【参考】

1.出品作家と作品例

ALTERNATIVE MACHINE

新作 リアル

ALTERNATIVE MACHINE 《ANH-01》 2021年(参考図版)

ALTERNATIVE MACHINEは、「人工生命(ALife)」研究から生まれた理論や技術の社会応用に挑戦する研究者集団です。国内外のALife研究者とパートナーを組む、ALifeに特化した世界唯一のテクノロジー企業として、最適化や効率化を追求するテクノロジーのあり方ではなく、自律性や適応性、愛情や親しみ、存在感など、生命的な新たなテクノロジーのあり方を探求し、あらゆるものに生命性をインストールすることをミッションとしています。ALifeの理論や技術の研究開発をはじめ、ALifeの理論や技術を用いたプロダクト開発、アート作品の制作も行なっています。

本展では、無響室内で音響とVRによる体験をする新作の展示を予定しています。

菅野創+加藤明洋+綿貫岳海(オンライン・アーティスト・イン・レジデンス)

《かぞくっち》2022年 リアル、オンライン

菅野創+加藤明洋+綿貫岳海 《かぞくっち》2022年 Photo: Ioto YAMAGUCHI

《かぞくっち》は、現実空間の箱庭に設置された「家」と呼ばれるロボットと、その家に生息するデジタル人工生命体「かぞくっち」の家族によって構成されます。「かぞくっち」の各個体の情報(名前、生年月日、家系)はNFTに登録されており、売買することも可能です。また「かぞくっち」は繁殖可能であり産まれた卵にも自動的にNFTが発行されますが、繁殖が成功するためには、繁殖期にある2体の「かぞくっち」が入居する家が、物理的に適切な位置関係にある必要があります。

物理的なロボットの挙動がNFT(ブロックチェーン)上のアクションに反映されることや、「イエ」「家系」といった人間社会のメタファーが重ねられていることなど、《かぞくっち》にはブロックチェーンやNFTという新しい技術が社会にとってどのような意味をもちうるかといった、新しい社会実装の形などについて、考えるためのヒントが秘められているのではないでしょうか。「ICCアニュアル 2022」では、作品展示と並行して、オンライン・アーティスト・イン・レジデンス プログラムとして、会期を通じて作品のアップデートを行なっていく予定です。 

慶應義塾大学 徳井直生研究室 Computational Creativity Lab

リアル

スコット アレン、高石圭人、石井飛鳥、渋谷和史、松岡佑馬、小林篤矢、徳井直生《Compressed Ideograph》2021年(参考図版)

慶應義塾大学SFC徳井直生研究室、Computational Creativity Lab(CC Lab)は、人工知能(AI)を用いた新しい創造性のあり方について、研究と表現の両面からの実践に取り組んでいます。AIを、創造性を拡張する「道具」であると同時に、人の創造的なプロセスがどのように働くのかを写し出す「鏡」として捉え、オルタナティヴな答え/アイディアを求めるためのパートナーとしてのAIのあり方を模索します。また、アートや音楽領域だけでなく、AIが社会全般に及ぼす多様な影響、AIという存在そのものがもつ意義やその本質を、表現の実践を通して問いかけようとしています。本展では、研究室が発足した2019年以降の活動成果を、複数のプロジェクトによって紹介します。また、会期中の展示替えを予定しています。

小光(オンライン・アーティスト・イン・レジデンス)

「小光の部屋」リアル、オンライン

小光《here AND there》 2017年 撮影:木奥恵三

ICCキッズ・プログラム 2021にも参加した小光が、アーティスト本人の部屋というコンセプトで展示室を設えます。キッズ・プログラムでも出品され好評を博したインタラクティブ作品のアップデート版に加え、最近発表された新作のインタラクティブ作品、さらに小光がコロナ禍の生活において目にしたものをモチーフにした新作のアニメーションをインスタレーションとして展示します。またオンライン・アーティスト・イン・レジデンス プログラムとして、会期中に新作のインタラクティブ作品を制作する予定です。

