インタラクション・デザインに焦点をあてて、メディア・テクノロジーを使った表現についての研究を行っている。また、メディア表現を扱ったワークショップ開発や、その内容を共有するためのアーカイブ手法の研究にも取り組んでいる。主な活動に、「メディア芸術表現基礎ワークショップ」(文化庁メディア芸術人材育成支援事業)「3D スキャニング技術を用いたインタラクティブアートの時空間アーカイブ」(科研費 挑戦的萌芽研究)がある。
【参考】
出品作家と作品例
小林優希 シリーズ「はこふぃぐめんと」 2024年
小林優希 シリーズ「はこふぃぐめんと」より「夏休み」2024年
「はこふぃぐめんと」は、身の周りにあふれる製品の箱から、その箱を舞台とした物語を空想し、その物語を現実に表す作品です。製品の箱を使ったジオラマを制作して撮影し、撮影した写真を人のスケールまで拡大してプリントした背景に、作家自身がモデルとなり撮影します。そこに写るのは、あたかも空想の世界に迷いこんでしまったような不思議な情景です。
CG合成ではなくアナログな手法で、空想と現実とが重なり合う世界を表現する「はこふぃぐめんと」を、本展覧会では、鑑賞者自身が空想の世界に入ったような写真が撮れる体験型作品として展示します。
津田道子 新作
津田道子《あなたは、翌日私に会いにそこに戻ってくるでしょう。》2016年(参考図版)
撮影:木奥恵三
津田道子は鏡、枠、カメラと映像を使ったインスタレーション作品を発表してきました。鏡に映る像や、枠で切り取られる空間、会場で撮影された過去の映像などを展示空間で再構成し、時空間を歪めたり重ねたりする表現がなされています。
本展覧会では、音を使うことで、鑑賞者それぞれが違った場面を体験しているような試みがなされます。
時里充 《変身とおどり》(仮) 新作
時里充《ハンドメイドムーブメント season1 大体の事柄は布に覆われてしまっている》2022年(参考図版)
スクリーンの中でおかしな形をしたキャラクターがおどるように動いています。このキャラクターの動きは、ヘッド・マウント・ディスプレイをつけた人の頭と左右の手の3つの位置関係を、仮想のキャラクターの身体の構造に反映して作られています。時里は、バーチャルなキャラクターを動かしていくうちに、自分の身体がキャラクターの身体となじんでいく感覚を覚えてくると語っています。
バーチャルな身体とリアルな身体がなじんでいく過程を、ハイパーICCとつながれたハイブリッドな展示空間で提示します。
早川翔人 《マイン・マインド》(仮)新作
作品イメージ
映像の中の登場人物とテーブルゲームを楽しみます。テーブルゲームでは、盤面の状況だけでなく、テーブルを囲むプレイヤーの表情や仕草が、対戦相手の作戦をよむ手がかりになります。
ビデオゲームのようにモニターに映されるバーチャル空間内で自身のアバターを操作しプレイするのではなく、展示空間がテーブルゲームを進める舞台となっています。
バーチャルな対戦相手とリアルな場で展開されるテーブルゲームはどのようなリアリティを生むでしょうか。
平瀬ミキ 《氷山の一角》 2018/24/25年
平瀬ミキ 《氷山の一角》 2024年
《氷山の一角》は、目の前で起こる状況が、カメラやメディアを通じて伝わる時に起こりえる、情報の不確かさ、その違和感に気づかされる作品です。同じ形状をしたオブジェが、会場内に複数個配置され、それぞれがカメラで撮影されています。モニターに映されるオブジェは、画面上では同じサイズに見えますが、実際はそれぞれが異なり、同じサイズに映るようにカメラとの距離によって映像が調整されていることがわかります。そこに映像の遅延も重なり、鑑賞者はいくつもの不確かさに対峙することになります。
八嶋有司 《it's a very beautiful over there》 新作
八嶋有司《SCAN》2017年(参考図版)
展示室の四方の壁に3Dで表現された映像が投影されています。物体の形状をデータにする3Dスキャナでとらえられた日常の風景は、それと判別できる情報が削ぎ落とされた記録として展示室で再構成されています。鑑賞者が映像を見ていると、少しずつその情景が頭の中に浮かんできます。しかし、それは3Dスキャナでとらえた風景そのものではなく、鑑賞者自身の記憶と重なったイメージです。 鑑賞者それぞれが思い浮かべる情景は、記録と記憶が重なるMixed Realityと言えるのかもしれません。
【共同キュレーター、展示ディレクター 赤羽亨 プロフィール】
情報科学芸術大学院大学 [IAMAS] メディア表現研究科教授、産業文化研究センター センター長