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2020年7月28日
ニチレキ株式会社
東日本電信電話株式会社
エヌ・ティ・ティ・コムウェア株式会社
ニチレキ株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:小幡学、以下ニチレキ)、東日本電信電話株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:井上福造、以下NTT東日本)、およびエヌ・ティ・ティ・コムウェア株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:栗島聡、以下NTTコムウェア)は、昨年度から開発に取り組んでまいりました、「真に緊急性を要する要修繕箇所を自動的に見出す技術」※1を基とする、AIによる局部損傷※2診断技術を完成させました。
更に、NTTコムウェアが提供する「道路不具合検出システム(KT-180052-A) ※3」とIoTを活用した位置情報サービスを組み合わせ、路面性状測定車を用いた安価な点検・評価方法を確立し、この度、ニチレキより正式に「smart路面点検サービス」の提供を8月1日より開始いたします。
高度経済成長期に集中的に整備された道路舗装は、今後一斉に老朽化することが懸念されていますが、その維持修繕に関わる予算は大幅に減少しています。しかし、地方公共団体が管理する道路は、路線数、路線延長ともに膨大であり、損傷箇所の全てをオーバーレイ※4などの舗装修繕工事で対応することが困難となっています。ポットホール※5が開いたら補修するといった事後対策に頼らざるを得ないのが実情です。
加えて、道路舗装の管理の入り口である点検に対する費用も大きな負担となっています。現在では、多種多様な点検手法がありますが、以前より点検に使用されてきた路面性状測定車※6は、安定した精度を有しており、多くの道路管理者の皆さまから信頼を得てまいりました。しかし、点検費用が高いという問題があり、路面性状測定車による安価な点検への期待の声を多くいただいておりました。
上記課題の解決を目的に、これまで人手で行ってきた現地踏査業務、路面状況計測業務、路面画像評価業務を、AIやIoTの技術を活用し大幅に効率化することで、路面性状測定車を活用しながら安価に点検ができる新たなサービスを開発し、従来の点検費用に対して60%のコスト削減(従来の40%の点検費用:ニチレキ株式会社比)を実現しました。
また、新たな評価方法を開発し、道路管理者の維持修繕方針や予算に応じて、複数の評価方法から最適なものを選択できるサービスとしました。
新たなサービスの提供にあたり、以下の内容に取組み、精度の高い路面性状測定車による点検コスト低減とサービスメニュー拡充を実現しました。また、お客さまに安心してサービスをご利用いただくために、ネットワークのセキュリティ対策にも取組んでおります。
これまでの路面性状調査では、路面性状測定車による路面状況の計測前に、道路管理者から貸与された路線図などの資料を基に現場に赴き、調査対象路線を確認していました。実際に車両で走行して路線延長や起点・終点などの位置を確認し、路面にペイントでマーキング※7することで、計測や解析時の位置確認の目印としていました。
今回、これまで現場で実施していた確認作業を、現地に赴かなくとも事業所内の電子地図上で実施できるシステムを新たに開発し、大幅に業務を効率化し人件費の削減を実現しました。
上記で開発した電子地図をクラウドサーバ上にアップロードすることで、路面性状測定車(smartロメンキャッチャーLYJr.)からインターネット経由で調査対象路線が確認できるようになりました。また、新たにGNSSレシーバーを搭載し、NTTドコモが提供する「docomo IoT高精度GNSS位置情報サービス」と組み合わせることで、誤差数センチメートルの高精度な位置情報が取得できるようになりました。
この位置情報をクラウドサーバ上の電子地図とリアルタイムにリンクさせることで、事業所からの遠隔計測サポートによる"ワンマン計測"を可能にしました。これまで、調査対象路線の計測は、ドライバーに加えてナビゲーターも同乗していましたが、1名による業務が可能となり、大幅に業務を効率化し人件費の削減を実現しました。
