(報道発表資料)

2024年1月24日
東日本電信電話株式会社
地域循環型ミライ研究所

関係人口創出に向けた”ワデュケーション”実証と今後の課題・提言について

東日本電信電話株式会社 地域循環型ミライ研究所(以下、NTT東日本)は、三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(以下、MURC)と共同で、関係人口創出に向けた"ワデュケーション"実証を行い、結果を「関係人口創出に向けた"ワデュケーション※1"実証と今後の課題」として公表しました。

実証の成果や明らかとなった課題をふまえ、社会的価値・経済的価値の可視化や地域の関係深化、デジタルを活用した関係人口創出のモデル構築などの提言をまとめました。今後、サステナブルな関係人口創出に向けて、さまざまな関係者と連携し、モデルの確立・普及を推進してまいります。

  • ※1ワデュケーションとは、Work〈仕事〉+Education〈地域のことを学ぶ教育〉+Vacation〈休暇〉を組み合わせた事業のことを指し、一般用語のワーケーションの一環として位置付けられるものを指す。

1.本取組みの背景、関係人口創出に着目する理由

各地域で移住・定住促進の取組みが進むものの、日本全体の市区町村の過半数が過疎地域であるという状況の中、地域間で人口の獲得競争につながるならば、必ずしも全体最適とは言えません。

他方、移住した「定住人口」や観光に来た「交流人口」ではなく、地域や地域の人々と多様に関わる「関係人口」※2が地域づくりの担い手となることが期待されています。今回、その地域にルーツを持たないものの地域との関係深化等の動機を持ち、後天的に関係人口となり得る"行き来する者「風の人」"にポテンシャルがあると考えました。

そこで、リモートワークを活用する企業の従業員を潜在層と捉え、従業員が地域に滞在し、リモートワーク等を活用して業務を行いながら、地域産業への就業(副業)等を通じて地域の活動に参加すること等により地域を学び地域との関係深化を図る"ワデュケーション"施策を企画し、関係人口創出、地域や参加企業にもたらす社会的価値・経済的価値の向上について有効性を検証しました。 

  • ※2移住した『定住人口』でもなく、観光に来た『交流人口』でもない、地域や地域の人々と多様に関わる者

「関係人口」のイメージ図 (出所) 総務省「これからの移住・交流施策のあり方に関する検討会報告書(概要)」2018/1/26

2.実証概要

実施目的 ワデュケーション施策が地域や参加企業にもたらす社会的価値・経済的価値についての検証
実施場所 新潟県佐渡市
実施期間 2023年10月〜11月
参加者 NTT東日本、MURCより17名
役割 NTT東日本 本実証の企画運営、アンケート調査実施・分析、レポート作成
MURC  本実証の企画支援、レポート作成
実施内容 廃校を活用した酒蔵のコワーキングスペース"学校蔵"にて所属企業の業務をリモートワークで実施する傍ら、業務以外の時間に佐渡島の住民とともにJA羽茂のおけさ柿選果場において「おけさ柿」の選定・箱詰めの就業体験や島内観光等を実施
  • 本実証は新潟県佐渡市とJA羽茂の協力のもと実施しました。

ワデュケーション実証における主な訪問先

①コワーキングスペース(学校蔵)②JA羽茂(おけさ下記選果場)③蓮華峰寺④矢島・経島⑤宿根木⑥北沢遊選鉱場跡⑦佐渡金山⑧佐渡市役所⑨ポートラウンジ⑩小倉千枚田 (出所) 国土地理院ウェブサイより地図情報引用の上、NTT東日本にて作成

3.実証成果

本実証後、参加者に対してアンケートやインタビューを行い、ワデュケーションによる気づきや改善意見等の収集・分析を行いました。

【社会的価値】

参加者の94%が施策に「満足」もしくは「やや満足」と回答、また、88%が幸福度について「とても上がった」もしくは「やや上がった」と回答するなど、肯定的な回答が得られました。全参加者が今回の訪問によって佐渡島のことが好きになったと回答し、また、地域産業を通じ地域住民の佐渡島への想いやシビックプライド※3も実感したとの意見も挙がり、参加者の佐渡島に対する地域愛の醸成にも繋がったことが窺えます。

