りながら道路の状態を画像データとして記録。これまで作業員が画像を目視で確認し、ひび割れ率を算出していたものが、AIが損傷を読み取って解析まで出来るように。ロメンキャッチャーLY Jr.が収集したデータをもとにAIがひび割れなどを判断。
AIによる局部損傷摘出
今まではどのぐらい路面が損傷しているかを「ひび割れ率」を用いて判断していたが、AIの導入により損傷のランク分けが可能に。緊急性を要する損傷箇所から優先的に修復することができるので、利用者の安心安全に繋がっている。
Another Story
- ※掲載内容は取材当時のものです
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