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住民のための普段からの備え

大規模災害に備えて もしもの時つなぐチカラは、地域との絆に比例する。 NTT東日本 東京南支店 星野 理彰

自治体や警察・消防とのつながりを普段から構築出来ているかで、通信復旧のスピードは大きく変わります。それを痛感させられたのが東日本大震災でした。重要な情報をいち早くキャッチし、忌憚なく要望を伝え合える関係性を築くのは“平常時からの絆”です。災害時においても“つなぐ力”を最大限に発揮出来るよう、人と人とのつながりに力点をおいた東京南支店の取り組みを紹介します。

防災の顔“地域連絡員”が日頃から自治体の防災担当と信頼を構築

災害が発生すると、警察や消防、自衛隊などがどう動いているか、避難所はどこなのか、多くの情報が自治体の災害対策本部に集まります。想定外の場所が避難所になったり、交通規制で復旧のために出動した移動電源車(通信電源用移動発電装置)が足止めされたりする中で、いわゆるこの“情報集積所”である自治体の災害対策本部で、NTT東日本の社員が効果的に活動出来ることが早期復旧の鍵になります。東日本大震災時には、社員が自治体の災害対策室に常駐し、どこへ優先して災害時用公衆電話(特設公衆電話)を設置すべきか情報を収集したり、停電対策として至急、移動電源車を通してもらえるよう地元警察に依頼したりしました。情報が錯綜する災害対策の現場において、効果的に活動が出来るようにするためには普段からの関係性がとても大切になってくるわけです。こうした経験をもとに、自治体の防災担当者と、人と人との関係を築けるよう東京南支店では、あらかじめ“防災連絡員”の役を担う社員を選出しています。彼らは自治体や関連機関と防災訓練の段取りや調整、相談などを通して密接に関わります。自治体を含め、地域における通信サービス復旧の要となる機関との結びつきを日常の活動を通して高めていくのが仕事です。災害時には“防災連絡員”も被災者になる可能性があるため、その社員の地の利のある地元や、帰宅も容易な自宅周辺地域を担当にしています。そのため“わがまちの通信を守るのは自分”という社員の自覚も強くなっています。

Wi-Fiを活用した防災訓練を展開

NTT東日本では、以前から防災訓練などを通して災害用伝言ダイヤル(171)および災害用伝言板(web171)の利用普及に努めており、自治体からの要請があれば、基本的に全ての防災訓練に積極的に参加しています。これに加え、東京南支店では2015年からWi-Fiによる通信も可能となるよう接続訓練を実施しています。大規模災害で電話がかかりづらくなるとWi-Fiは重要な通信手段になります。そのため、防災訓練の際には災害用伝言ダイヤル(171)とWi-Fiをセットで提供しています。しかし、防災訓練は河川敷や公園などの特設会場での実施が多いため、既設の通信設備がなく、Wi-Fi用の光回線の準備は容易ではありません。それでも災害時には同様の状況が想定されることから、本番さながらに光ファイバーケーブルの敷設を行います。銀座の数寄屋橋公園で実施された訓練では、敷設不可能とされたルートに夜遅くまでかけてケーブルを敷設しました。また、多摩川河川敷での狛江市総合防災訓練では、土手に数百メートルに渡ってケーブルを敷設しました。こうした取り組みにより、自治体に私たちの真剣さが伝わり、また、社員同士でケーブルの仮設方法の知恵を出し合い、それを実現していくことで、防災意識がさらに向上するのです。自治体とNTT東日本との絆を強くすることが、さらなる信頼につながっていくと信じています。このWi-Fiを活用した防災訓練は現在、他の支店にも拡がりを見せています。

多摩川河川敷の体験ブースまで光ファイバーケーブルを敷設

防災訓練では災害情報に自動で切り替わるWi-Fi環境を提供

商店会との関係を再構築して、地域ぐるみの防災に貢献

NTT東日本は地元商店会に対し、“街Wi-Fi”を使った地域ぐるみの防災活動に向けた働きかけを行っています。地域住民のための防災を自治体とだけでなく、住民とともに作り上げていくことで多面的に支えていくのが狙いです。街の全商店会をリストアップし、それぞれどんな特性のある商店会なのかをまとめていますが、防犯カメラが欲しいと相談される商店会、Wi-Fiスポットを住民や観光客のためにも用意したいという商店会などニーズはさまざまであり、こうした活動を通して地域防災網が着々と広がっています。“何かあればNTT東日本に相談してみよう”と地域でも頼りにされる存在になるための活動は、各地域で始まっています。

医療機関に集まる人々のために連携する

東京南支店での最前線の活動が、医療現場において災害時に役立つ通信サービスの提案です。医療現場では現在、被災者への治療の優先度に応じた受け入れを行う仕組みづくりや、医療スタッフの配備が検討されています。こうした活動に対して、NTT東日本としても貢献出来るポイントがいくつもあると考えています。例えば、災害時における医療スタッフの安否確認や医療現場の状況確認、通信の確保、被災者の安否を確認するために集まってくるご家族などへの通信手段の確保などです。災害時の状況を考えれば、必ず何らかの対応が必要になります。こうした地道な活動が必ず有事の際の対応力を高めることにつながるはずと、医療関係者の意見を踏まえた検討を自治体や医師会などに働きかけています。

防災と観光を兼ねてWi-Fi網を効率的に整備
東京都千代田区 IT推進課 南茂 昭彦 課長

東京都千代田区では、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向けた外国人観光客の増加への対応や、発生が懸念される首都直下型地震などの災害時に有効な情報伝達手段として、Wi-Fi環境整備に取り組んでいます。観光庁の調査によると、外国人旅行者が日本で旅行中に困ったこととして、無料公衆無線LAN環境が少ないことが上位に挙げられています。また、東日本大震災の際には、携帯電話やスマートフォンなどで、防災情報の受信や安否確認などが困難な状況となりました。このようなことを踏まえ、区は2015年12月から無料公衆無線LANサービス“CHIYODA Free Wi-Fi”の提供を開始しました。本サービスは、平常時は観光客や在住・在勤のご登録いただいた皆さまにブロードバンド環境を提供するものですが、災害発生時においては登録されている方以外にも無料開放し、避難のための情報取得や安否確認などにご利用いただけるものとしています。Wi-Fiスポットの整備については、今年度は区役所本庁舎や、高齢者総合サポートセンター「かがやきプラザ」、出張所、千鳥ヶ淵ボート場などに設置します。来年度以降は、区内主要駅周辺や観光スポットへの設置を予定しています。また、NTT東日本のWi-Fiスポットを設置している店舗やビルのオーナーに“CHIYODA Free Wi-Fi”への参加をお願いしているところです。それらを合わせて、将来的には区内全域における環境整備をめざしています。

春にはさくら祭りで賑わう千代田区千鳥ヶ淵