  • ※3都市に対する市民の誇りを指す言葉

【経済的価値】

参加者の88%が、実証終了後も「近所のスーパーで佐渡産のものがあれば優先的に購入した」「ふるさと納税を申請した」 など、佐渡島と経済的なつながりを持つ行動をとったことが分かりました。さらに、就業体験では210時間に相当する労働力を地域外から提供したこととなり、一時的な供給ではあるが人手不足が深刻な地域への貴重な労働力供給となり、また、参加者は新たな知見や学びの場となるなど、出し手側、受け手側双方にwin-winの効果を生み出しました。

【課題】

ワデュケーション施策を継続実施する上で、いくつかの課題が浮き彫りとなりました。その中でも「宿泊」「交通」「プログラム」の3つに注目し、課題を整理しました。以下に主なものを取り上げます。

  • 宿泊面での課題
    • 機能性を持った宿泊施設など、普段通りの生活ができる環境の整備
    • 宿泊施設の供給量の拡充(空き家活用や家族向け施設の整備等)
  • 交通面での課題
    • シェアバイク、カーシェアサービスなど個人にとって利便性の高い移動手段の選択肢拡充
  • プログラム面(費用負担の仕組み等)での課題
    • 宿泊費、交通費等を、出し手側・受け手側双方が支援する制度の整備
    • 就業体験の発掘、ラインナップの整備、事前学習等の組み込み

4.サステナブルな関係人口創出に向けた提言

本実証の結果を踏まえ、ワデュケーション施策が関係人口創出に寄与していくために取り組むべきことを提言します。今後、さまざまな関係者と連携し、モデルの確立・普及活動を進めてまいります。

社会的価値・経済的価値の可視化 様々なステークホルダーの参加・協力意欲を得るための価値を可視化するロジックの生成
参加対象と提供プログラムの拡充 参加対象者の属性に対応した多種多様なプログラムの拡充
地域との関係深化 文化・食・自然・歴史から地域の魅力を見つけ、シビックプライドを理解するプロセスの組み込み
地域との繋がりの維持 地域と地域外の人々の繋がりを維持するための施策準備、地域内外の両方を行き来できる仕組みの構築
デジタルを活用した関係人口創出のモデル構築

"3STEPの「デジタル活用型ワデュケーション関係人口創出モデル"

(1) リモートワーク等の"デジタル"を活用した働き方を地域への訪問につなげ、ポテンシャル人口を広げる

(2) 実際に訪問して(リモート・副業)ワークと学びの"フィジカル"体験により、地域との関係を深化

(3) 都市に戻った後は、"デジタル"活用によって地域との関係を維持・強化

運用イメージ図。ワデュケーション、学びによる関係深化を企画設計 (出所)ワデュケーションプロジェクトメンバーにより作成

5.本件に関するお客さまからの問い合わせ先

地域循環型ミライ研究所

https://www.ntt-east.co.jp/regional_circulation/

〈地域循環型ミライ研究所について〉

地域循環型ミライ研究所は、2023年2月にNTT東日本内に、「地域シンクタンク※4」として設置されました。NTT東日本は、パーパスとして「地域循環型社会の共創」を掲げ、地域に寄り添う「ソーシャルイノベーションパートナー」として地域の価値創造に取り組んでいることから、当研究所は、この取組みを更に加速するため、また、長期的に持続し、活力ある「地域のミライ」を様々な関係者とともに共創するモデルの創出に向けて活動しています。設立以降の活動内容については、1月24日に発行した別紙「地域循環型ミライ研究所 アニュアルレポート2023」を参照願います。

  • ※4地域の価値・魅力である「文化・食・自然」などの領域を調査・研究・発信するシンクタンク。
つぎのミライはあなたの街からはじまる。NTT東日本グループ

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