セマーン・ペトラ

《Openings》2022年 リアル

セマーン・ペトラ《Openings》2022年

セマーン・ペトラは、現代の「世界」が、現実に加えてアニメ、ビデオゲームなどのフィクションの領域が重なるもしくは交差する総体として認識されていると捉え、映像作品として発表してきました。2021年度ICC企画展「多層世界の歩き方」に出品された「モノミス:外伝」シリーズにつづく新作《The Openings》では、「聖地巡礼(アニメや映画などのフィクション作品の舞台として使われた土地に訪れること)」を再度取り上げます。そして、ビデオゲームのロード画面やアニメ作品のオープニング、さらに鉄道が「リミナルであること(時間または空間を移動する過程で一時的に利用されることが目的とされていること)」において共通するという観点から、作品中で思索を深めていきます。

nor

《syncrowd》2022年 リアル、オンライン

nor《syncrowd》2022年

「同期現象」と呼ばれる自然現象を利用したキネティック・サウンド・インスタレーション。天井から吊られたフレームに取り付けられた複数の振り子が、フレームを通して互いに干渉しあうことで、まるで制御されているかのように自己同調していきます。個としては単純な振り子の振る舞いが、群衆(crowd)として互いに干渉し合うことで、同期(sync)によるうねりを持った状態や、内乱による無秩序な状態を生成し、環境を複雑に変化させ続けます。また、各振り子の揺れに合わせて鳴る音は、さまざまなパターンとなって有機的に重なり合い、ミニマル・ミュージックの音楽構造にも通じる美しさを生み出していきます。

エレナ・ノックス

《The Masters》2021年 リアル

エレナ・ノックス《The Masters》2021年|Photo: TAKAHASHI Kenji|図版提供:トーキョーアーツアンドスペース

ノックスは、近年展開している「Actroid Series」において、ヒューマノイド(人間型ロボット)をモチーフに、それらが社会において機能するようになった(なりつつある)現在、どのような問題を提起する存在であるのかを、さまざまなシチュエーションを想定して考察しています。「Actroid Series II」の一部を成す《The Masters》では、AIキャラクターがホログラムによって提示される「キャラクター召喚装置」が用いられます。受付や簡単な応対をするために作られたヒューマノイドやAIキャラクターは女性の表象をまとうことが多いですが、ノックスは、社会システムに人間(的なもの)の顔を与えることで、私たちが誰かに制約や制限を課す際の軋轢をどのように和らげようとしているかをテーマにしています。

村山悟郎

新作 リアル

村山悟郎 《Painting Folding--これと合致する身体を構想せよ》2020年 Photo by Shu Nakagawa(参考図版)

タンパク質は、「タンパク質フォールディング(折り畳み)」と呼ばれるプロセスによって、安定的に存在可能な三次元構造に自発的に折り畳まれます。2018年、AIの機械学習を利用して、タンパク質の形状をアミノ酸の配列情報から高精度で予測できるソフトウェアAlphaFoldが発表され、バイオ・インフォマティクスの分野で大きな注目を集めました。自己組織化するプロセスやパターンを絵画やドローイングを通して表現してきた村山は、自身の「織物絵画」シリーズとタンパク質フォールディングのあいだに構造発展過程の観点から類似性を見出し、2020年に《Painting Folding》と題した作品シリーズを発表しました。本展ではこれをさらに発展させ、村山の織物絵画の三次元情報からアミノ酸配列を算出し、その情報を再度AlphaFoldに予測計算させて、人間の手による織物絵画からミクロな自然に存在し得るタンパク質構造を新しくデザインすることを試みます。

ラービッツシスターズ

《Crypto Miner Car》2020年 リアル、オンライン

LarbitsSisters《Crypto Miner Car》2020年

暗号通貨のマイニングを行なう計算処理、またそれに伴い膨大に消費される電力を、いかに現在の都市や社会の基盤構造に組み入れることができるかを、気候変動の文脈から模索するプロジェクトです。展示では、暗号通貨をマイニングするGPUユニットを改造して排熱を回収し、その排熱によってミニチュアの車の動力を賄うシステムを提案します。このプロジェクトは、近代以降のステータス・シンボルとされてきた自動車を、持続的エネルギー生産と自動運転というトピックを絡めながら、富の再分配の象徴として再提示する試みでもあります。

2.関連イベント

会期中には、アーティストや有識者を招いたトーク、レクチャー、シンポジウム、ワークショップ、作品解説ツアーや、国内外からゲストを招いた催しなど、さまざまなプログラムを予定しています。