(報道発表資料)

2025年10月8日
NTT東日本株式会社
三菱電機株式会社
一般社団法人CC-Link協会

IOWN APNを活用した産業用ネットワークCC-Link IE TSNの長距離リアルタイム通信の実証に成功
~遠隔地の産業用機器の高精度な監視・制御を実現〜

NTT東日本株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:澁谷 直樹、以下「NTT東日本」)と、三菱電機株式会社(本社:東京都千代田区、執行役社長:漆間 啓、以下「三菱電機」)、一般社団法人CC-Link協会(本社:愛知県名古屋市、事務局長:濱口 学、以下「CLPA」)の三社は、CC-Link IE TSN※1を実装した産業用機器同士を、擬似的に構築された遠距離地点に配置し、IOWN※2の中核技術であるオール・フォトニクス・ネットワーク(以下「APN※3」)を通じて、最大1,600km離れた場所でリアルタイムに監視・制御する実証に成功しました。

なお、本実証技術については2025年11月19日(水)〜21日(金)に開催予定の「IIFES2025」のCLPAのブース※4にて紹介いたします。

1.背景

産業界では、少子高齢化による労働力不足や、グローバルでの競争激化により、生産の効率化が重視され、製造現場のデジタル化や遠隔監視・制御のニーズが高まっています。しかし、遠隔地の工場の生産状況を把握するために現場のIoT機器から収集されるデータを監視・分析したり、遠隔地の工場の機器をきめ細やかに制御したりする場合などにおいて、CC-Link IE TSNを従来の拠点間ネットワークと接続しても、産業用機器の高精度な監視・制御に必要とされる通信の遅延性能や安定性(ゆらぎの少なさ)を十分に満たさないことから、遠隔でリアルタイムに産業用機器を監視・制御することが困難でした。また、従来の拠点間ネットワークは、工場等において産業用機器を適切に制御することで実現する機能安全の確保に必要な要求事項の一つである、安全通信機能※5も備えていませんでした。

これらの課題に対し、NTT東日本と三菱電機、CLPAは、APNの「低遅延」「ゆらぎゼロ」の特長と、CC-Link IE TSNの「高速リアルタイム」、「高精度同期」、「安全通信機能」の特長を活用して、遠隔にある産業用機器同士をAPN を通じCC-Link IE TSNによってリアルタイムに通信する実証を試みました。

2.概要

本実証では、NTTe-City Labo※6内の「IOWN Lab※7」(東京都調布市)に、CC-Link IE TSNのマネージャ局を搭載した産業用機器(三菱電機製シーケンサ※8)を設置、約20km離れたeXeFIELD AKIBA(東京都千代田区)にローカル局を搭載した産業用機器(三菱電機製シーケンサ)やリモート局に当たる産業用機器(三菱電機製リモートI/O※9)を設置し、これらの拠点間をAPNの実回線を用いて接続しました。その結果、実測した遅延性能とゆらぎの性能がCC-Link IE TSNの仕様を十分に満たしており、正常に通信できることが確認できました。

さらに、OTN Anywhere※10の遅延調整機能を用いて、擬似的に最大1,600km(青森〜下関間のAPNの距離に相当)の回線遅延を付加することで、遠隔地間においてAPNで接続した場合※11においても、CC-Link IE TSNによってリアルタイムで通信可能なことを確認しました(図1参照)。また、CC-Link IE TSNは安全通信機能を有するため、遠隔地間でも機能安全を確保できる可能性があることも確認できました。

なお、CC-Link IE TSNには性能に応じClass AとClass Bという二つの仕様※12がありますが、今回はより高性能なClass Bを実証に使い、通信ノード間の同期精度が1µs以下であることを確認しています。

図1.本実証のシステム構成

3.今後の展開

本実証の結果より、APNを通じて、遠隔地にあるCC-Link IE TSNが実装された産業用機器を「高速リアルタイム」、「高精度同期」、「安全通信機能」の特長を活かしながら、監視・制御が可能となります (図2参照)。

さらに、デジタルツインのリアルタイム化による生産のさらなる最適化や、遠隔監視・制御のリアルタイム化によるトラブル発生時のダウンタイム短縮が期待されます。

また、幅広い業界で採用される三菱電機製シーケンサの納入実績をもとに、自動車、リチウムイオン電池、ガラス、タイヤ、半導体、飲料・食料品、医薬品、日用品の製造等、さまざまなシーンでの活用事例の創出に向けて、実証を重ねていきたいと考えています。

NTT東日本と三菱電機、CLPAは、産業界における製造現場のデジタル化とリモート化の要望に応えるソリューションを広く提供することで、デジタルツインを活用した生産の効率化やカーボンニュートラルの推進をサポートし、日本のモノづくりの課題解決と競争力強化に貢献してまいります。

