【参考】

出品作家と作品例

北千住きたせんじゅデザイン 《スリットスキャンの構造こうぞう》2021年

北千住デザイン《スリットスキャンの構造》2021年

スリットスキャン(slit-scan)と呼ばれる映像技法があります。時空が歪んだ様な不思議な映像を作ることができ、ICCにて展示している岩井俊雄《マシュマロモニター》にも使われています。《スリットスキャンの構造》は、このスリットスキャンの構造を可視化しインタラクティブに体験できる装置です。体験を通じて、映像技法の楽しさだけでなく映像自体の構造や時間の概念にも触れることができます。

  • 岩井俊雄《マシュマロモニター》は、メディア・アートの特徴的な要素のひとつである相互作用性、参加性を持った、インタラクティブ・アートの代表的な作品。

サスカッチ +サスカッチ プラス ksmtケーエスエムティー 《touchタッチ:waves》ウェーブス2021年‐

サスカッチ + ksmt《touch:waves》2021年-

《touch:waves》は、ディスプレイの画面をタッチし演奏するビジュアル楽器です。画面は27個に分割されていて、それぞれのエリアに音とその音のイメージがマッピングされています。ビジュアライズされた音を、見て、聞いて、感覚を刺激し合いながら演奏できるように作られています。音は、空気などの振動によって伝わって聞こえますが、その様子は音の波と呼ばれます。音の波に触れながら、演奏してみましょう。

避雷ひらい 《うまれる、かかわる、またうまれる、》2024年

避雷《うまれる、かかわる、またうまれる、》2024年

《うまれる、かかわる、またうまれる、》は、生き物の振る舞いを再現したプログラムで、人工生命たちがコンピュータの中で動いています。コンピュータの中で動く彼らは一匹一匹が自分の考えで動き、食事をし、仲間と集まり、子孫を残します。あなたがこの作品をみて、まとまりやなにかルールのようなものを感じたのであれば、それは生き物どうしのかかわりの中から自然と生まれてきたものです。この不思議な現象を創発(そうはつ)と呼びます。

自然やみんなの生きる社会には、存在どうしの間に、その存在自体だけでは説明できないような不思議な創発がたくさんあります。ぜひあなたも作品の中に飛び込んで、かかわりの生み出す不思議の一部になってみてください。

宮内暖笑みやうちのえ 《live〜ライブ drawing〜 2》ドローイング 22024年

宮内暖笑《live〜 drawing〜》2023年

《live〜 drawing〜 2》は、風にはためく布の動きによって生成するドローイング作品です。布で作られた筒状のオブジェを風が吹き抜けると、踊っているような動きを見せます。オブジェには糸とペンがつながれていて、オブジェの動きは糸を伝って回転する画用紙に残されていきます。ランダムな動きと一定に回転する動き、ペンの色や画用紙に触れる角度など、二つとない組み合わせの連続によって描かれるドローイングは、オブジェのユーモラスな動きとともに、どこかファンタジックな情景を見せてくれます。

椋木新むくのきあらた 《SPIRO MAKER》スピロ メーカー2022年

椋木新《SPIRO MAKER》2022年

《SPIRO MAKER》は、直線の組み合わせによる幾何学模様をペンプロッター(ペンを使って線や文字を描く機械)で描いて、ポストカードを作成できる体験型作品です。描ける模様の種類は、3つのダイヤルによって変わる動きのパターン、ペンの色、ポストカードの色、これらそれぞれの組み合わせによって、体験者のオリジナルな一枚に仕上がります。模様を形作るプログラムが脳の拡張、ペンの動きを制御する機械が身体の拡張とみると、無数にある組み合わせから選び出す創造性は、コンピュータや機械には置き換わらない人の能力なのかもしれません。

mole^3モルのさんじょう 《Datascape》データスケープ2020年

mole^3《Datascape》2020年

《Datascape》は、東京に関係する電力量と気候、行政区域と川、鉄道といった情報(データ)をモチーフに、それらデータ内に潜む波やゆらぎを表現した絵画作品です。データ・ビジュアライゼーションという情報が意味する内容が伝わるようにグラフなどを使った表現手法がありますが、《Datascape》はそれとは違い、風景画を描こうとする時の空に浮かぶ雲や遠くに見える山々、木漏れ日などと同じようにデータを扱っています。ものごとの連続性や特異点、法則性などから美しさやおもしろさを見いだす感性のビジュアライゼーション(視覚化)と言えるでしょう。

Lilyリリィ 「tabicoding」タビコーディング2023年‐

Lily「tabicoding」2023年-

「tabicoding」は、旅先や日常生活で見つけた美しい模様や好きな形をクリエイティブ・コーディングを通じて自分の周りの世界を探求するプロジェクトです。マレーシア在住の学生でもあるLilyが、ペナンの街並みで見られるプラナカン・タイルやモスクの壁面のレリーフなどをJavascript (p5.js)で作品化し、tabicoding.com で発表しています。tabicoding.comには「tabicoding」プロジェクトを始めるためのプログラミングの手引きも用意されており、クリエイティブ・コーディングを通じて見られる世界が開かれています。

【共同キュレーター 高尾俊介たかおしゅんすけプロフィール】

アーティスト/甲南女子大学文学部メディア表現学科准教授/ジェネラティブアート振興財団代表理事

1981年熊本県生まれ、兵庫県在住。2019年より、日記のように毎日プログラムを書く習慣としてデイリーコーディングを提唱している。2021年、NFTアートプロジェクト「Generativemasks」を発表。1万点のプログラムから生成されるNFTが世界的に注目を集め、発売から2時間で1万個が完売した。このアーティスト収益から、ジェネラティブアート振興財団を設立・現在は作品発表と並行して、アルゴリズムと計算の芸術であるジェネラティブ・アートの普及啓発活動に従事している。