ホーム > 企業情報 > 災害対策 > 東日本大震災への取り組み > 東日本大震災から5年。「あしたに、つなぐ。」 > 災害対策の最前線 > 災害対策の基本姿勢


災害対策の基本姿勢

大規模災害に備えて 人と人をつなぐためにタッグを組む。 NTT東日本 災害対策室 久保田 伸

NTT東日本は災害対策のために国の機関や自治体、相互に協力し合うライフライン各社、他の通信事業者、そしてNTTグループ各社との有機的な連携を進めています。災害発生時に、情報や指示を誰がどこに伝達し、機器や物資をどこに配備して被災地まで運ぶのかといった詳細な計画を予め作っておきます。こうして作られた計画に基づき訓練し、実力を測り、技術と手順を見直して対応力を強化しています。災害発生当初は、まず人命が最優先ですので、そのためにライフライン各社の初動は2つに大別されます。1つ目は鉄道やガス会社のように安全のためにサービス提供を停止すること。2つ目は電気や水道のようにサービスを提供し続けること。NTT東日本は後者であり、「通信」をつなぎ続ける役割を担っています。また、企業の災害対策は社員あってこそだと言えます。人と人をつなぐために、社員を含むあらゆるプレイヤーとタッグを組み、パフォーマンスを高めることの重要性を東日本大震災から学びました。

真っ先に対応すべきは人命救助

発生から72時間が命を救うために非常に大事な時間と言われています。その間の我々の最も大事な仕事が、消防、警察、自衛隊などの人命救助を円滑にするためのサポートです。彼らの通信手段を確保するために回線や機器の手配を行うのです。例えば、東日本大震災でも、発生直後に自衛隊から災害対処活動にかかわる臨時専用回線の申し込みを受け、緊急対応を行いました。被災した地域が広範囲にわたるような場合には、自衛隊の拠点も多くなります。自衛隊が保有する機材では不足することがあるため臨時の回線を構築し、専用回線で本部と拠点とを結べば、一般電話の混雑に影響されることなく、人命救助に関わる重要連絡を円滑に行うことが出来ます。このように、NTTグループの災害対策3原則の1つである“重要通信の確保”に基づき、災害時には、緊急通報、防災機関などの通話を最優先します。初動の人命救助と併行して、避難所への開設に合わせ、通信手段の確保について自治体から要請をいただきます。しかし、道路が寸断され、陸路での機材運搬が不可能となるケースが多発するため、自衛隊のヘリなどで私たちの衛星通信機材などを搬送していただくといった緊急体制を組みます。このように、3原則の2つ目“サービスの早期回復(応急復旧)”にも関係機関・ライフライン各社との連携は欠かせないものとなっています。

東日本大震災発生直後の本社災害対策本部の様子

NTTグループの災害対策3原則

有事に備える。備えた上で、早期に復旧する力を蓄える

また、3原則の3つ目が、いわゆる災害に強いネットワークを作り“ネットワークの信頼性向上”を図ることです。これによって災害時の通信途絶を減らすことが可能ですが、そこには限界があります。その限界を超えた災害が起こると、あとは努力と知恵が必要です。努力と知恵とは、いかに有事に備えるか、備えた上でいかに力を蓄えるかを指します。つまり、自分たちの今の力をきちんと認識しておくことが一番大事だということです。そして、それに一番有効なものが平常時の訓練です。訓練を行うことによって、自分たちの実力を常に理解し、そして、強くなっていくことが出来ます。力を蓄えることはとても大事なことです。社内訓練はもとより、関係機関やライフライン各社との訓練によって、より迅速な対応を可能としています。そして訓練により得られた気づきやアドバイスをもとに、最新の技術を取り入れた災害対策機器の高性能化・小型化・軽量化による機動力の向上を図っています。ハード面とソフト面、さらにはマインド面を高める努力と知恵をもって有事に備え、早期に復旧する力を蓄えています。

ネットワークの信頼性向上の要所となるネットワークオペレーションセンタ

自衛隊とは協定を結び平常時から訓練を繰り返し実施

交通の要所に前線基地を構えて対応

大規模災害時には、国の機関やライフライン各社のために、主要な高速道路が確保されます。通信の復旧においても、さまざまな機材や物資を運ぶこととなります。陸路を迅速に確保出来る点は、非常に重要なことです。そして、応急復旧の前線基地として機能するのが、高速道路のサービスエリアです。中でも、常磐自動車道の守谷サービスエリアは、首都直下型地震に備え、NEXCO東日本が中心となって整備した非常時の防災拠点です。首都圏に入る手前のこの拠点から、主要機関が連携して行動することになります。NTT東日本もNEXCO東日本や国土交通省と日頃から連携し、守谷サービスエリアで訓練を実施しています。ここには自衛隊やインフラ事業者が滞りなく活動出来るよう、車両やヘリコプターなどの待機場所、通信環境、燃料や食料の備蓄、救護設備などが整備され、フードコートは共同災害対策室として機能します。こうした拠点が、順次拡充されていく予定です。

常磐自動車道の守谷サービスエリアでの防災拠点化実証訓練模様

NTT西日本グループの動きから学んだ広域支援の重要性

東日本大震災発生時、NTT西日本グループの初動は極めて迅速でした。食事や寝袋、多くの災害対策資材・機材などを持参して、翌日の深夜には関東圏に到着しました。こうした迅速な対応が出来たのは、台風などの自然災害が多く発生する西日本エリアにおいて、NTT西日本グループが、日頃から広域支援を想定していたからに他なりません。NTT東日本は東日本大震災当時、中継拠点、前線拠点、復旧拠点の選定と確保に時間を要したことを教訓に、また、NTT西日本グループの初動体制を参考に、各地域でのさまざまな災害に備えた支援パターンを検討しました。東日本エリアで大規模災害が発生した際、例えば、神奈川支店のエリアが被災した際には、長野支店が支援パートナーとなるといったように、被災した支店の支援パートナーとなる支店を取り決めた広域支援体制の構築に取り組み、震度6弱以上の地震が発生すると被災した支店に対する支援要員などが、派遣依頼が来てから赴くのではなく、自動的に現地に向かうこととしました。これにより、災害対策本部からの指示を待たずとも支援要員や災害対策機器が被災地に向かうことになります。また、被災地域ごとに、どの機器をどこから運ぶというところまで予め計画を立てています。計画を立てるということは、平常時から災害時の状況を想定しながら訓練が出来るということであり、訓練を通じて自分たちの実力を認識出来るようになることが、さらなる対策の強化につながるのです。また、支援する社員も被災地で生活しながら支援をするわけですから、衣食住の確保をどうするかまで、平常時から対策を立てておく必要があります。このように災害時を想定して細部まで取り決めておくことが応急復旧の要です。

NTT西日本グループから応援に駆け付けた工事車両