流動化する地域社会とシビックテック・共助のあり方とは?
〜新しい共助モデルから考えるこれからの社会価値と経済価値の循環〜
- DATE
- 2025年7月14日(月)17:30〜19:00
- VENUE
- オンライン(Zoom)
- PRESENTER
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- 林 篤志氏(株式会社paramita代表取締役)
- 関 治之氏(一般社団法人Code for Japan代表理事)
- FACILITATOR
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- 伊藤 将人 氏(国際大学GLOCOM研究員・講師)
- ORGANIZE
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- NTT東日本 地域循環型ミライ研究所
- 国際大学グローバル・コミュニケーション・センター
- PROGRAM
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- イントロ
- 株式会社paramita 林 篤志氏から話題提供
- 一般社団法人Code for Japan 関 治之氏から話題提供
- パネルディスカッション・質疑応答
「Palette〜地域とミライをつくるゼミ〜」の第3回は、地域で先進的な取り組みに挑戦されている方々から話を聞く特別講義回として開催されました。
人口減少や少子高齢化、それに伴う地域課題を前に、既存の地域開発や発展モデルとは異なる地域社会・社会基盤のあり方が模索され、そのなかで共助のあり方が再評価されています。さらに、そこにテクノロジーが交差することで、住民主体の地域を再構築していくことへの期待が高まっています。
今回のPaletteは、paramita代表取締役の林篤志氏とCode for Japan代表理事の関治之氏をお招きし、新しい自治のかたちを提唱するLocal Coop構想と、住民主導のコミュニティづくりをテクノロジーで支援していくシビックテックについて、その考え方や目指すところ、各地での実践事例などを伺いました。後半のパネルディスカッションでは、伊藤将人GLOCOM研究員を案内役に、課題意識を共有しミライの地域社会のあり方について議論しました。
Local Coop構想から考える、地域共同体と自治のミライ
PRESENTER:林 篤志氏人口減少社会、気候変動時代
いま私たちを取り巻く非常に大きな問題が2つあります。「人口減少」と「気候変動」です。
20年以上も前から地球温暖化が言われているのに、平均気温は上がり続けて、熱中症で亡くなる方も年々増えています。産業化以前に比べて気温上昇が1.5℃を超えると後戻りできなくなるといわれていますが、昨年はその1.5℃を超えたのではないかと騒がれました。極端に大きな台風、豪雨や干ばつなどが発生する確率が高まっています。気温上昇に伴って絶滅する生物が増え、生物多様性が失われ、生態系の上のほうにいる人間の食料もなくなっていく。これが気候変動時代の大きなリスクです。
人口減少については、人口が減ること自体よりも、そのスピードが速すぎることが問題です。人口減少と高齢化はどの先進国にも共通のベクトルですが、たとえばフランスは、高齢化社会から130年かけて緩やかに超高齢社会に向かいました。日本は30年です。人口が増えるという前提で、インフラやサービス、社会制度が日本中に張り巡らされていて、急激に減っているという状況に、私たちは全く適応できていません。人口減少によって、約4割の自治体が2050年までに消えてなくなる可能性があるとされています。
第二の自治体、Local Coop
そういうなかで私たちは第二の自治体、Local Coop(ローカルコープ)を提案しています。「そもそも自治体ってつくることができるのか」という疑問を持つ方もいるでしょうが、できないことはありません。自治体という概念が日本に持ち込まれたのは百数十年前、地方自治法ができたのは七十数年前。かつては自治体も、国家という枠組みもなく、何かのタイミングで誰かがつくったものです。この自治体という枠組みが機能不全に陥っている状況で、DX化してアップデートしようという議論もありますが、全国に約1,700ある自治体のうち半分ぐらいが過疎化しているかなり小さな自治体です。それをアップデートするよりは、新しくつくってしまったほうがいいのではないかという発想です。
