News Release東日本電信電話株式会社

2023年11月29日
つぎのミライはあなたの街からはじまる。NTT東日本グループ

「東急ジルベスターコンサート2023-2024」にて世界初となるAPN IOWN1.0を用いた生放送をテレビ東京・BSテレビ東京で実施

東日本電信電話株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:澁谷直樹、以下「NTT東日本」)は、2023年12月31日から2024年1月1日にかけて、東京都渋谷区のBunkamuraオーチャードホールで開催される「東急ジルベスターコンサート2023-2024」において、IOWN※1におけるオール・フォトニクス・ネットワーク(以下「APN」)※2を実現するNTT東日本の次世代通信サービス、APN IOWN1.0を用いてコンサート会場と放送局をつなぎ、リアルタイムで中継伝送した映像を、地上波・BS(HD/4K)放送で生放送する取り組みを実施します。APNを活用した地上波・BS(HD/4K)放送での生放送は、世界初の試みとなります。

NTT東日本は今回の取り組みにより、IOWN技術を活用した高精細な映像の放送や、リモートプロダクションによる番組制作の展開等の検討を一層推進し、これまでにない映像体験やエンターテイメント体験の実現をめざします。

  • ※1IOWN (Innovative Optical and Wireless Networkの略、アイオン)とは、あらゆる情報を基に個と全体との最適化を図り、光を中心とした革新的技術を活用し、高速大容量通信ならびに膨大な計算リソースなどを提供可能な、端末を含むネットワーク・情報処理基盤の構想です。
    https://www.rd.ntt/iown/新規ウィンドウで開く
  • ※2オール・フォトニクス・ネットワーク(All-Photonics Network)とは、通信ネットワークの全区間で光波長を専有する通信サービスです。2023年3月にNTT東日本は、オール・フォトニクス・ネットワークであるAPN IOWN1.0の提供を開始しました。
    https://www.ntt-east.co.jp/release/detail/20230302_01.html

1. 背景

放送業界では、従来の通信サービスを用いてリアルタイム中継を行う場合、帯域等の制約のため、高性能なカメラで撮影した映像であっても、一定の品質劣化を許容した上で圧縮して伝送することが行われてきました。一方、中継前後で編集を加える場合など、映像信号に対して圧縮処理と元に戻す処理を繰り返すことで、映像品質の劣化や、処理のための遅延が発生するといった課題もあります。これに対し、遅延が少なくなるように配慮した映像圧縮方式も考案されましたが、伝送容量の制約がない場合、可能な限り映像は圧縮せずに伝送することが映像品質の担保につながります。

また昨今、新しい番組制作フローとして、映像等ソースをネットワークにて伝送し、遠隔編集拠点で制作を行うリモートプロダクションが注目されています。各種リソース配備の効率化や、より制約の少ないプロダクションが行えるなど、番組制作の効率化・自由度向上が期待できる一方で、映像等信号の伝送には超高品位なネットワークが要求されることから、リモートプロダクションは十分な普及に至っていない状況です。

これらの放送や番組制作における課題に対して、NTT東日本とテレビ東京はAPN IOWN1.0の特徴である「高速・大容量」「低遅延・ゆらぎゼロ」を活かす検討を進めてきました。

この度、APN IOWN1.0を用いた4K非圧縮映像のリアルタイム中継および生放送が実用化レベルであることを確認できたことから、取り組みの第一弾として、実際のコンサートイベントへの適用および、地上波・BS(HD/4K)放送での生放送を行うことといたしました。

2. 概要

今回「東急ジルベスターコンサート2023-2024」にて実施する生中継は、渋谷区Bunkamuraオーチャードホールにて、複数の4Kカメラにて撮影した映像を編集した後、ネットワークを介して当該信号等を伝送する際の業界標準規格の一つであるSMPTE ST 2110準拠の形式へと非圧縮のまま変換し、APN IOWN1.0を用いて港区六本木にあるテレビ東京までリアルタイムに中継伝送します。そして、その伝送された非圧縮映像信号を用い、テレビ東京・BSテレビ東京にて生放送いたします。

APN IOWN1.0の特徴である大容量を活かして映像ソースを非圧縮のまま伝送するため、高品質な映像を中継できることに加え、同じく特徴である低遅延を活かして、タイムラグのほとんどない生中継を実施することが可能となり、高品質・低遅延な生中継を視聴者の皆さまにご覧いただける予定です。

<APN IOWN1.0を用いた生放送の実現イメージ>

  • ※3ソニーマーケティング株式会社さまよりご協力いただき、今回はNevion社製の映像信号変換装置Virtuoso MIを採用しております。
  • ※4シスコシステムズ合同会社さまよりご協力いただき、今回はCisco社製レイヤ3スイッチCisco Nexus 9000 シリーズのPTP対応モデルN9K-C93180YC-FX3を採用しております。
  • ※5リーダー電子株式会社さまよりご協力いただき、今回はリーダー電子社製シンクジェネレータLT4610を採用しております。