図2.APNを活用したCC-Link IE TSN通信システムの一例

4.本件に関するお問い合わせ先

NTT東日本株式会社

経営企画部 IOWN推進室
iownlab-ml@east.ntt.co.jp

三菱電機株式会社

社会システム事業本部 通信システム事業部 IOWN・新規事業開拓グループ
MELCO_tsushin@rm.MitsubishiElectric.co.jp

一般社団法人 CC-Link協会

info@cc-link.org

  • ※1CC-Link IE TSNは、産業界でいち早くTime-Sensitive Networking技術を採用し、CLPAで仕様を公開しているオープンネットワークです。Time-Sensitive Networking技術(略称TSN)は、Ethernet通信のリアルタイム性に関する複数の国際標準で構成された技術規格で、主な規格にIEEE 802.1AS・IEEE 802.1Qbvがあります。 これらの規格を組み合わせることで、一定時間内での伝送を保証する定時性や異なる通信プロトコルとの混在が実現可能となります。
    https://www.cc-link.org/ja/cclink/cclinkie/cclinkie_tsn.html新規ウィンドウで開く
  • ※2IOWN (Innovative Optical and Wireless Networkの略、アイオン)とは、あらゆる情報を基に個と全体との最適化を図り、光を中心とした革新的技術を活用し、高速大容量通信ならびに膨大な計算リソースなどを提供可能な、端末を含むネットワーク・情報処理基盤の構想です。
    https://www.rd.ntt/iown/新規ウィンドウで開く
  • ※3オール・フォトニクス・ネットワーク(All-Photonics Network)とは、通信ネットワークの全区間で光波長を専有する通信サービスです。NTT東日本は、2023年3月にオール・フォトニクス・ネットワークであるAPN IOWN1.0の提供を開始し、2024年12月には最大800Gbpsの「All-Photonics Connect powered by IOWN」の提供を開始しました。
    https://www.ntt-east.co.jp/release/detail/20230302_01.html
    https://www.ntt-east.co.jp/release/detail/20241118_01.html
  • ※4IIFES2025(Innovative Industry Fair for E x E Solutions2025の略)は、東京ビッグサイトで開催される国内最大級のオートメーションと計測の先端技術総合展です。(CLPAブースの小間位置:東展示場 6ホール、小間番号:12-3)
    https://iifes.jp/#about新規ウィンドウで開く
  • ※5安全通信機能とは、国際安全規格IEC61508に示されるSIL3の適合に必要な要件に従い、データの安全な伝送を保証するために必要なすべての対策が含まれている通信機能です。
  • ※6NTTe-City Laboとは、地域の課題解決に向けてNTT東日本グループが取り組むソリューションを体感できる施設です。
    https://business.ntt-east.co.jp/content/regional_revitalization/labo/新規ウィンドウで開く
  • ※7IOWN Labとは、IOWNのユースケース創出に向けて、さまざまなパートナーと共同実証を行う環境としてNTT東日本が2024年1月24日に開設した共創環境です。
    https://business.ntt-east.co.jp/content/iown/iownlab/新規ウィンドウで開く
  • ※8シーケンサとは、三菱電機が提供するProgrammable Logic Controllerの商品名であり、産業用機械やプロセスの自動制御を行うためのコントローラです。国内外の製造業の工場やその他業界の現場で幅広く採用されています。
    https://www.MitsubishiElectric.co.jp/fa/products/cnt/mxc/index.html新規ウィンドウで開く
    https://www.MitsubishiElectric.co.jp/fa/products/cnt/plc/index.html新規ウィンドウで開く
  • ※9リモートI/Oは、CC-Link IE TSNリモート局として、ON/OFF信号やアナログ信号を扱う機器(スイッチやセンサ等)と接続し、その信号をシーケンサに通信します。
  • ※10OTN Anywhereとは、APNとの接続に対応するNTT東日本が提供する端末装置です。
    https://business.ntt-east.co.jp/content/iown/feature/新規ウィンドウで開く
  • ※11APNの端末装置の一つであるOTN Anywhereの遅延調整機能を用いて片道7.9msの遅延を付与することで、約1,600km離れた拠点間を擬似的に接続する環境の構築を行いました。
  • ※12CC-Link IE TSN Class Bは、TSN技術により、同期精度1µs以下で機器同士が時刻同期通信を行い、高速・高精度な制御を実現するクラスです。CC-Link IE TSN Class Aは、システム構築の柔軟性を重視した、時刻同期を行わないクラスです。
    https://www.cc-link.org/ja/support/cclinkie_tsn_flow/index.html
つぎのミライはあなたの街からはじまる。NTT東日本グループ

報道発表資料に記載している情報は、発表日時点のものです。
現時点では、発表日時点での情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承いただくとともに、ご注意をお願いいたします。