どんな田舎の超過疎地であれ、昔はたくさん人がいて、若い人もいて成り立っていました。現状は人が急激に減って税収もままならず、高齢者が増えて社会保障費が上がり続けています。人がいなくなっているので、民間はサービスを提供できず、自治体も撤退しています。自助・共助・公助という言葉がありますが、平均世帯人員が2030年に2.1人になるというなかで、自助もしんどいし、公助も厳しい。私たちは体よく「共助」と言いますが、そこは分解して考えなければなりません。「互いに助け合う」「共につくる」ということと、新しいテクノロジーが、これからの地域には必要です。「税金を払っているのだから、何でもやってもらう」という受け身の発想から、自治体の役割を取捨選択していく。自分たちでできることは、より柔軟に、よりスマートにやっていこうというのが、Local Coopの考え方です。既存の自治体とも連携をとりながら、地域住民がそこに参画して、どういうサービスやインフラを優先的に進めていくのか、どのように意思決定していくのかというガバナンスを、自分たちの手元に取り戻していくプロセスになるわけです。
ここで、前提が大きく変わったことがあります。僕が過疎地に関わって十数年になりますが、かつてはどんな過疎地でも、「外の手を借りるにしても、地元の住民で何とかしよう」という発想がありました。それがこの10年で、どこも厳しくなっていて、あと10年がタイムリミットだと見込んでいます。そういったなかで、本当に残していきたいもの、次世代につないでいきたいもの、地域で守りたいものがあれば、それを守るのは必ずしも地元の住民に限りません。地元の住民に加えて、外の人たち、そして企業が参画するという時代に大きく変わっています。
事例1:デジタル村民(関係人口)
私たちの取り組みのひとつに、限界集落になってしまった山古志(旧山古志村、現在は新潟県長岡市)に、NFT(Non-Fungible Token)を使って世界中からデジタル村民を集めようというプロジェクト(Nishikigoi NFT)があります。
世界のどこに住んでいる人でも、NFTを購入すれば山古志の仲間になれます。現在、800人弱のリアル村民に対して1,700人強のデジタル村民がいて、一緒に村づくりをしています。デジタルで完結するのではなくて、リアルに村に通いながら、一緒にお祭りを運用したり、課題解決をしたりといった定常的な動きが生まれています。これは、デジタルテクノロジーを活用した新しい共同体のデザインという意味で、一定のフィードバックを得られたプロジェクトだと思います。
事例2:環境価値(流域再生)
いま私たちが一番向き合わなければいけない資本は自然です。日本列島は海に囲まれ、山や川があり、国土の7割は森です。この豊かな自然資本があるからこそ、この日本という国の暮らしや産業が成り立っています。ただ、そのほとんどが荒れてしまっています。人工林を植えて、林業が成り立たなくなると放置してしまっているので、森は真っ暗でやせ細り、大雨が降ると土砂が流れて土砂災害が増えています。海も磯焼けを起こして魚が獲れなくなっています。自然資本そのものの力が弱まっていて、これをお金にならないからと放っておくと、日本が成り立たなくなってしまいます。
三重県尾鷲市は面積の92%、17,000ヘクタールが森です。ここにもう一度手を入れて、流域の生態系を回復させ、その中でCO2吸収量の増加と生物多様性の回復を促していく。これをボランタリーでやるのではなく、ファイナンシャルに成立するようなモデルにしようと、カーボンクレジットの事前創出権をデジタル上で流通させ、世界中どこにいてもこうした森に投資できる仕組みをつくりました。ここでもNFTを活用しています。
昨年の半年間、延べ720名が参加して、水源の森の生態系を回復させるワークショップを行いました。ずっと林業をやってきて、山に木を植え、育った木を伐って搬出し、また木を植えて、ということを繰り返してきた結果、山がどんどん荒れていき、大雨で流された土砂で水源の沢が埋まっていました。水源の森なのに、水の流れが見えません。そういうところを参加者の人力で掘り起こし、伝統的な土木工法で整備し、生態系の回復を図ろうとしています。
こういった森の取り組みに企業が参画する仕組みをつくり、昨年末に開催した尾鷲ネイチャーポジティブアクション会議には、上場企業9社が集まりました。これらの企業と一緒に、カーボンクレジットを活用した事業開発や、流域再生による地域再生の取り組みをやっています。LINEヤフーには10年間、尾鷲の森からクレジットを購入していただくことになっています。また、サカイ引越センターとは「エシカル引越」という商品を開発しました。お客様が引越料金にプラス1,000円を支払えば、引越しの際に出るCO2がカーボンニュートラルになるという、消費者を巻き込んだ仕組みです。サービス開始から5か月で、12,000件(全体の7%)の消費者にこういった選択をしていただきました。