3. 今回実施のポイント

(1) APNを用いた高品質で低遅延な遠隔中継生放送の世界初となる事例

従来の通信サービスを用いて生中継を行う場合、帯域等の制約のため、高性能なカメラで撮影した映像であっても、一定の品質劣化を許容した上で圧縮して伝送することが行われてきました。しかし、APN IOWN1.0のような大容量の通信サービスにより、映像を圧縮せずに放送局まで伝送することが可能となりました。これにより、従来よりもさらに高品質な映像を地上波・BS(HD/4K)放送にてご覧いただけるようになります。

また、元々伝送遅延が少ないAPN IOWN1.0を利用していることに加え、映像を非圧縮で伝送することで、映像信号の圧縮処理・復号化処理をおこなわず済むため、さらに生中継の遅延を少なくすることができ、今回のように年越しカウントダウンといったシチュエーションでよりタイムラグのない生中継を楽しむことができます。

今回APNを用いて遠隔映像を中継し地上波・BS(HD/4K)放送で生放送することは世界初の事例となりますが、今後は大容量・低遅延の特性を活かしたAPNの適用事例が放送分野において増えていくものと期待しています。

(2) 映像信号変換装置等の準備を含めたワンストップな伝送サービスの提供

APNの映像中継や放送との親和性を考慮し、今回はNTT東日本にて非圧縮の映像信号をネットワーク伝送用に変換する装置(SDI信号をSMPTE ST 2110へ変換する装置)や、中継運用のため遠隔地同士でコミュニケーションを取り合う際に利用する装置を追加できるネットワーク装置(レイヤ3スイッチ)、各種映像装置間で撮影・再生タイミングを合わせるための同期信号発生装置についてもインテグレーション提供します。ネットワークサービスの利用に必要となる終端端末と映像信号変換装置等の接続性確認の手間を省き、装置手配や運用等の手間が少なくなるよう工夫します。

(3) BB信号から生成した同期情報のPTPによるAPN伝送

中継現場と放送局間の映像伝送においては、各拠点に設置される映像装置間の同期をとる必要があることから、APNを活用しない場合は、拠点ごとに同期信号を生成・配布するための装置を設置し、GPS/GNSS衛星から取得した時刻情報を利用して同期のための信号を各装置へ配信しています。

リモートプロダクション環境を構築したeXeField Akibaとサッカーの試合が行われる国立競技場をAPN IOWN 1.0で結んでNTTグループが7月に実施した実証実験※6では、2拠点間に時刻同期信号(PTP※7)を流通させ、1台の同期信号発生装置から複数拠点の装置に対して同期を掛けることに成功していました。

今回はさらにこの構成をアレンジし、港区六本木にあるテレビ東京の既存装置で発生させたBB信号※8(ハウスシンク)を同期タイミングのマスターとして時刻同期信号(PTP)を生成し、そこからAPN IOWN1.0を通して遠く離れた渋谷区Bunkamuraオーチャードホールの中継現場まではPTPで伝送し、中継現場の装置群に対して再度BB信号の形式で同期情報を配信します。このように、APN IOWN1.0を用いると、既存の放送設備に大きな手を加えることなく同期信号を遠隔中継ロケーション先で配信できるというように、離れた拠点をあたかも1つのロケーションのように扱うことができ、システム構成のシンプル化や装置群運用の簡素化につなげることも可能となります。

  • ※6「明治安田Jリーグワールドチャレンジ2023 powered by docomo」においてAPN IOWN1.0を活用しリアルタイム性が求められる 「リモートプロダクション」と「8KVR複数同時映像伝送」の実証を実施しました。
    https://www.ntt-east.co.jp/release/detail/20230724_01.html
  • ※7PTP(Precision Time Protocolの略、IEEE-1588により規定)は、コンピュータ等装置間が同期して動作する必要がある場合にタイミングを合わせるために用いられる通信プロトコルです。マイクロ秒以下の精度を持ち、近年放送設備等でも利用されるようになってきています。
  • ※8BB信号(Black and Burst信号の略)は、IP等通信ネットワーク用のプロトコルが利用できないカメラ等の撮影装置にて用いられる同期用の信号で、BNCコネクタ経由でやりとりされます。この放送局本局の既存装置で発生させたBB信号(局内同期信号)を特に「ハウスシンク」と呼び、放送局内のすべてのシステムはこの基準信号から出力される同一タイミングの同期信号でロックされます。

4. 今後の展開

NTT東日本はAPN IONW1.0をはじめとした今回「東急ジルベスターコンサート2023-2024」において提供するソリューションを各放送事業者さまへも積極的にご提案し、大容量・低遅延・ゆらぎゼロといったAPN IOWN1.0の特性を活かした遠隔生放送やリモートプロダクションといった業務を支援していけるよう継続検討していきます。IOWN技術を活用した高精細な映像の放送やリモートプロダクション等番組制作の展開に関する検討を一層推進し、これまでにない映像体験やエンターテイメント体験の実現をめざします。

報道発表資料に記載している情報は、発表日時点のものです。
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