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第5回 山間部の生活を守る

安心の絆を守るために

東京・神奈川・千葉・埼玉の一都三県を合わせた面積より広く、北海道に次ぐ県土を有する岩手県。実にその約77%を山林が占め、全国屈指の林業県である。山間部に居住する人は約26万人で、県人口比18.9%。これは全国平均の3.7%を大幅に上回る。このため、岩手県では山間部に敷設された通信設備が多いのだ。

同じ岩手県内でも、市街地の盛岡エリアでは1加入あたりに要する通信専用の電柱が0.47本、通信ケーブルが26.6メートルであるのに対し、例えば宮古サービスエリアが受け持つ岩泉町の釜津田地域では、1加入あたり3.2本の電柱、165.2メートルの通信ケーブルがある。山間部では市街地の約6倍もの電柱と通信ケーブルが敷設されているのだ。

業務の効率化や設備コストの削減につとめる一方で、全国一律のユニバーサルサービスの提供のためにも、こうした通信設備を整備し、維持し続ける必要がある。

「出稼ぎや高齢化のため山を下りる人が増えた結果、山間の通信ケーブルや電柱が不要となった箇所も多く、ここ3年ほどで設備コストはNTT東日本の平均にまで低減できている。とはいえ、山に暮らす人が減るのは、同じ岩手県人として少し寂しい」と、NTT東日本-岩手 設備運営部主査の野村勉は説明する。

四季それぞれに豊かな表情を見せる岩手の自然は、時として、通信設備の故障や障害発生の脅威と成り得る。春先のしめった雪による通信設備への倒木、初夏の長雨で頻発する故障、夏の落雷による通信設備のダウンや、キツツキ・蟻などの生物がもたらす被害、秋の台風や冬の積雪による崖崩れに伴う通信ケーブルの切断…。

こうした自然災害に対して、さまざまな対応策で予防を講じている。例えば、通信ケーブルの内側をステンレス金属で被膜した丈夫で安心な通信ケーブル(HSケーブル)への張替作業を計画的に実施するなど、確実に予防成果を上げている。

通信ケーブルの保護につとめる一方で、自然との共生を目指し、環境保護にも積極的に取り組んでいる。岩泉町大川地区で生息が確認されている天然記念物のイヌワシを保護する施策として、付近の通信ケーブルに黄色と赤のストライプのカバーを設置。ケーブルを目立たせることで、幼鳥が通信ケーブルに衝突するのを防いでいる。

山間部の通信を守り続けるためには、電柱や通信ケーブルの敷設など、設備面での十分な対応はもちろんのこと、運用保守を手がける技術者たちの長年の経験に裏打ちされた、それぞれの季節に応じたたゆまぬ努力がある。

NTT東日本-岩手 サービス運営部主査の小笠原信男は、「技術者たちは、サービス申込に伴うパソコンやインターネットなどの日常業務の合間に、保守業務としての故障修理も役割分担してこなす毎日。ベテランのノウハウに助けられることも多いし、彼らの体力だって、まだまだ若手には負けない」と語る。

またNTT東日本-岩手 サービス運営部長の亀ヶ川勇一は「岩手県は太平洋に面した海岸線が長距離にわたることから、リアス式で知られる三陸海岸の切り立った断崖絶壁の高台に、漁業無線や警察、自衛隊の通信設備などさまざまな通信関連施設が設置されている。それら通信設備に敷設された電話ケーブルの保守を担うのもNTT東日本-岩手 の役目。海の安全も守っている」と、エリアの特徴を解説する。

ライフラインとして山間部の生活を支える通信サービス。全国どこでも同じサービスが受けられるという、通信のユニバーサルサービスを維持することは、利用者のニーズに支えられた、通信事業者の責務といえよう。多くのスタッフたちの熱意と努力は、日本の山々の暮らしをも守っている。

「南部片富士」の名で知られる秀峰、岩手山。標高2038メートル

高所作業車が届かない場所での故障修理も多い

散弾銃やキツツキの被害にあった通信ケーブル

NTT東日本-岩手 設備運営部プランニングサポート担当主査 野村勉

NTT東日本-岩手 サービス運営部カスタマサービスサポート担当主査 小笠原信男

NTT東日本-岩手 サービス運営部長 亀ヶ川勇一