カーボンクレジットだけでなく、流域再生とそこでの事業開発もいろいろな企業と一緒にやっています。特に企業版ふるさと納税を通じてコンソーシアムをつくっています。各地のLocal Coopでこのコンソーシアムをつくっていますが、企業が自治のパートナーとして入っていて、関係各社と連携しながらやっています。
ソーシャルインパクトをいかにビジネスで生み出していくかというとき、たとえばSIB(Social Impact Bond)のようなスキームもあるわけですが、企業からすると、企業版ふるさと納税のほうが使いやすいと考えています。9割控除で行政に寄附された資金を、単年度で使い切らなくてもいいように基金化して、第二の自治体であるLocal Coopに移動する。この基金を、Local Coopと企業とステークホルダーが活用して事業開発をし、その中で生み出されていくソーシャルインパクトをフィードバックしていく。企業はそれをIR報告書に載せて投資家に向けてPRする。そういうスキームをつくっています。
事例3:行政サービスの置換(公→共)
奈良市月ヶ瀬(旧月ヶ瀬村)では、もともと市役所がやっていた行政サービスをLocal Coopと地域住民と企業に受け渡していくという、共助をベースにしたインフラサービスの維持に挑戦しています。
たとえば、この地区には商店がないため、買い物支援サービスを日本郵政と連携してやっています。全国どこにでもある郵便局のインフラを活用し、前日に生鮮品を注文すると、郵便局のバンが運んできて、それを地域の方が取りに来るという仕組みをつくりました。
資源ごみの回収も、Local Coopでやっています。奈良市がやっていたときは36か所/週1回だったものを、6か所にして24時間365日できるようにしました。資源ごみは地域の方々がかなり細かく分別しているので、資源量が増えています。資源の売却益はLocal Coopで管理し、その使途は住民が決めます。自分たちががんばって分別した結果、生み出された売上げをどう使うかを自分たちで決めるという実例になっています。
これらのほかにも、関係人口を生み出し、気候変動や人口減少に対応していくために、低コスト型でオフグリッドのセルフビルド住宅を、この月ヶ瀬地区に実験的に建てています。尾鷲市では、気候変動を生き抜くための学校ということで、小中一貫のオルタナティブスクールを2027年春に開設する予定です。
こういったかたちで、地域の資源や特性をうまく活かしながら、いろいろな企業にパートナーシップで入っていただいて、まさにR&Dをしていく。そのなかで事業をつくり、自然環境もよくしていき、そしてソーシャルインパクトを生み出していく。社会貢献をしましょう、地方創生で地域貢献をしましょうといったものではなく、自治というものを、地元民だけではなく、外の人、企業、みなさんが連携しながら共につくっていく。気候変動や人口減少はどうにもならないと思いがちですが、そういったなかで対応しながら、自分たちが理想とする自治を今からつくっていけるのではないか。そういう可能性にかけて各地で活動しています。
地域を変えるつながりをつくる 〜シビックテックの可能性〜
PRESENTER:関 治之氏市民主導のコミュニティを促進するシビックテック
シビックテック(Civic Tech)というのは、テクノロジーとコミュニティを通じて政府と市民の関係を変えていくムーブメントのことです。行政側への働きかけと、市民主導のコミュニティづくりという2つの方向性があり、それをテクノロジーを使って促進していくイメージです。
行政側に対しては、オープンガバメントのようなコラボレーションできる環境をつくっていこうと働きかけます。市民側は、「税金を払っているのだからお任せ」ではなくて、リビングラボなどを通じて参加しよう、プロジェクトをどんどん立ち上げて主体的に関わっていこうという活動を支援します。ステークホルダーは、中央省庁、地方自治体、学術機関、民間セクターで、その中心に市民がいます。
そのなかでCode for Japan(コード・フォー・ジャパン)は、「ともに考え、ともに創る社会」をビジョンに、いろいろな活動をしています。活動の柱は「デジタル民主主義」「デジタル公共財」「市民主導プロジェクトの促進」の3つです。「デジタル民主主義」は最近、選挙で注目されています。「デジタル公共財」は、オープンソース、オープンデータなど、みんなが使えるデジタルのツールやデータをつくることです。「市民主導プロジェクトの促進」では、ハッカソンをやったり、地域でいろいろなプロジェクトを立ち上げたりしています。分散型の組織を目指しているので、Code for Japanだけが地域に行って活動するのではなく、Code for OSAKAやCode for KANAZAWAなど、日本各地で活動している団体と緩やかに連携しながら活動しています。
