(報道発表資料)

2020年11月16日
山梨市
東日本電信電話株式会社

ICTを活用した地域版スマートシティの社会実装に向けた取り組み
〜自営無線ネットワークを整備し地域の課題解決を推進〜

  • 山梨市(市長 高木 晴雄)と東日本電信電話株式会社(代表取締役社長: 井上 福造、以下「NTT東日本」)は、山梨市の基幹産業である農業分野でのIoT活用による課題解決を起点に、自営無線ネットワークをベースインフラとした街づくりを進めています。
  • 山梨市は、2017年2月から自営無線ネットワークを活用し、圃場における環境センシングや盗難対策、市内における防災対策を進めてきましたが、2020年12月より、同ネットワークを福祉分野への活用に発展させ、地域版スマートシティとして本格展開いたします。
  • 通信事業者が提供する無線通信サービスとは異なり、国、自治体、一般企業等が事業運営や業務効率化のために開設・運用している無線ネットワーク

1.概要

ブドウやモモ等の果樹農業を基幹産業とする山梨市とICTなどを活用した地域活性化に取り組むNTT東日本は、2017年から多様なパートナーと協働のうえ、儲かる農業や持続可能な社会の実現をめざす官民連携のプロジェクトを推進してきました。

本プロジェクトの一環で、これまで山梨市において最適な無線ネットワークとセンサー等を組み合わせ、農業を起点とした地域産業の課題解決を進めてまいりましたが、2020年12月からは水位センシングデータの住民へのオープン化およびネットワークの福祉分野への活用を開始する運びとなり、「地域版スマートシティ」としての取り組みを更に発展させます。

日本の自治体の多くが人口10万人以下の中小規模自治体であるなかで、山梨市も同様に人口約3.5万人の地方都市となりますが、本事例はこうした中小規模自治体が、地域課題の解決や街づくりのために無線ネットワークやセンサー等を地域実装し、自立して運用しているスマートシティの実例といえます。

今後も自営無線ネットワークを街づくりのベースインフラとして、産業の枠を超えた横断的な課題解決を図ることで、地域の皆さまが安心して快適に過ごすことができる社会の実現をめざします。

2.これまでの取り組み

<概要>

  • 山梨市が、地域の課題を横断的に解決する自営無線ネットワーク「LPWA」基地局を市内5拠点に整備
  • 農業での活用を起点に、河川の水位監視や地崩れ監視等の防災分野へ活用領域を拡大
  • 各センサーは、太陽光や照明光、機械の発する振動、熱などのエネルギーを採取し給電するエナジーハーベスティングシステムを採用することで、電源確保が困難なエリアでも運用が可能

<農業:圃場の環境データセンシング>

シャインマスカット生産農家の圃場において、温湿度や照度等の環境データを取得できるセンサーを設置し、クラウドを通じて自宅や外出先等から確認できる仕組みを構築しております。

圃場の環境データをリアルタイムに把握することで、圃場の巡回回数を必要最低限にすることができ、巡回頻度を20%削減しました。また、JAが保有する栽培マニュアルとセンサーで可視化された圃場の状態を常に照合しながら栽培ができることで、失敗の少ない安定栽培も実現しております。

<農業:シャインマスカットの盗難対策>

高単価のため被害が多いシャインマスカットの盗難対策として、圃場の出入り口に人感センサーを設置し、人の動きを検知した際に指定のメールアドレスにアラート通知ができる仕組みを構築しております。

盗難発生時の迅速な対処や心理的な犯罪抑止効果が期待でき、生産者の経済的損失や経営意欲低下等の抑止を実現しております。

<防災:水位監視、地崩れ監視>

自治体の防災対策として、市が管理する河川や土砂災害の特別警戒地域の一部にセンサーを設置し、災害時の状況確認や定期巡回稼働低減等、市域情報を効率的に把握できる仕組みを構築しています。

河川や傾斜地の状況をリアルタイムに把握でき、災害発生時には指定のメールアドレスにアラートが通知されるため、現場特定の迅速化や早期復旧にもつながります。

更に2020年12月からは、センシングした水位データを山梨市のホームページで公開し、オープンデータ化を図ることで、住民向けサービスとして提供していきます。

3.新たな取り組み(福祉分野)

<概要>

  • 高齢者の安否確認や緩やかな見守りに向け、「自宅」と「高齢者が集まる施設」の出入りを検知し、あわせて自宅の環境情報等を可視化することにより、宅内外を一貫して安否確認する仕組みを構築
  • 災害時の安否確認として、災害避難所に出入りした際に検知する仕組みを整備
  • 各センサーは照明や圧力、振動等のエネルギーを電力に変換できる電源レスのセンサーを採用しているため、電池切れで正しく検知ができないといったリスクを回避可能
  • 見守りの専用センサー(靴、クリップ等)は、株式会社ニフコが開発するセンサーを利用

【取り組み①】

センサー等を身に着けた高齢者が自宅・公民館を出入りした際にご家族等にメールを通知します。日常生活への浸透性が高い靴内蔵センサーを活用することで、高齢者が意識することなく見守ることができます。

【取り組み②】

高齢者の自宅に温度や照度等の環境情報を取得できるセンサーや、ドアの開閉状況を検知できるセンサーを設置することで、宅内状況の可視化や異常検知時のご家族への通知が可能です。

【取り組み③】

災害避難所に出入りした際に検知する仕組みを構築します。この仕組みにより、災害時に高齢者が無事に避難できたことを確認できるとともに、どの避難所に居るかの位置情報を把握することができます。

<NTT東日本公式ホームページ事例サイト>

https://www.ntt-east.co.jp/aboutus/act/case/jiei-net.html

4.今後の展開

自営無線ネットワーク基地局の設置拡大や、他の産業課題への活用等、持続可能な街づくりに向けた新たな仕組みづくりをめざしていきます。また、福祉分野では、見守りシステムの有効性の効果検証を図り、規模拡大や本格実装に向けた検討を進めていきます。

これらの取り組みを通じ、スマートシティを形成するノウハウと実績を蓄積し、本事例を地域版スマートシティのショーケースとして、全国の中小規模自治体への普及拡大を図っていきます。

報道発表資料に記載している情報は、発表日時点のものです。
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