パラ陸上競技の楽しみ方

「パラ陸上競技」を楽しむ3つのポイント

パラリンピック開幕を控え、注目を浴びる「パラ陸上競技」。
国際大会での日本人選手の活躍がニュースでも報じられるようになりました。
リオデジャネイロパラリンピックを始め、国内外で数多くの記録を残してきた髙桑早生選手が、パラ陸上競技の魅力、楽しみ方をご紹介します。

Point 1まずは「クラス分け」を知ろう!

一口に「障がい」といっても、その種類や程度はさまざまに異なります。障がいが競技に及ぼす影響をなるべく小さくし、選手同士が平等に競い合うために必要なのが「クラス分け」。
パラ陸上競技を楽しむには、まずこの「クラス分け」について知っておくことが大事です。

クラス分けの表示方法

クラスは、アルファベット1文字と2桁の数字で表示されます。試合結果などでよく使われますので、見方を覚えておきましょう。
※末尾にアルファベット1文字がつくこともありますが、これは選手個々人のクラス認定状況を示すものなので、ここでは省略します。

例)髙桑選手のクラス

①競技の種類 :
T→走競技・跳躍競技(Track)
F→投てき競技(Field)

②障がいの種類:
10番台〜60番台までの数字で、障がいの種類・競技形式を示す

③障がいの程度:
0〜9の数字で、障がいの程度を示す。数字が小さいほど程度が重くなる

クラス分け

T/F11〜14 視覚障がいクラス
T/F20 知的障がいクラス
T/F30〜38 脳原性まひクラス
T/F40〜41 切断・機能障がいクラス 低身長
T/F42〜44 切断・機能障がいクラス 下肢切断・下肢機能障がい
T/F45〜49 切断・機能障がいクラス 上肢切断・上肢機能障がい
T51〜54 切断・機能障がいクラス 四肢欠損・関節可動域制限・筋力低下
F51〜58 切断・機能障がいクラス 四肢欠損・関節可動域制限・筋力低下
T/F61〜64 切断・機能障がいクラス 下肢切断(競技用義足使用)

詳細は一般社団法人日本パラ陸上競技連盟のウェブサイトをご参照ください。

Takakuwa’s Eye

少々とっつきにくいかもしれませんが、クラス分けはぜひ知っていただきたいポイントです。ボクシングのヘビー級とフライ級が、パワーもスピードもまったく違うように、パラ陸上競技では同じ100メートル走でもクラスが変わると別の競技に変わります。「この選手、遅くない?」「なんでさっきの選手と違う走り方をしているの?」と疑問を持ったら、クラス分けに注目してみてください。きっと選手や競技を見る目が変わりますよ。

Point 2道具やアシスタントとの「コラボ」に注目!

自分の身体ひとつ、生身の身体能力を競う健常者の陸上競技と違って、パラ陸上競技では義足や車いすなどの道具を使う、あるいは人のサポートを受けながら競技をすることがあります。F1レースのように、道具を「使いこなし」、チームで「連携」しあう魅力が生まれます。

「パラ陸上」で使用される主な道具

義足

競技用の義足は、日常生活で使うものとはまったく異なります。素材はほとんどがカーボン製。また、弓のような形状で、大きくしなって強い反発力を得ることができますが、使いこなすには慣れが必要です。

車いす

スピードを出すことに特化したレーサー仕様の車いすを使います。チタンやカーボンを使い軽量化された、三輪の車いすは、最高で時速30キロメートル以上を出すことができます。

アスリートとともに戦うサポーター

主に視覚障がい者の競技を支援するために、下記のようなサポーターがいます。

ガイドランナー

トラック種目で、選手と一緒に走り安全にフィニッシュまで導きます。「テザー」と呼ばれる伴走ロープを選手と握り合い、選手のすぐそばで、息を合わせて猛スピードで走る様子は「高速二人三脚」と言われるほどです。

コーラー・エスコート

フィールド種目で、時には声を出したり、手をたたいたりして選手に投げる方向や踏み切りの位置などを知らせるのが「コーラー」、「エスコート」の役割です。

Takakuwa’s Eye

道具の使いこなしやサポーターとの連携は健常者の陸上競技にはない部分で、個人的にはパラ陸上競技を楽しむ一番のポイントだと思っています。「競技用の義足ってすごい形をしているな」のような好奇心から入ってもいいし、自転車やメカ好きの人にとっては、競技用の車いすは魅力的でしょう。そんな単純な興味から入っていただいて、最終的には、人と道具、人と人とが融合して生み出されるパラ陸上競技ならではのパフォーマンスに注目してほしいですね。

Point 3パラ陸上競技ならではの「新種目」に期待!