Social Hack Dayはわれわれが続けている月例のハッカソンで、誰でも参加できます。ハッカソンというと、集まってアイデアを出し合い、それをプロトタイピングして表彰するというイメージかもしれませんが、われわれのハッカソンはプロジェクト持ち込み型です。すでにプロジェクトをやっている人たちが課題を持ち込んで、それに他の人たちが参加して協力します。
このSocial Hack Dayから、いろいろなプロジェクトが生まれました。いくつかご紹介すると、「支援みつもりヤドカリくん」は、困窮者向けの支援制度を検索しやすくするアプリです。また、「Code for SAKE」という、全国の酒蔵データベースやサケペディアという酒テイストのウキペディアをつくろうと活動している人たちもいます。
「じぶんごとプラネット」はカーボンフットプリント量がわかるツールで、国立環境研究所と共同開発しました。いくつかのアンケートに答えていくと、自分がどのくらいCO2を排出しているかを可視化できて、どうすれば減らせるかをセルフチェックできます。
「Toban当番」はブロックチェーンを使った仕組みで、コミュニティの中で誰がどういう貢献をしているかを記録して報酬を分配するためのツールです。
誤・偽情報対策プロジェクトで開発した「BirdXplorer」は、Xのコミュニティノートにどのように表示されているか、どんなコメントが入っているかを分析するためのツールで、オープンソースで提供されています。コミュニティノートのデータを集めてデータベースにして、APIで簡単に取り出せるようにしています。これで選挙関連のコミュニティノートの9割が公開されていないことがわかり、先日ニュースになりました。
流山(千葉県)では、Code for NAGAREYAMAのメンバーが中心になって、協賛店を自分たちで集め、「もりポ」という環境ポイントをつくりました。環境に良い活動をするとポイントがたまり、それを地域のお店で使える仕組みです。
豊岡(兵庫県)では、ハッカソンをきっかけに「TOYOOKA IDO」ができました。地域のイベント情報はネットで検索しても出てこないことが多いのですが、そういう地域の情報をみんなで集めて共有しようと、NPOなどと連携しながら活動しています。
こういう説明をしていると、アプリやサービス開発が目的のように見えるかもしれませんが、基本はコミュニティづくりです。アプリづくりが目的だと、参加できる人が限られてしまいますが、まち歩きのようなことを定期的にやっているグループもたくさんあります。たとえばウィキペディアタウンという、ウィキペディアのローカル記事を生産する活動があります。これは非常に楽しくて、地域の人が集まって、ボランティアガイドと一緒に地域を歩いたり、図書館司書と図書館で情報を調べたりして、それをウィキペディアに掲載するというワークショップをやっています。
まちづくりに関する公共財では、「Decidim」(後述)や地域のデータを集めて連携させていくための「MoC(Make our City)データ連携基盤」があります。
「Decidim(デシディム)」は、市民が地域の政策決定に関わっていくためのツールです。バルセロナ(スペイン)で生まれたオープンソースツールで、市民投票にも使われています。世界30か国以上で利用されていて、日本でもわれわれがローカライズして約30サイトが立ち上がっています。ヘルシンキ(フィンランド)では、市民からアイデアを集めて、提案をブラッシュアップして投票して町の予算を決めていく参加型予算編成に使われています。日本でも、公園や河川敷をどう利用したいかというアイデアを市民から募集するなど、実際に運用されています。自治体だけでなく民間での活用も始まっています。
こういうことをやるときに改めて大事だと思うのは、衝突を恐れないことです。日本人は衝突を恐れがちで、会議が荒れないように最初から根回しする文化がありますが、それだと参加が広がっていきません。衝突を恐れずに、いろいろな人の声を集めることが大切です。オードリー・タンさんは「衝突から生まれる熱量は、新たな価値を生むエネルギーになる」と言っています。いろいろな地域に入って思うのは「熱量が足りない」ことで、何かをやり始めるためのエネルギーを誰が持ち込むのかが大きな課題です。いろいろな人たちの声を可視化するとか、集まって話し合う場をつくらないと、大きなエネルギーは生まれてこないと感じています。
