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第3回 雪から通信を守る

雪崩との戦い

岐阜県北部、富山との県境にある飛騨市宮川町。宮川が深い渓谷を作り、それに沿って集落が点在する静かな山間の地域だ。

2005年1月14日、宮川町で雪崩が発生し、通信ケーブルが裂断した。このケーブルは、前年10月、台風23号による土砂災害でケーブルが流された際、応急措置として山中に20キロにわたり迂回ルートとして敷設した光ファイバケーブルだ。宮川町の北部地域をカバーしている。かろうじて数本の通信線がつながっていて孤立することはなかったが、もはや一刻の猶予もなかった。

宮川町は、台風23号による土砂崩れで高山側から町に通じる国道360号線が通行不能、さらにJR高山線の鉄橋等が数カ所で流失してしまった。今は、車がやっと通れるだけの仮設道路を利用するしかない。しかも冬に入り、そこには深い雪が降り積もっている。

「宮川を孤立させてはならない」。雪崩で裂断した通信ケーブルを復旧させるため、飛騨地方の通信設備を守るNTTネオメイト岐阜高山統括営業所から8人の技術者が緊急出動した。しかし現場は、除雪されている集落からさらに4キロほど奥に入った深い山中。8人は雪上車に乗り込み現場に向かった。
しかし、山の斜面を削っただけの林道は、谷側に向かって傾斜状に数メートルの積雪があり、ひとつ誤ると雪上車が横転しかねない。8人は自ら雪かきをして道を作り、雪上車を進めた。現場にたどり着いたのは出発から6時間後のことだった。

そこでは雪崩によってケーブルが押し流されていた。雪の深さは3メートル。たどり着くまでに疲れ果てた体に鞭打ち、スコップで雪を掘り起こし、埋まったケーブルを探し当てた。
ケーブルは酷い状態だった。光ファイバを保護する硬質プラスチックがくの字に曲がり、中の光ファイバのほとんどが引きちぎられていた。

光ファイバケーブルの接続は、従来の銅線とは異なり、髪の毛ほどの細い線をつなぎ合わせる非常に細かな仕事だ。かじかむ手に息を吐きかけながらの作業を続け、応急復旧にこぎ着けた。1月15日のことである。

雪崩事故から復旧した通信ケーブルは、前年の台風被害で応急措置として設けられた仮設の迂回ルートである。一方、本来の通信ルートの復旧工事も台風被災直後から急ピッチで続けられていた。本来の通信ルートが完全復旧したのは1月20日。つまり、仮設ルートが雪崩事故から応急復旧した5日後に、本来の通信ルートが復旧したのだ。
ということは、この仮設ルートの雪崩による応急復旧は無駄ではなかったのか。仮設ルートは雪崩事故でも数本の通信線が生きていた。このため、本来のルートの完全復旧工事を急げば済むことだったのではないだろうか。この質問にNTTネオメイト岐阜高山統括営業所の上瀬敏幸所長は、「通信網の維持には、数分の(通信)途絶も許されない。たとえ、雪崩事故の翌日に本来の通信ルートが完全復旧するとしても、私たちは仮設ルートの復旧に向かったでしょう」と厳しい表情で答えた。

雪は、半年近くもの間、山を覆い尽くす。雪国の冬は長く、静かな脅威とともに暮らし続ける季節なのである。宮川町でも例年2メートル近くの雪に埋まる。

この町で生まれ育った飛騨市宮川振興事務所の田中外志所長は、「雪の怖さは、暮らす人々の不安を募らせるところにあるのです」と語る。
「たとえ道路がふさがっていなくても、このまま降ればふさがってしまうのではないか、停電になるのではないか、電話が使えなくなるのではないか、とたくさんの心配ごとが頭をよぎります。それらを克服して暮らしていかなければならないのです。過疎化率の高い地域が雪国に多いといわれるのは、若い人の職場が少ない等の問題もありますが、雪からくる不安が大きな存在を占めているからなのです」

雪国の人々の不安をやわらげ、安心を届けるのが各種のライフラインであり、中でも通信網は重要な役割を担っている。電話がつながり連絡が取れるという安心だけではない。宮川町の場合、一部エリアでは沢水を利用して水道設備としており、山中の設備は通信網を介して監視されている。通信網の維持は、まさに命綱を守ることである。

過酷な状況の中で通信網を守るには、他の災害とは違った対応と労苦がある。通信のユニバーサル(全国一律)サービスを探るシリーズ3回目は、雪の脅威と戦いながら山中に入る技術者たちの姿を追う。

岐阜県飛騨地方

飛騨市宮川町

雪上車でケーブル裂断現場へ向かうNTTネオメイトの技術者

かじかむ手で通信ケーブルをつなぐ

「通信網の維持には甘えは許されない」上瀬敏幸NTTネオメイト岐阜高山統括営業所長

雪深い山間部の通信網を守るNTTネオメイトの技術者

取材:船木 春仁