【参考】出品作家と作品例

内田聖良 《バーチャル供養講》 2021-*リアル、オンライン

3Dスキャンされた捨てられない思い出の品々が、それらとの記憶が書かれたテキストともに奉納された仮想空間の「バーチャル供養堂」をVRで体験する作品です。内田は、「バーチャル供養講」という、ネット上における人々のさまざまな記憶や感情が種々の軋轢を生じ、他人と会うことが禁忌となった時代における、架空の新しい民間信仰を空想し、この作品を制作しました。会場では、供養のあとにペーパークラフト「のりしろさま」を配布し、だれかの思い出の品を持ち帰り、組み立てることができます。また、オンラインでも供養を体験可能です。

佐藤瞭太郎《All Night》2022、新作 *リアル

「アセット」と呼ばれる、既存の3Dモデルだけを用いて制作された3DCG映像作品です。佐藤は、インターネットで収集された大量のアセットを「漂流物」ととらえ、作品の中でそれらのさまざまなキャラクターを並列に扱います。作品はそれぞれ異なる世界から集められたかのようなキャラクターたちが、脈絡なく一堂に会する非現実的な光景を描き出します。キャラクターたちは自分の意志とは無関係に、物語に翻弄されているようにも見えながら、それらアセットのデータがインターネット上を「移動」しながら「変形」していく様子を表しています。

柴田まお 《Blue》2020年 *リアル、オンライン

撮影:Hayato Wakabayashi

会場に設置された青色をした彫刻が、映像では、なにもない会場とクロマキー合成され、その形を消滅させてしまう作品です。実体としての彫刻が透明になって、展覧会場にある実際の彫刻とは異なる容態で、インターネット配信されます。現実の彫刻の姿は会場に足を運ばないと見ることができません。彫刻という、一般的には現実空間に形をもった立体物として存在する表現形式が、インターネット以降の環境における、多様な鑑賞環境の中でどのように展開可能かを考えます。

たかはし遼平《並行植物調査》2021年 *リアル、オンライン

撮影:竹久直樹

ゲーム空間における植物のリサーチにもとづいて制作された作品です。本作は、実際に公園や渓谷などを散策して、現実の植物の植栽を撮影し、ゲーム内のバーチャルな植物を生やす余地がありそうな場所に、付近の植物と似たような形状の植物をゲーム世界や3Dモデルのアセットから探し、植えるというプロセスで制作されています。たかはしは、現実世界における整備された庭や公園とゲーム世界の植栽の関係などを考察し、そこに関連を見出しています。

谷口暁彦 《骰子一擲 / a throw of the dice》2018年、新作 *リアル、オンライン

かつてどこかで実際にサイコロが落ちた風景を3Dスキャンし、3Dプリンタしたオブジェクトと、サイコロの投げるリアルタイム・シミュレーションによる作品です。シミュレーションの中でサイコロが落ちる瞬間、サイコロに重なるように、3Dスキャンされた風景が現れます。風景はサイコロの6つの面それぞれに埋め込まれていて、サイコロの面に応じて表示されます。ここでは、サイコロが6つの異なる時間と場所が保存され、呼び出される記憶装置として見えてきます。

トータル・リフューザル《How to Disappear》2020年 *リアル

オンライン・シューティング・ゲーム『バトルフィールドV』のプレイ映像を素材として制作された映像作品です。このゲームでは、ゲームがプレイヤーの自由意志によって遊ばれるものだからこそ、戦場から脱走したままプレイを継続することが不可能になっています。この作品では、リアリティを追求して制作されたビデオゲームの世界では存在を許されず、そして戦争史においてもほとんど光の当てられてこなかった脱走者の歴史が語られます。そしてビデオゲームと現実の戦争を対比しながら、現代のわたしたちにとってのリアリティがどこにあるのかを探っていきます。

藤原麻里菜 *リアル

《顔をハメてもその様子を誰も見ることができない顔ハメパネル》AR 2022年

《ZOOMをガチャ切りできる受話器デバイス》2021年

《オンライン飲み会から緊急脱出できるマシーン》2020年など

《オンライン飲み会から緊急脱出できるマシーン》2020年

藤原は、頭の中に浮かんだ不必要なものをなんとか作り上げる「無駄づくり」を主な活動とするコンテンツクリエイターで、これまでに200個以上の不必要なものをYouTubeなどで発表してきました。本展では、そのなかからコロナ禍の生活でお馴染みとなったオンライン会議ツールを使用する際に、誰もが感じたことのあるささやかな気まずさを解消するための装置や、観光旅行が制限された時期に発想された、観光地におなじみの顔ハメ看板をARで再現しようとしたプロジェクトなどを展示します。