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第3回 雪から通信を守る

〜雪の脅威

NTTネオメイト岐阜高山統括営業所が受け持つ保守エリアは、飛騨地方の3市1村。世界遺産に指定されている白川郷も含まれる。面積は、岐阜県全域の4割に相当する。ここを約50人の技術者たちで守っている。

エリア内には、名古屋−岐阜−富山を結ぶ通信網の幹線が走り、そこから各市町村に枝分かれする中継ルート(名称要確認)や無線中継施設がある。幹線の多くは地下管路で結ばれているので(要確認)雪による被害は受けにくいが、中継ルートは電柱で架設しており、また、山上にある無線中継施設も雪の脅威にさらされる。

雪による通信網被害で最も多いのは、雪崩や、雪崩によって発生した倒木による通信ケーブルの裂断だ。倒木は多い年で約150件以上発生し、大きいものではケーブル裂断事故につながっている。

飛騨地方では、日中は気温が上がるために雪が溶け、シャーベット状になる。気温の下がる夜になると、それが凍り、さらに新雪が積み重なる。その結果、山が急峻なことも重なって表層雪崩が頻繁に発生する。実際、今回の取材で、道が雪崩でふさがり、雪かきをして進むというアクシデントが発生した。行く時の道路に異常はなかったが、同じ道を帰る時に雪崩が発生していた。僅か数時間で雪の状態が大きく変わる。
「雪の塊が落ちてきて自動車に当たったら、ボディがへこんでしまう」と地元の人は言う。それだけ重く締まった雪が通信ケーブルに固着したり、木をなぎ倒したりして通信ケーブルを巻き込む。白く清らかな雪が強固なケーブルすら切ってしまう脅威になるのだ。

山上にある無線中継施設はエリア内に5つある。雪がパラボラアンテナにこびりついて、異常が発生すると、雪をそぎ落とすしかない。雪山に立つタワーに登り、アンテナの雪かきを行わなければならない。

雪による通信網被害はこれだけにとどまらない。屋根からずり落ちる雪が、電柱から加入者宅に延びている通信線を巻き込んで切断したり、たるませてしまったりする被害もある。また、道路が雪で狭くなったり、滑りやすくなったりしているので車が電柱に衝突して倒してしまうケースもある。

飛騨市ではこんな話も聞いた。雪害ではないが、寒冷地ならではの事故だ。

宮川町に隣接し世界遺産で有名な白川郷には、南の荘川村から白川村の中継施設に通信ケーブルがつながっている。しかし、このルートはちょうど超高圧電力線のルートとも重なっている。高圧線の周辺では強い電界が発生しているので通信ケーブルに雑音が混入する。

これを防ぐため、電磁シールドが施された被膜の中に通信ケーブルを通している。しかし、時には氷点下15度になる寒暖差で皮膜が収縮して、つなぎ目から雪の溶けた水が浸みてケーブルを痛めることがあるという。ケーブルが地下管路にある場合、故障個所の近くのマンホールのふたを開けるために2メートルもの高さに積もった雪を掘り起こし、マンホール内で修理しなければならない。

NTTネオメイト岐阜高山統括営業所の技術者は、「川沿いの気温の低い場所で発生しやすいですね。雪かきをしてマンホールの蓋を開けると、手袋が凍って蓋とくっつき、離すのが容易じゃありません」と笑うが、白い雪と静寂につつまれた白川郷のそばで、通信網を守るための苦闘が続けられていることを知る人は少ない。

飛騨地方の通信網を約50人で守る

パラボラアンテナに雪がこびりついた無線中継所

雪が通信線を巻き込んで切断したり、たるませてしまったりする被害もある

崖の下など、危険な工事箇所も多い

取材:船木 春仁