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酪農家 佐々木光洋

佐々木光洋

牛に負担のない飼育と低温殺菌で本来の風味を届ける“ささき牛乳”

 福島市の西部から山形県米沢市にかけて続く吾妻連峰の東の麓に位置する佐原地区。1960年(昭和35年)前後まで、この地域では水稲の他、当時の信夫地方全域がそうであったように養蚕が盛んに行われ、安価な外国産の輸入絹や石油による代替品の普及などで衰退を機に、現在の福島市が「フルーツ王国」と呼ばれる元となる果樹栽培へと切り替わって行きました。
 そんななか、その後の生業の活路を酪農に見出し、1960年に1頭のホルスタイン牛を飼うことから始まり、飼料の牧草を自給し、牛乳を搾って出荷しながら徐々に頭数を増やし、『美味しい・安全・手頃な価格』を掲げて、『自分の手で直接牛乳本来の風味・美味しさを届けたい!』と、搾乳後の殺菌処理プラントを自ら設け、生産から加工販売まで全ての行程に関わり、風味豊かな牛乳を責任を持って生産続けてきたのが「ささき牛乳」です。
 今回「ふくしま人」へご登場を頂いたのは、1987年(昭和62年)、父・健三さんによって法人化された「有限会社ささき牛乳」の創業来の想いを継ぐご長男の佐々木光洋(ささきみつひろ)さん。光洋さんは高校を卒業後3年間北海道の牧場での実習を経て福島に戻り、2007年(平成19年)から経営に携わる代表として現在に至ります。ささき牛乳が創業来拘り続ける牛乳の「風味」は、自分が搾った牛乳と、出荷後にメーカーで商品になり販売される牛乳との違いに違和感を覚えた父・健三さんが、より原乳に近い風味を残してお客様へ直接届けたい想いで導入した「低温保持殺菌プラント」で作られ、多くの酪農家が夢見ながら事業として足を踏み出すことを躊躇する加工販売まで、多額の初期投資をしても手を拡げた経緯をお聞きしました。
 「一般的にスーパーなどで紙パックで売られている牛乳は、摂氏120〜130度の高い温度で2秒間の短い時間の殺菌方法を採用しています。私の父は普段自分が実際に搾り、自分で直接飲んでいる牛乳との味の違いに納得し難いところがあり、より原乳に近い、牛乳が本来持っている風味や美味しさを製品にしたいと思っていました。それを形に出来るのが『低温殺菌法』と呼ばれるものと考えて取り入れた経緯があります。低温殺菌牛乳は摂氏63度で約30分間、低い温度で長い時間を掛けてじっくり殺菌するのですが、人間に害を及ぼすといわれる大腸菌を殺菌出来ればどちらの方法でもよく、家では『低温殺菌法』を採用しています。やはり風味が決定的に違うと思います。生産している私達も、お客様からもそういう声を頂きます。お料理でもグツグツ沸騰する時に食材を入れてしまうと風味が飛んでしまうと言われますが、牛乳も全く同じで、牛乳ならではの味を出来るだけ残した殺菌ということで、創業来ずっとこのスタイルでやらさせて頂いています。」
 1987年に導入した小さな乳業メーカーが加工牛乳を作るために対応したシンプルな「低温保持殺菌プラント」を使用し、ご家族で飼養できる20頭前後の成牛と数頭の子牛を育てながら、毎日、朝・昼・晩・寝る前に4回餌を与え、搾乳量毎に配合飼料の量を変え、牛に負担を掛けずに長く飼養できる朝夕2回に分けて1頭の成牛から25〜30kg/日を搾乳し、酪農家自らが直接お客様に届けられる、1日の出荷限定数約400本(900ミリリットル/瓶)の低温殺菌牛乳を毎日生産し、創業からの『美味しい・安全・手頃な価格』を掲げながら、ささき牛乳は地域に根ざした信頼できる牛乳として多くの固定客の皆さまに愛され、飲み続けられています。