(報道発表資料)

2021年1月19日
木更津市
東日本電信電話株式会社

ICTによる安心・安全な地域づくりに向けた取り組み
〜自営無線ネットワークを活用したスマートシティ化の推進〜

木更津市(市長:渡辺 芳邦)と東日本電信電話株式会社(代表取締役社長:井上 福造、以下「NTT東日本」)は、これまでICTを融合した持続的なまちづくりに向けて産官学連携で取り組みを進めてまいりましたが、2021年1月より、新たに自営無線ネットワーク※1を活用した「地域児童の下校見守り」・「避難所での安否確認」に関する取り組みを開始し、スマートシティ化を推進してまいります。

  • ※1通信事業者が提供する無線通信サービスとは異なり、国、自治体、一般企業等が事業運営や業務効率化のために開設・運用している無線ネットワーク(一般的にはローカル5G・LPWA・Wi-Fi等がある)

1.概要 

情報通信技術の積極的な利活用による豊かな暮らしの実現をめざしている木更津市と、ICTなどを活用した地域活性化に取り組むNTT東日本は、2019年から産官学の多様なパートナーと協働し持続可能な街づくりの実現に向けた取り組みを推進してきました。

本取り組みの一環としてこれまでも、木更津市の重要産業の一つである農業・観光の分野において、鳥獣害対策の効率化・ジビエ産業の活性化、地域祭事の運営効率化など地域課題の解決を進めてまいりましたが、新たに自営無線ネットワークの活用による「地域児童の下校見守り」および「避難所での安否確認」に関する取り組みを開始します。福祉・防災分野など他分野横断型の取り組みを通じ、活気ある安心・安全な地域づくりをめざします。

2.これまでの取り組み(農業・観光分野)

IoTを活用した鳥獣害対策とジビエ産業による地域活性化

【概要】

 近年、全国的に深刻な問題となっている野生鳥獣による農作物被害や、狩猟従事者の担い手不足という課題が顕在化しています。その中でも、イノシシによる被害が拡大している木更津市とともに猟師の巡回稼働の削減や野生鳥獣の生態把握による捕獲の効率化に向けて、2019年4月より産官学連携の取り組みを進めてきました。

課題 解決策(IoT活用シーン) 成果
猟師の巡回稼働削減 遠隔から罠の稼働状況を監視 猟師の巡回回数を約85%削減※2
生態把握の効率化 自動撮影カメラで鳥獣の様子を確認 餌の食べ方などの生態状況を踏まえた効率的な罠の設置が可能
迅速な食肉加工処理 事前に捕獲情報を把握 食肉加工業者の処理稼働を効率化
  • ※2本取り組みに参画している猟師の成果の一例となります。

なお、IoTによる捕獲の効率化においては、自営無線ネットワークの一つであるIEEE802.11ahの実験試験局免許を取得・活用しており、IEEE802.11ahの導入や運用にあたっては、本規格の日本国内利用実現に向けて活動している802.11ah推進協議会(https://www.11ahpc.org/新規ウィンドウで開く)と連携しています。

地域祭事の安心・安全な運営に向けた取り組み

【概要】

 大勢の人が集まる祭事の運営においては年々警備の強化が求められている一方で、人手不足により警備員の確保が困難になるなどの理由で、全国的に地域祭事の中止が相次いでいます。地域の伝統文化である祭事を後世に残していくために、同様の課題を抱える木更津市とともに毎年約30万人が訪れる地域最大の行事である「木更津港まつり」において、IoT・AIを活用して運営の効率化を図る取り組みを2019年8月に実施しました。

 なお、本取り組みは新型コロナウイルスの感染拡大防止対策の一つとして、屋外イベントでの混雑状況の可視化などの観点での活用も見込まれます。

課題 解決策(IoT活用シーン) 成果
来場者の安全確保・警備員の適正配置 カメラ映像による混雑状況のモニタリング 遠隔からリアルタイムでの的確な指示・警備計画の改善
仮設トイレ配置・数の適正化 センサーによる利用状況の可視化 混雑状況のデータ化により設営場所の改善・次年度計画の検討に活用
自然災害に対する危機管理 1kmメッシュの精緻な天気予報の活用※3 急な降水等を見越した屋外準備の調整や的確な運営判断が可能
  • ※3株式会社ハレックスの協力による

3.新たな取り組み(福祉・防災分野)

【概要】

 近年、学校の統廃合に伴う学区の拡大により、通学時間が増加傾向にあることから保護者による下校時の安全に対する見守りのニーズが高まっています。また、2019年の台風15号・19号による甚大な被害を教訓に、災害時における地域住民の安否確認への対策が急務となっています。このような地域の課題を横断的に解決していくため、自営無線ネットワークを活用して、通常時は「地域児童の見守り」、災害時には「避難所での安否確認」を可能にする仕組みを構築します。

 また、本仕組みで採用する各センサー※4は照明や圧力等のエネルギーを電力に変換できる電源レスのセンサーのため、充電の手間を省力化し、電池切れで正しく検知ができないといったリスクを回避することが可能です。

  • ※4株式会社ニフコが開発するセンサーを利用

【取り組み① 地域児童の下校見守り】

 ランドセルに電源レスセンサーをつけ、このセンサーを受信するアンテナを学校や自宅・学童施設などに設置し、保護者が遠隔から通学状況を確認することが可能な仕組みを構築します。

 スマートフォンを持たない地域児童でも利用可能なシステムであり、学童施設においては下校や登室の状況を一元的に把握することができます。

【取り組み② 避難所での安否確認】

 災害等により避難が必要になった際に、センサーを持っている住民がどの避難所にいるかの記録が可能です。従来は優先的に避難状況を把握する必要がある要支援者について、地域の消防団や防災管理者が要支援者の自宅まで見回っていましたが、遠隔から誰がどの避難場所にいるのか確認できるため、巡回稼働の削減につながります。

4.今後の展開

木更津市とNTT東日本はこれまでの農業・観光分野に加え、福祉・防災分野での自営無線ネットワークの活用についてシステムの有効性や効果検証を図り、事業としての規模拡大や本格実装を進めてまいります。また、他の産業課題への活用等、持続可能な街づくりに向けた新たな仕組みづくりを多様なパートナーとともにめざしていきます。

地域が主体となって持続的にICTを活用し、地域課題の解決や住みよい街づくりに向けた取り組みを推進していく動きは、今後の地方回帰や新しい生活様式の中でさらに求められていくと考えております。今後も課題やユースケースに応じた適切な自営無線ネットワーク(ローカル5G・LPWA・Wi-Fi等)を活用したスマートシティのモデル事例として、全国の自治体への水平展開を図っていきます。

報道発表資料に記載している情報は、発表日時点のものです。
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