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第1回 大規模災害と通信ネットワーク

夜を徹しての復旧作業が始まった

「中継局や電話局の孤立を解消する」。これが大災害の際の通信網復旧の大原則であり、行動指針となる。

新潟県中越地震では、長岡・小千谷市周辺の6カ所で通信網が裂断され、3つの電話局がどの通信網ともつながっていない孤立状態となった。復旧作業を担ったのは被災地にあるNTT-ME新潟長岡支店である。難を逃れた社員たちと近隣エリア勤務だが長岡市在住の社員が集まり始めたのは、地震発生から数時間後のことだった。すぐにNTT-ME浦和ネットワークオペレーションセンタから寄せられた異常の情報をもとに裂断箇所の確認作業が始まった。

裂断箇所は、最寄りの交換局から試験信号を発信して特定する。社員は、余震で揺れる電話局の中で測定を繰り返し、特定できると現地に赴いて詳細な状況を確認。この作業は夜を徹して行われ、地震発生の翌日の10月24日一杯かかって終了した。

結果的に、孤立していた3つの電話局のうち2つは、光ファイバを仮設してルートを作り25日に応急復旧するが、山古志村の電話局だけは、通信網が3箇所で裂断され、すぐには復旧のめどがたたなかった。

同時に重大な影響を及ぼしていたのが商用電力の停電だ。震源地周辺にある57の電話局が停電。うち51の電話局にはバックアップ用蓄電池、6つの電話局には非常用発電機が備えられていたが、いずれも7〜10時間たてば切れてしまう。復旧作業の"現場司令部"となるNTT東日本新潟支店の災害対策室は、近隣各県のNTT支店に移動電源車の派遣を要請。レンタカーも調達して可搬型の発電機を停電した電話局に送った。移動電源車は遠く岩手県からの派遣も含めて14都県から28台、可搬型発電機も9台が投入された。さらにおよそ1日3回、ガソリンを補給しなければ燃料切れで停止する。ガソリンを積んだトラックが、地震で隆起した道を奔走した。

通信網が裂断されて孤立している地区や避難所などへの通信手段の提供も重要な初動対応だ。家族や親戚に安否を伝えることができる手段を提供するのが通信事業者の使命である。地震が発生してすぐに小国町役場、越路町西小学校、山古志村に「ポータブル衛星」が投入された。

ところが衛星通信の性格上、余震で揺れてアンテナの方角がずれると通じなくなるため、社員が調整しなければならない。NTT-ME新潟長岡支店の村井弘支店長は、「余震の恐怖と戦いながらガソリン補給に走り回ったり、ポータブル衛星電話を守ってくれた大勢の社員がいる。コンビニも被災し、こちらから十分な食料補充もできない状況の中で、よく頑張ってくれたと思う」と語る。

現場への司令部となるNTT東日本新潟支店災害対策室の松野一朗室長は、「災害対応では、つくづく協調がキーワードだと感じた」と語る。まず広域支援体制。先に紹介した移動電源車など機器の支援はもちろん、応援スタッフの支援体制がある。被災地では、初動復旧にあたる社員が、被災者でもあるというジレンマがある。実際、被災地のNTT-ME新潟長岡支店の場合、140人の社員全員の安否が確認されたのは地震発生翌日の24日午後のことだった。

現地の社員が被災した場合でも初動対応が可能な体制をいち早く構築しなければならない。まず新潟支店の災害対策室には東京本社から10人が派遣されたが、松野室長が特に要望したのが「新潟県出身の社員」だった。また宮城支店からは2人ずつ1週間交代で応援スタッフが派遣されたが、その理由は、2003年の宮城県沖地震の復旧対策を経験しているからだ。
「地の利があり、小さな村の名前や位置まで知っている。また地震災害の復旧で経験がある。そうしたこと一つで復旧計画作りや作業は格段にスピードがあがるのです。」

NTT-ME新潟長岡支店にも、40人規模の応援が1週間交代で全国から送られ、派遣規模が縮小されたのは11月の下旬に入ってからだった。

電力会社や道路事務所、自治体との協調体制も早期に構築しなければならない。山古志村がそうだった。松野室長は行政とともに、道路事務所、電力会社、そしてNTTで作る協議会を発足させた。「山古志村の村長は、対策本部を村役場に戻したいと願っていました。ならば、その願いを実現するために関係する機関が集まり、仮復旧でよいから一刻も早く効率的にライフラインを提供する道を見つけなくてはなりません。」

松野室長も村井支店長も、「社員全員が、これが災害復旧なんだ、と共通した認識を持つ」ことの大切さを語る。新潟支店では、災害対策本部に営業部門を中心とした「お客さま対応班」も作った。「災害復旧というと設備部門の仕事のように考えがちだが、それは大間違いだ。災害復旧の現場にはやるべきことがたくさんある。NTTグループの全社員が、自分の立場では何ができるかを自問自答しながらお客さまに呼びかけてこそ、私たちの思いが届くのです」(松野室長)

人が持ち運べ、ヘリでも運搬可能な「ポータブル衛星」。衛星通信により特設電話が使用可能になる。

「通じてこそ電話です。」 NTT-ME長岡支店の村井弘支店長

「誰もがあたり前に使えるが故に電話はライフラインなんです。」 NTT東日本新潟支店災害対策室の松野一朗室長

全国のNTTグループからの広域支援チームが被災地へ駆けつける

被災地での復旧作業は現在も続いている。

取材:船木 春仁

通信サービスの早期復旧に活躍する災害対策機器

災害時に一刻も早く通信サービスを提供したり、支障が生じないようにNTTではさまざまな対策機器を用意し、被災地に投入している。

非常用交換機

電話をつなぐ交換機が被災した場合、非常用の交換機をヘリコプターで輸送し、10日間程度で3万回線規模の臨時の電話局を構築する。

移動電源車

長時間の停電が発生したり、予備電源が停止した場合に備えて用意されているのが移動電源車。最大1000kVAの発電能力を備えており、通信電源が確保される。

超小型衛星通信装置(Ku-1ch)

災害時に孤立したエリアとの通信途絶を防止するために衛星通信を利用して通信手段を確保する。持ち運びが可能で、特設公衆電話としても利用できる。電話は1回線分。

ポータブル衛星

人が持ち運べる衛星電話で、かつ電話回線16回線またはINS1500回線2回線分の容量を備えており、避難所などへの特設公衆電話の設置に威力を発揮する。

ディジタル衛星車載車

災害発生時に、通信衛星を経由してディジタル伝送路(6.3Mが2本分)を確保できる。広域避難所の特設公衆電話であれば最大192回線設置できる。トラックで入れないエリアには、装置をヘリコプターで輸送して活用する。