【参考】

1. 出品作家と作品例

INDUSTRIAL JP *リアル

2016年に始動した、工場音楽レーベル。工場に響き渡る音とリズム、油に包まれ光る工作機械をこよなく愛する集団。
日本各地に点在する工場の中で、工作機械の稼働音のフィールドレコーディングと映像のサンプリングを行い、ミュージシャン/トラックメイカーとのコラボレーションにより楽曲を制作し、ミュージックビデオを配信しています。日本の町工場の魅力を発信し、国内の製造業を盛り上げる一助となることを目指し、各工場へのインタビューをウェブサイトに掲載するなど、工場の高い技術力や、それにより生み出される最先端の製品の魅力を発信するプラットフォームとなっています。
油に包まれながら動き光る工作機械が刻み続けるリズムと、正確な動作が、美しい音と映像となって表現されています。

couch *リアル*オンライン

《Nevermore》2020年

《寓話の寓話〈ウミネコ〉》2022年

浅尾怜子と宮?大樹によるアーティスト・デュオ。
ものづくりの初源的、発見的方法を検証する作品やプロジェクトを展開しています。
アートの技法、コンピューティング理論、説話や寓話に連なる現実的背景をもとに、インスタレーションや映像作品を制作しています。だまし絵的なインスタレーションや電子的な映像技術に、手作業を介入させるなどの手法で、技術的な方法に独自の批評的な観点を導入しています。

《Nevermore》2020年

映像技術のクロマキー合成(映像の背景を合成する技術)を使って、ありきたりな日常の光景を、絵筆で原寸大に描き戻した作品。真っ白なキャンバスの背景から元の光景が少しずつ現れてきます。

《寓話の寓話〈ウミネコ〉》2022年

スリット・アニメーション(ストライプ状のスリットを動かすことにより絵を動かす技法)によって、ものがたりを語る装置です。複数の自走スリットがドローイングの前をゆっくり通っていくと、いくつもの時空間が描かれたドローイングがばらばらに動き出します。それでいて、すべてのイメージは、一つのものがたりとしてつながっていて、始まりも終わりもない、ウミネコのものがたりが語られます。

すずえり *リアル

《3つの世界(Three Worlds)》2018年-

2018年ALT SPACE LOOP,Seoulでの展示風景

この作品は、AMラジオ、LEDライト、回路付きモーターと日用品によるモビールを、光と影、そして音で空間に拡張したインスタレーションです。
タイトルは、M.C.エッシャーのリトグラフ《Three Worlds》に由来しています。エッシャーの作品では水面を介した3つの世界が1枚の絵として描かれていますが、この作品では、回転するモビールと観客が存在する物理世界、日用品とLEDライトによる光と影の世界、DCモーターとAMラジオから発生する電磁場の世界、の3つの世界を表しています。
モビールは、モーター駆動のプロペラと、その反力(ある方向に働いた力に反対に働く力)によって回転し、ラジオの音はモーターの電磁波とAM波の干渉によって変調しています。空間全体に広がる影は、見慣れた日用品とLEDライトから生み出され、それぞれの世界が影響を与え合いながら、ある種の調和を生み出しています。

荒牧 悠 *リアル

《工場設備の動き》2016年

21_21 DESIGN SIGHT企画展
「デザインの解剖展: 身近なものから世界を見る方法」(2016年)
Photo: 淺川 敏

構造や仕組み、人の認知に注目した作品を制作しています。さまざまな素材を手で確かめながら、それぞれの素材の特性から生まれる形態を、動いたり動かなかったりするオブジェとして発表しています。
なにをするための機械なのか、その形や動きだけでは想像することがむずかしい機械たち。しかし、その動きはどこかエレガントだったり、引き込まれてしまうようなおもしろさに満ちています。
この作品では、その動きに着目して、工場でのチョコレート製造機械などの動きが、動くオブジェとして制作されています。そこには機能から(労働から)解放された機械たちの、純粋な機械の動きの美しさが現れてくるようです。

宮下恵太 *リアル

《BEAT/BIT》2019年

コンピュータにおいては、あらゆる情報が基板上を流れる電圧の高低と、0と1のバイナリ(2進数)によって表現されています。この作品は、コンピュータで扱われる電気信号の0と1を、ソレノイド(電気エネルギーを機械的運動に変換する装置)の運動に置き換え、物体を叩くことにより情報の伝達を行なう通信端末装置およびそのシステムからなるインスタレーションとして制作されています。
本来人間には知覚することのできない情報である電気信号=bitを、打音という身体的な信号=beatに置き換え知覚可能にすることで、より直接的に人間がデジタル情報への干渉を行なう可能性を提示しています。

やんツー *リアル

新作

《遅いミニ四駆》(インスタレーション風景)2022年(参考図版)

《脱成長のためのイメージ》2021年(参考図版)

デジタル・メディアを基盤に、公共圏における表現にインスパイアされた作品の制作から出発し、自動的に動く装置を制作し、絵を描くなどの行為の主体を外的要因に委ねることで人間の身体性によらない絵画を制作するなど、表現の主体性の問う作品を多く制作しています。
《遅いミニ四駆》は、速さを競う遊具としてのレーシングカーを、「速さ」ではなく、「遅さ」によって競うことによって、成長、発展のみを目的化した現在の社会の傾向に批評的なまなざしを向けています。そうした遊びの中で価値の順列を変えてしまうことで、遊具がたんに与えられた目的だけではない、ものの考え方の更新を促すものに変化します。また、いかにレーシングカーを遅くするかのいろいろな改造のアイデアを考える場ともなります。

久納鏡子

共同キュレーション、展示ディレクション

アーティスト、アルスエレクトロニカ・アンバサダー。
これまで、インタラクティブ・アート分野における作品を手がける一方、公共空間、商業スペースやイベント等での空間演出や展示造形、大学や企業との共同技術開発など幅広く活動している。2017年からはアルス・エレクトロニカ・フューチャーラボの研究プロジェクトにも携わる。
作品はポンピドゥー・センター(フランス)、SIGGRAPH(アメリカ)、文化庁メディア芸術祭など国内外で発表。東京都写真美術館(日本)に所蔵。