事例:豊岡での市民参加型まちづくり
豊岡スマートコミュニティ(TSC)は、われわれと地域の人たちとトヨタ・モビリティ基金が一緒になって、スマートなまちづくりとは何だろうと考えて実践するためのプロジェクトです。2020年に始まりましたが、最初の2年間は試行錯誤のフェーズでした。
豊岡市は演劇によるまちづくりをやっているので、演劇祭とモビリティを掛け合わせてみたり、Code for TOYOOKAを発足させたいという地域の方に伴走しながらプロジェクトをやってみたり、市役所のオープンデータ推進をやってみたり、いろいろやりながら、3年たってようやくプロジェクトが持続的に回り始めました。やはり時間はかかると思います。
実際に生まれたのは、福祉モビリティの仕組み、データを使った交通安全教室、豊岡市役所向けDX・BPR研修、先ほど紹介した「TOYOOKA IDO」という地域情報の収集アプリなどで、かなり多くの活動が主体的に生まれ、今でも活発に動いています。
重要なのは、多様な主体が連携しながら活動して育っていくことです。自治体だけ、企業だけががんばってもうまくいきません。いろいろな人たちが、自分たちの役割を認識しながら、目標に向かって動き始めることです。何かをやりたいという人が出てきても、最初はスキルが伴わないこともあるので、みんなでプロジェクトをやりながら、経験を通じて学んでいくことも大事です。
プロセスとしては、いわゆるダブルダイヤモンドのフェーズをたどります。最初から「これをやりましょう」と、いきなり解決策を持ち込んでもうまくいきません。まずは探索して、誰がどういうモチベーションで何をやっているのかを把握する。現場と暮らしを知ることから入っていく。それから、少しずつアイデアを出してプロトタイピングしてみる。その中で「そもそも何のためにやっているのか」と振り返る。これをグルグル回した後で、ようやく予算を付けて、合意形成して進めていく。そういう順番が必要だと思います。特に企業はいきなり実装期をやりたがるのですが、それはうまくいかないと感じています。
地域で大事なのは、すごく地道な活動です。われわれはシビックテックという活動をやっているわけですが、どうやって長期的に寄り添うのか、そもそもやりたい人をどうやって発掘するのかという本筋のところは、テクノロジーを使わない地方創生の活動と全く変わらないと考えています。
パネルディスカッション・質疑応答
企業が関わるミライの自治のかたちとは?
- 伊藤
- Slidoに感想や質問、期待もたくさん寄せられています。Local Coopの仕組みについての質問が多いのですが、ひとつずつお伺いしていきたいと思います。
「ポスト資本主義だけどファイナンシャルに持続可能にするというところがよくわからなかったので、もう少し説明していただけると嬉しいです」 - 林
- ポスト資本主義社会をどうとらえるかということだと思います。自然資本や社会関係資本という観点でみると、都市には自然資本が圧倒的に乏しい。何か偏った資本を扱っていくことでそのほかを毀損してきたというのが、今まで社会がやってきたことです。金融資本も扱うけれど、自然資本も豊かに回復させていき、社会関係資本も多様なかたちで取り戻していくことが、われわれとして目指したいポスト資本主義のあり方です。
もうひとつは、社会のとらえ方です。既存の国家や資本主義市場があって、われわれはそこから恩恵を受けているので、それを否定する必要はありません。ただ、ここが金融資本だけをすごくドライブさせているから不具合が起きています。われわれはローカルを基点に多様な資本を扱えるようにすることによって、別の選択肢をつくっていこうとしています。つまり、都市での生活も必要だし、地方には別の角度での豊かな生活がある。そこを行ったり来たりして、併行して動いていけるような、レイヤーが多層になった社会のあり方を、われわれはポスト資本主義だととらえています。 - 伊藤
- ポスト資本主義で思い出したのは、斎藤幸平さんの『人新世の「資本論」』です。この本の結論は脱成長コミュニズムですが、資本主義を完全に否定してそこから脱するというのは、現実的に考えて地域の多様性や複雑性を包摂できないのではないか。ある意味、現実を見ながら、その中で多様な価値を包摂していくという話だと思いました。次の質問です。
「総務省は指定地域共同活動団体、内閣府は地域運営組織(RMO)、農水省は農村RMO、経産省はローカル・ゼブラ企業、国交省はローカルマネジメント法人(LMO)等々、Local Coop類似と思われる施策が最近多いですが、これらとどの点が同じで、どの点が異なるのでしょうか」 - 林
