(別紙)実証にご協力いただいた医療機関の関係者からのコメント

医療法人社団尽徳会 酒寄医院 院長 酒寄 享 氏

「診療所の増加、医療事務人材の不足、医療の細分化、診療報酬改定頻度や内容の高度化などにより、診療所における診療報酬請求業務は一段と複雑化してきている。そのような中で、①正しい診療報酬の請求、②請求内容の質の担保、そのうえでの③請求点数の増加を行うには、今までのように窓口業務の片手間でレセプト請求を行うのでは困難になっている。

まず、①正しい診療報酬の請求に関しては、基本料をはじめ加算、検査、指導などの多岐にわたる点数請求を、算定要件や過去の算定実績などを勘案して素早く実施せねばならず、それを窓口で実施できる人材は限られている。また、各診療所・クリニックにおける算定内容や算定方法などを覚えるのにも時間がかかる。診療所・クリニックにおいてそのような人材の確保は困難を極めることが予想される。

また、②請求内容の質の担保については、傷病名に合致した検査方法の実施か否かや、レセプト上の診療内容から見たときに突出した検査項目の有無などが支払基金において厳しい査定対象となることが多く、算定内容の質の担保も重要である。

さらには、それらをもとにした③請求点数の増加を行うためには、診療内容をある程度理解したうえでどのような点数を請求するかを考える必要があり、この業務こそが医療機関の保険収入の増減を左右する重要な部分であることはいうまでもない。しかしながら、その能力を持った人材を育てることは診療所・クリニックレベルでは容易なことではない。

近年、将来の医療制度変革に向けてメガ法人のように複数のクリニック・診療所をグループ化する動きが進み、各々の診療所・クリニックで診療報酬請求を行うことは無駄が多くなることから、中央に集約して実施する方式をとるグループも散見される。そのような形式のグループ中においては請求方法や請求精度などに違いがあると無駄が発生しやすく、また多くの人材が必要になることが多々ある。メガ法人の中でも診療報酬請求に関して、集約化またはアウトソーシングをする必要性に迫られることは予想される。

一方、支払基金においては、レセプト処理においてAI化を進め、画一化した請求内容については機械処理を行うようになっており、審査員による目視の審査についてはより精度の高い、より医学的意義の高い内容についての審査が中心になってきている。そのような方向にあるレセプト審査においては、表面上の点数算定だけの請求業務では今後立ち行かなくなってゆくことは容易に想像がつくであろう。すなわち、単なる基本料・加算の算定・請求では診療所、クリニック経営における増収、増益はかなわないこととなってゆくことが考えられる。

このような現状において、今般発出されるニチイ学館のサービスにおいては、遠隔で、専門分野に詳しい医療事務スタッフが、診療内容の詳細までに踏み込んだ診療報酬請求の実現に可能性を持たせるものと考え、大いに期待を寄せることができると考える。」

医療法人桂名会 大須病院 管理者 桑木 晋 氏

「適切な医業収益を得て医療機関を経営するためには、医事業務の品質は極めて重要です。また、昨今では患者さんの待ち時間短縮や受付・待合の密回避のために、いかに受付や会計の流れを効率的にしていくかというのが、経営上の大きな課題になっています。一方で医事スタッフの雇用・育成・配置は、医療機関の経営者にとって常に頭の痛い課題でもあります。一見安定しているように見えても、何らかの理由で一人が退職・休職しただけで全体のバランスが崩れ、業務品質や業務効率が低下してしまうこともあります。今回のような医事の集約センター化の取り組みにより、医療機関の人材確保の課題解決に貢献してもらえることを期待しています。」