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第8回 いつかくる その日に備えて

他の防災関係機関と手を携えて

この日の訓練では、自衛隊や警察、消防、そしてNTTグループをはじめとするライフライン企業も参加して「防災関係機関調整会議」の運営訓練も実施され、効率的な災害応急対策に向け、関係機関の間で情報共有と調整・連携を図る訓練が行われた。

災害復旧では、被害状況を迅速・的確に把握し、防災関係機関の限られた人員や資材を効率的かつ効果的に活用することが重要となる。そのためには防災関係機関相互の連携と調整が不可欠であり、「その良し悪しが復旧のスピードにも大きくかかわってくる」(静岡県防災局の岩田孝仁防災情報室長)。

NTT西日本静岡支店をはじめとする静岡県下のライフライン企業は、1970年代から県との任意の勉強会を開催。1994年には県と共に「静岡県ライフライン防災連絡会」を設立し、災害時の復旧資材置き場や輸送手段、宿泊施設などの相互融通体制を構築したり、災害復旧のための合同訓練を実施したりするなど平常時から連携を深めてきた。

さらに、県の要請により県防災局に社員を出向させているほか、県が防災の現場で活躍できる専門家として養成している「静岡県防災士」の講座にも講師を派遣し、受講者に向けてライフラインの災害対策を説明している。

静岡県防災士養成講座のカリキュラムに通信の災害対策が盛り込まれていることについて、岩田室長はこう語る。

「防災にかかわる人には、災害時の通信の運用の仕組みをぜひ知っておいてもらいたい。使えると思っていた電話が使えなかったというようなことが大きな混乱を引き起こすのであり、何が使えて何が使えないのか、そして復旧までにはどういった過程が必要なのかを理解していただく必要があると考えています」

静岡県は、県民の防災意識の高揚などを目的に「静岡県地震防災センター」を開設している。NTT西日本静岡支店の災害対策室に10年以上勤務し、現在は静岡県防災士会監事・焼津市災害ボランティアコーディネーター事務局長を務める中村晋也は、NTT西日本を退職後、請われて同センターの非常勤職員として働いたことがある。

「中村さんは静岡県防災士、災害ボランティアコーディネーターでもあり、ある意味で防災のプロ。当然、通信のプロでもある。地震防災センターには、企業から防災力を向上させたいという相談が多数寄せられており、NTT西日本で災害対策を担当してきた経験を生かしてアドバイスしてもらうことを期待しました」(岩田室長)

百三十余年にわたり日本の通信を支えながら、幾多の災害経験を教訓として培ってきたさまざまなノウハウは、地域の企業の防災力向上にも貢献している。

ライフラインの中でも通信網は、IT化の進展に伴って、他のライフラインの「神経系統」の役割をも担うようになってきており、その重要性はますます高まっている。

こうした社会の要請に応えるため、NTT西日本静岡支店は災害対策体制を見直し、災害時に社員全員の安否情報を迅速に収集し早期に復旧体制を確立できる「災害対策情報システム」を構築している。さらに、居住地が近く避難地が同じ社員同士を一組のグループとする「五人組」という独自の制度を導入。五人組は、避難ルートにおける電柱や通信ケーブルなどの被災状況の情報収集のほか、行政・自主防災組織等と協力し、避難地の特設公衆電話の開設作業を行う。

NTTグループの社員たちは、自らに課せられた社会的使命の大きさを改めて思い、被災時の生命線となる「通信の確保」に向けて誓いを新たにしている。

NTT西日本静岡支店災害対策室OBで、現在は静岡県防災士会監事・焼津市災害ボランティアコーディネーター事務局長を務める中村晋也

「防災関係機関の連携の良し悪しが復旧のスピードに大きく影響する」という静岡県防災局の岩田孝仁防災情報室長

自主防災組織による倒壊家屋からの救出訓練