- 国の縦割りで、Local Coopに類似するいろいろな制度ができているという話ですね。Local Coopは制度ではないです。ただ、国の制度も活用しながら、Local Coopのような共助型の自治のモデルをつくっていくということもあり得ますので、各省庁とも議論させていただいています。
大きな違いとして、国の制度は既存の社会や行政のシステムを前提にしていますが、われわれが最終的に目指すのは「徴税と再分配のデザイン」です。自治機構そのもの、再分配の構造そのものからリデザインしていこうとしています。
また、農水省だと農水産系、総務省だと人材や働き方にフォーカスするのですが、既存の制度やカテゴリーに左右されずに、衣食住を包括的にやっていく必要があります。Local Coopは一般社団法人という柔軟性の高い形態をとっていますが、フィジカルな法人形態にとらわれない再分配のあり方やガバナンスのあり方をハイブリットに設計していくことが特徴だと思っています。 - 伊藤
- 次の質問はみなさんの関心が高くて、「いいね」がたくさん付いています。 「Local Coopのような地域主体と連携する際、どのような権限と責任の分配が望ましいと考えますか?(自治や共助に企業がどこまで関与すべきか?CSR・CSVとの違いが知りたい)」
- 林
- 新しい自治をしていくときに、外側のパワーを強く巻き込んでいくことは重要です。地域を存続させていくためには、閉じていてはできないので、開きながら守るという新しい戦略です。一方で開くことだけを考えると、外側から侵略されてしまうリスクがあります。主体性、ガバナンスのオーナーシップを誰が持つべきかというと、そこに住んでいる人たちを中心としたスキームを設計すべきだと思います。まだ明確な答えはないですが、そういうバランス感覚を持って設計していくというのがLocal Coopのスタンスです。
一方で、企業がどこまで担うべきかは、いろいろあると思います。顕在化している課題に対して自社のソリューションで解決したいというアプリレイヤー的な関わり方もあれば、OSレイヤーそのもの、自治体の代わりになるぐらいの立ち位置での関わり方もあります。そのあたりは、企業の特性や背景によって異なってくると思います。
自治体が運営を手放して、民間企業が自治体の代わりになっている特別自治区のようなものが、向こう10年の間に世界各地で生まれてくるだろうと予測しています。トヨタが実験的にウーブン・シティをつくっていますが、スターバックスが経営する離島があってもいい。そこに人が住んでいて、住民の暮らしが豊かで、特定の価値観や方向性にもとづいた暮らしが紡がれていて、その暮らしのコンセプトが企業の理念や方向性と一致していてウィン・ウィンの関係なのであれば、それ自体は問題ない。そこは大胆に考えていいと思います。そのなかで権限や責任も、いろいろなパターンが出てくるのではないかと想像しています。 - 伊藤
- 企業が自治に関わりすぎることに懸念はないのか、という質問も来ています。
「最近、東洋経済オンラインで、コンサルを始めとする企業に自治体が喰われるといった記事を読みました。民間団体との連携は良い面もある一方で、それ自体がいま批判的な目を向けられている気もするのですが、この点、林さん、関さんはどう考えますか」 - 林
- コンサルなどが自治体の中に入り込んで、自治体の財源を奪うようなことになると、何のためにやっているのかとなります。地域の未来をつくっていくために必要な資本やリソースを、外から引っ張ってくることができているのかどうか。たとえば企業も含めて民間が入って新たな自治をうたうときには、外部資本を調達していくことや、そこに対して投資をしていくという行為がセットでないと、健全な関係にはなりにくいだろうと思います。
- 関
- これをやればOKという世界ではないので、いろいろなチャレンジが生まれて、それをきちんと評価できることが大事だと思います。Code for Japanも法人登記は東京で、地域に行ってコンサルのようなこともさせていただいているので、そういう批判を向けられる対象でもあるわけです。われわれとしては価値を出しているつもりですが、その違いは難しいです。国や自治体が「基本的には成功しました」と言って振り返りをしないと、きちんと成果を出しているかどうかがうやむやになってしまいます。そこはもう少し批判的な目線での評価が必要ではないかと思います。一方で、単年度で評価されると歪んでしまうので、何を評価すべきかについても、みんなで話し合っていかなければならないと思います。
関係人口は地域にエネルギーを持ち込めるのか?
