情報端末を前にヘッドセットをつけたスタッフがずらりと並ぶ。問い合わせの電話を受ける者、スケジュールを画面で確認しながら故障修理を手配する者…。
「いつもご利用いただきありがとうございます。本日はどのようなお問い合わせでしょうか…」
「2時間後にはお伺いできますが、本日のご予定はいかがでしょうか…」
一見してベテランと分かるスタッフたちが、落ち着いた語り口で、てきぱきと手際よく、次々と入る電話に応対していく。
電話の故障連絡などを受け付ける『113センタ』は全国各地域にある。その中で、東京都下および神奈川・埼玉の一部地域、約446万世帯を受け持っているのが、ここ東京都立川市にあるNTT東日本-東京西113センタだ。管轄地域は典型的なベッドタウンエリアで、平日1日の問い合わせは平均約1,000件にも及び、それに約30名のスタッフで対応している。
インターネット時代を迎えたとはいえ、問い合わせの7割近くは今なお、一般の加入電話に関する内容。それに加えて、機器の使い方に関する問い合わせや、土木工事で誤って電話線を切ってしまったなど、多岐にわたる内容の通報が飛び込む。ほとんどが急を要するものばかりだ。
そうした性格上、113センタでのお客さま応対に要求される知識は、通信網や交換機に関する技術的な分野から、各種サービスや料金、パソコンの設定まで実に幅広い。このため113センタには、まさに「通信のプロ」ともいうべきベテラン技術者が集められている。しかし、ここで本当に必要なのは技術の知識だけではない。通信サービスの最前線でお客さまに対応する113スタッフだけに、技術者であると同時にサービス担当者としての発想が求められるのだ。
「113にかかってくるほとんどが、お困りかお叱りの電話。だからこそ、知識にもとづいた理詰めだけではご納得いただけない。つながっている電話線に真心を載せ、相手に送り届けるような気持ちで語りかけて初めて、『わかった。では修理をよろしく頼むよ』との言葉をいただける」と、NTT東日本-東京西 113カスタマセンタ担当の岩本光正は言う。彼もまた交換機担当などを経て113センタに配属されて以来20年のベテラン技術者だ。
さまざまな通信手段や情報サービスが出揃い、“情報経済社会”といわれる現代、その基盤ともいうべき固定電話には、常に安定したライフラインであることが求められている。
「そうした中でセンタに寄せられるお礼のメールや電話は、113スタッフ一同にとって何よりの励みとなっている。ただし『助かった、ありがとう』とのお言葉の裏には、故障によってお客さまが本当に困っていらっしゃったという事実がにじみ出ている気がして、改めて身の引き締まる思いがする」と、NTT東日本-東京西 113カスタマセンタ所長の並木哲朗は語る。
所長の言葉を受けてNTT東日本-東京西 113カスタマセンタ担当 遠藤茂樹は言う。「だからこそ、まだ故障には至らないものの何らかの異常がある“潜在故障”を未然に発見することが重要になる。交換機につながったシステムが24時間すべてのお客さま宅までの回線をスキャンしている、そのモニタをチェックするのも113センタの任務なんです」
家庭に、商店に、オフィスに、電話やファクスがあり、気軽に情報をやりとりできるという、ごく当たり前の生活。通信のユニバーサル(全国一律)サービスを探るシリーズ7回目は、そんな毎日を支えるために、時間や場所にかかわらず問い合わせに迅速に応対し、修理や保守に取り組む技術者たちの姿を追う。