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2025年2月28日
日本電信電話株式会社
東日本電信電話株式会社
弘前大学医学部附属病院
株式会社メディカロイド
鹿島建設株式会社
発表のポイント
日本電信電話株式会社(東京都千代田区、代表取締役社長:島田 明、以下「NTT」)、東日本電信電話株式会社(東京都新宿区、代表取締役社長:澁谷 直樹、以下「NTT東日本」)、弘前大学医学部附属病院(青森県弘前市、病院長:袴田 健一、以下「弘前大学病院」)、株式会社メディカロイド(兵庫県神戸市、代表取締役社長CEO:宗藤康治、以下「メディカロイド」)、鹿島建設株式会社(東京都港区、代表取締役社長:天野 裕正、以下「鹿島建設」)は、遠隔手術支援の実現に向けて、物理的に離れた2つの病院間に設置した手術支援ロボット「hinotori™ サージカルロボットシステム」(以下、「hinotori™」)※1をIOWNオールフォトニクス・ネットワーク(以下、「APN」)※2※3で接続する遠隔手術支援の実証に成功しました。本実証結果を活かし、今後の遠隔手術支援の社会実装に貢献します。
手術支援ロボットを使用して行う遠隔手術支援※4は、地方外科医師数の減少による地域医療格差といった社会課題の解決、地域医療支援と若手外科医の教育・育成による医療レベルの向上(医療の均てん化)に寄与することが期待されており、日本外科学会が中心となって社会実装に向けた遠隔手術ガイドライン※5の策定を推進されています。2025年度には遠隔手術ガイドラインの改定が予定されており、今後、遠隔手術支援の社会実装が進められます。
青森県内にある弘前大学医学部附属病院と、つがる西北五広域連合つがる総合病院を、大容量・低遅延・ゆらぎなしの特徴を併せ持つAPN (NTT東日本提供の「All-Photonics Connect powered by IOWN」※6)にて接続し、実際の医師による人工臓器モデルを使用した現実に即した遠隔手術支援の実証を実施しました。
図: APNを活用した遠隔手術支援の構成イメージ
なお、本実証は、日本医療研究開発機構(AMED)の「医療・介護・健康データ利活用基盤高度化事業(高度遠隔医療ネットワーク実用化研究事業)」「手術支援ロボットを用いた遠隔手術の実現に向けた実証研究(24hsa422001h0003)」の支援により実施しました。
APNの通信品質の評価については、定量的な通信品質測定を行い、片道の伝送遅延は0.28msec、遅延ゆらぎは平均0.00μsec、最大0.02μsecという結果でした(表)。さらにAPNとNTTの従来ネットワークとを比較し、APNは従来のギャランティ型回線より、約4倍の伝送遅延性能、120倍以上の最大遅延ゆらぎ性能であることを確認しました。今回は約30kmの距離において評価を行いましたが、APNは距離に伴う遅延やゆらぎの影響を僅少化できるため、さらに長距離となった場合の効果が期待できます。
片道の伝送遅延 | 遅延ゆらぎ(平均) | 遅延ゆらぎ(最大) | |
---|---|---|---|
IOWN APN | 0.28 msec | 0.00μsec | 0.02μsec |
従来のギャランティ型回線 | 2.20 msec | 0.17μsec | 2.96μsec |
表: 伝送距離約30kmの病院間におけるAPNの通信品質測定結果
上記の結果により、ネットワークの遅延やゆらぎの影響を僅少まで軽減した伝送環境を用いた、手術支援ロボットの高精度な遠隔操作を実現しました。遠隔地にいる術者が、ネットワークを介さずに行うロボット支援下手術と変わらない形で遠隔手術支援を行えることを確認しました。
遠隔コミュニケーションの評価については、術者にコミュニケーション環境を体感いただき、「コミュニケーションの臨場感を感じるか」等のアンケートに対して高評価をいただきました。
これらの評価結果により、APNを用いて大容量・低遅延・ゆらぎなしでの音声信号、映像信号を伝送し、立体音響スピーカー「OPSODIS1」、バイノーラルマイク、高精細4Kリモートカメラ、および大型モニタを用いた高品質な空間を創出、まるで同一の手術室にいるかのような臨場感のあるコミュニケーション環境を実現できることを確認しました。
遠隔操作の様子:
左:現地施設側(弘前大学医学部附属病院) 、右:遠隔施設側(つがる総合病院)
IOWN APNは従来の回線と比べて全く遅延を感じず、さらにはスピーカーの立体音響技術や高精細なカメラ映像技術等を掛け合わせることにより、離れた手術室空間ですが、距離を感じない程の臨場感に驚嘆しました。今回使用したIOWNは大阪・関西万博でお披露目されるとお聞きしておりますので、心待ちにしております。
日本全体が一つの手術室のようになれば、患者さんはどこにいても質の高い医療を受けることができ、若手外科医も場所を選ばず手術指導が受けられることを実感いたしました。
本取り組みにおける各社の役割は以下のとおりです。
NTT | APNを活用した遠隔手術支援に関する設計技術支援と結果分析 |
---|---|
NTT東日本 | APN「All-Photonics Connect powered by IOWN」の提供と技術協力 |
弘前大学病院 | 手術室環境の提供と手術支援ロボットの遠隔操作での手術実証実施 |
メディカロイド | 手術支援ロボット「hinotori™」の提供と技術協力 |
鹿島建設 | 立体音響スピーカー「OPSODIS 1」の提供と技術協力 |
今回のIOWN APN実証結果から従来ネットワークに対するAPNの性能優位性が認められたことを踏まえつつ、今後、将来の遠隔手術支援社会実装に向けたフィールド実証を共同で進めます。
また、IOWN APNの技術により、医療の質の向上、質の高い医療へのアクセシビリティの確保、医療業界のDXに貢献いたします。
<用語解説>
報道発表資料に記載している情報は、発表日時点のものです。
現時点では、発表日時点での情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承いただくとともに、ご注意をお願いいたします。