種目ごとに競技の見方、楽しみ方はさまざま。ここでは髙桑選手がエントリーする3つの種目に絞って、楽しみ方をお伝えします。パラ陸上競技ならではの魅力が詰まった新種目「ユニバーサルリレー」にも大注目!

髙桑選手がエントリーしている種目とその見どころ

100m走

「皆さんが思っているより速いですよ」(髙桑選手)と言うように、健常者の同種目と同等、場合によってはそれ以上のスピード感が楽しめます。両足で義足を使う、両下腿切断クラスは、義足のバネを活かしたレース後半の伸びが見どころです。

走幅跳

義足の選手は、義足で踏み切ることが一般的。
「踏み切りのタイミングは、健常者の幅跳びより難しいかもしれない」(髙桑選手)と言うほどの繊細な助走が、好記録のカギを握ります。

ユニバーサルリレー

視覚障害、立位の切断及び機能障がい、脳性まひ、車いすの順番で、男女2名ずつ計4名で走る混合の400mリレーでパラ陸上オリジナル競技。さまざまな障がい種別の選手が一堂に会する、パラ陸上を象徴する競技として期待が集まります。

その他のパラ陸上競技の種目(東京パラリンピックの実施種目)については、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会のウェブサイトをご参照ください。

Takakuwa’s Eye

ユニバーサルリレーは、初めのうちは少し戸惑いがあったのですが、取り組んでみてそのおもしろさに気づきました。さまざまな障がい種別の選手がチームを組む、パラ陸上競技の魅力がギュッと詰まったわかりやすい競技です。男女の組み合わせが自由なので戦略性もありますし、未知の競技ですから取り組むほどに記録が伸び、進歩を感じることができます。100メートル、走幅跳はもちろん、これからはユニバーサルリレーにもぜひ注目してみてください。

主な競技大会

国内大会

日本パラ陸上競技選手権大会
ジャパンパラ陸上競技大会
関東パラ陸上競技選手権大会

国際大会

ワールドパラアスレティクスグランプリ
IPC陸上競技世界選手権大会
アジアパラ競技大会
パラリンピック

競技の実施方法および順位のつけ方

パラ陸上競技は、基本的にクラスごとに実施され、着順及び記録順で順位を決定します。
また、出場選手が少ないときなどは2つ以上のクラスを同じ組で実施する場合(順位づけはクラスごとに決定)や、2つ以上のクラスを統合(コンバインド)して競技を実施する場合があります(競技実施形態は大会毎に主催者が決定)。

コンバインドで競技を実施する場合の順位のつけ方

① 競技結果に影響しないような同程度の障がいクラスを1つの競技グループとして競技を実施し、その競技グループ内の着順、記録順で順位を決定します。

例)髙桑選手のクラスは「T64」ですが「T44、T62/64」を1つの競技グループとして競技を実施

② 複数の障がいクラスを1つの競技グループとして競技を実施し、ラザポイントスコアシステムを用いて順位を決定します。

※ラザポイントスコアシステムとは、記録に対し競技グループ毎に定められた「係数」を掛けて算出した「スコアポイント」によって順位を決定する方法

例)「T44、T62/64」と「T42、T61/63」を1つの競技グループとして競技を実施。ラザポイントスコアシステムを用いてスコアポイントを計算し順位を決定します。
仮に、髙桑選手が「5m27」を跳んだ場合、スコアポイントは「807点」となりますが、「T42、T61/63」の選手が「4m00」を跳んだ場合も「807点」となります。 

<参考>
ラザポイントスコアシステム(Raza point score system )(英語)

またはこちらをご参照ください。(英語)

競技場に行こう!

ルールや仕組みを少し知ってもらえるだけで、パラ陸上競技の楽しみはぐっと広がります。今度はぜひ試合会場に足を運んで、皆さん一人ひとりが自分の楽しみ方を見つけてください。私はアスリートとして、観客の皆さんに「おおっ」と反応してもらえるようなプレーをしたいと思っています。
競技場でお会いしましょう!

参考資料:パラ陸上競技 公式ガイド(日本パラ陸上競技連盟)
かんたん!陸上競技ガイド(日本障がい者スポーツ協会)