- 伊藤
- 関さんは「地域に熱量が足りない」という話をされていましたが、それに関して質問が来ています。
「エネルギーを誰が持ち込むのか、Code for Japanの場合、声やエネルギーを持ち込む人に傾向はあるのでしょうか?そういった人を戦略的に、意図的に増やしていくことは可能なのでしょうか」 - 関
- エネルギーを持ち込む人は地域によってさまざまです。商店会組合にすごくがんばっている人がいたり、自治体の職員だったり、地元で起業した社長さんだったり、地域おこし協力隊で入ったという人もいます。育てられるかというと、なかなか難しいという感じがしています。それより「発掘する」と言ったほうがいいかな。実際われわれが人を集めてワークショップをやると、この人はよく考えている、アイデアをたくさん持っているという人が必ずいて、そういう人たちと作戦会議をやりながら、妄想を具体化していきます。やることが決まってくれば、私はこれをやりたい、これをやりますという人が集まってくるので、こういう人が一人いればいいということではなくて、いろいろなスキルや能力を持った人たちをどううまく組み合わせられるかだと思います。
- 伊藤
- 地域内外にかかわらず、さまざまなスキルを持った人たちが関わっていくということですね。国は関係人口を可視化して増やしていこうとしていますが、次はそれに関する質問です。
「地方創生2.0で関係人口の促進、ふるさと住民登録制度の促進という話があがっています。こうした動きは、林さんの取り組みともかなり近い気がしましたが、期待と課題意識を教えていただきたいです」 - 林
- この制度に関しては、まだわからないというのが率直なところです。「関係人口を可視化します。そのためのアプリをつくります」ということしか言われていなくて、その先どうなるかが語られていないというのが現状認識です。この制度がこれからどういう余白をもって実装されるかが気になります。もし税制優遇まで踏み込むのであれば、おもしろい制度になるのではないかと思います。
- 関
- 関係人口が大事だというのはそのとおりで、今のふるさと納税が単なるオンラインショッピングのようになってしまっている状況で、もっと良いかたちで地域に関われる仕組みがあればいいと思います。ただ、広報紙が届くとか、データベース化してちょっとした割引があるというだけでは、外の力を起爆剤に使ってイノベーションを起こしたい、それで地域おこしをしたいというのは難しいと感じています。われわれが地域に入ってやっているような活動が、もっとやりやすくなるような仕組みがあるといいと思います。
- 林
- 最後に宣伝になりますが、こういった自治、共助については、議論だけでなく、現場に身を置いて体を動かしてやってみることが必要ではないかということで、Code for Japanとの共催で、10月に月ヶ瀬地区でco-livingプログラムを実施します。完全招待制で、国内外からキープレーヤーが集まって1週間の実証実験プログラムを行います。いま一緒に運営をしていただける企業パートナーを募集中です。もし興味がありましたら、お声がけいただければと思います。
- 伊藤
- 関心のある方はぜひご覧ください。ではこれでパネルディスカッションを終了とさせていただきます。林さん、関さん、ありがとうございました。
メンバー紹介
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伊藤 将人
Masato Ito国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)研究員地方移住定住や関係人口、交流人口など地域を超える人の移動と、持続可能なまちづくり/地域振興に関する研究や実践、政策立案に携わる。近年は、移動の社会学をテーマに、移動から世界/社会を考える研究にも力を入れている。
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