計測中の室内(事務所)と路面性状測定車(smartロメンキャッチャーLYJr.)の車内状況
オーバーレイなどの修繕には「ひび割れ率※8」の評価、部分的な補修には「局部損傷」の評価といった、道路管理者の維持修繕方針に基づいて評価方法を選択できる仕組みを考案しました。新たな評価方法である「局部損傷」の評価は、50cm×50cmメッシュ内のひび割れの交点(結節点)の個数を数え、ランク分けします。ランクの高い(結節点の多い)箇所は、路盤の健全性が失われ※9、ポットホールなど重篤な損傷に進行することが懸念される状態であると判断できます。これらの評価方法を活用し、3つのステップで実現性の高い維持修繕計画の策定を支援します。
STEP1:AIによる診断区分Ⅰ~Ⅲ※10)の3ランク評価
STEP2:試験法便覧に基づいた「ひび割れ率」評価
STEP3:AIによる「局部損傷」解析による評価
STEP1では、AIにより、舗装点検要領に対応した診断区分Ⅰ~Ⅲの3ランクで評価します。これにより、管理する道路舗装全体の路面状況の把握ができます。STEP2では、修繕が必要となる区間(例えば、診断区分Ⅲ(修繕段階))に対して、再計測なしで従来の試験法便覧に基づいた解析による「ひび割れ率」を算出することにより、修繕の優先順位付けが可能となります。STEP3では、予算などの都合で修繕を先延ばしする区間に対して、「局部損傷」の評価を行うことにより、局部的に損傷の進行が早く緊急の措置が必要と予想される箇所を計画的に小規模補修することが可能となります。
従前の維持修繕計画では、修繕が必要とされる区間に対する費用と実際の予算規模の乖離が大きく、実現性に乏しいものとなっていました。3つのSTEPの評価により、修繕と計画的な小規模補修を組み合わせることで、実現性の高い維持修繕計画の策定を支援します。
管理する道路全体をSTEP1で把握、その上で修繕が必要とされる診断区分Ⅲを路面性状測定車で再計測することなく「ひび割れ率」解析を実施する。「ひび割れ率」を参考に修繕工事の順位付けをする。予算の関係上、直ちに修繕工事が困難な箇所は、STEP3の局部損傷解析を実施し、計画的に常温表面処理工法で部分的な補修を施す。
常温表面処理工法
「ひび割れ率」の評価については、路面性状測定車で取得した路面画像のひび割れを人力で確認していたため、熟練の解析者でさえ、1時間当たり1km程度の評価にとどまっていました。検出したひび割れの面積から「ひび割れ率」を算出するAIを活用することで、1時間あたり約7kmの評価が可能となりました。
また今回、「局部損傷」に特化した新たなAIを開発しました。このAIは、NTTコムウェアの画像認識AI 「Deeptector®」を利用し、ひび割れの交点(結節点)を検出し損傷をランク分けする技術であり、「局部損傷」評価に最適化されたものとなっています。「局部損傷」の評価作業は、人手による解析ではあまりに煩雑であり、このAIの活用により初めて実用化が可能となりました。
ひび割れ率解析AIと局部損傷解析AIによる解析イメージ
路面性状測定車で撮影した路面画像は、NTT東日本の閉域ネットワークサービスであるフレッツVPNプライオを経由し、同じくNTT東日本が提供するデータセンター上で稼働するNTTコムウェアのAI解析システムに転送し解析します。これにより、地方公共団体様の路面画像をセキュアな環境で取り扱うことが可能となります。また、これまで人力による目視で解析してきた業務を、データセンター上のシステムを活用することで、少子高齢化による人手不足という社会課題の解決や、ウィズコロナ時代の人的接触を可能な限り回避する新たな業務運営にも積極的に取り組みます。
【smart路面点検サービス、路面性状測定車(smartロメンキャッチャーLYJr.)についてのお問い合わせ】
ニチレキ株式会社
道路エンジニアリング部 那珂・硲
TEL:048-961-6321
【ネットワーク・データセンターに関するお問い合わせ】
東日本電信電話株式会社
ビジネスイノベーション本部
地方創生推進部 鈴木・森田・新村
TEL:03-5359-3070
【画像認識AIソリューションに関するお問い合わせ】
エヌ・ティ・ティ・コムウェア株式会社
ビジネスインキュベーション本部 井藤・中村
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