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ゼリーパテシエ 杉山修一

杉山修一

困難から復興と希望へと背中を押した一口の手作りゼリー

 「ゼリーのイエ」が作るゼリーは、100%天然ゼラチンを使用したプルンと弾力のあるゼリー。様々な果物ジュースやシロップ、ミルク、コーヒー、抹茶などの材料をゼラチンと混ぜて加熱して溶かし、それを何層かに重ねて作ったり、ゼリーの中にムースやキューブ状に細かくカットした、色鮮やかな沢山のゼリーを入れて作る2タイプがあり、そのバリエーションは約20種類を数えます。
 「天然ゼラチンだけで固めているので、常温では溶けてしまい、指の熱だけでも溶けてしまいます。商品にも影響してしまうので、素早く作ることが大事になります。層を重ねるゼリーは、ゼラチンと材料を混ぜて加熱して溶かしたゼリーを、一旦粗熱(あらねつ)を取り、ほぼ常温まで冷まして最初の層を型に流し、約10分間冷蔵庫に入れて固めます。次に違う材料を入れて溶かしたゼリーを、また同じ手順で重ねて流し、同じように約10分間冷蔵庫に入れて固めます。これを繰り返すことで層に重ねるゼリーは完成します。また、ゼリーの中に入れるムースやキューブ状にカットするゼリーは、いつも前日のうちに作り、最初にムースやキューブ状のゼリーを型に入れ、メロンやブルーハワイのシロップやイチゴミルクなどを材料にしたゼリーで固めて作ります。」
 複数の工程が同時に進められ、どのゼリーのどの工程をどの順番で進めるかや、溶かしたゼリーが固まるスピードとの兼ね合い、また、季節の気温の違いによって、固まるスピードの違いから変わる工数など、経験と慣れが必要と修一さんは話します。
 2011年の震災では、お店の2ブロック先まで津波が押し寄せ、小名浜の全戸に施設されている給湯設備が使用できなくなり、その後の原発事故によって、修一さんらは東京へ一時避難します。その間、全国のお客様から激励のメールや手紙が数多く届き、「待っていて下さる沢山のお客様のためにも、ここで止めてしまうことは出来ない」と、給湯用のボイラー設備を購入して約1ヶ月後にお店を再開します。
 「最初は品数も少なく、お客様が来て下さるのか不安でしたが、そんな中でもゼリーを買いに来て下さるお客様から、“落ちてしまった気持ちを、このゼリーがプラスの気持ちに上げてくれる”とお聞きすることが度々あり、そんなふうに“ゼリーのイエ”を思っていて下さったことを知りました。次第に口コミでお客様の数も増え、それに合わせて品数も増やし、ネット販売も少しずつ再開していきました。」
 少しずつ落ち着きを取り戻してきた小名浜の街で、また以前のように毎日ゼリーを作る生活に戻った修一さんは、10年、20年、30年と、続けて行くことが大事と思っていると話し、洋子さんが作るゼリーの昭和の雰囲気やセンスは、真似ようとしても出来ず、いつか新しい商品を作ることがあれば、洋子さんとは別の視点で、でも同じようにワクワクとさせる、魅力的なゼリーを作りたいと夢を膨らませます。

取材後記

今回、「ふくしま人」へご登場を頂いたのは、いわき市小名浜の手作りゼリー専門店「ゼリーのイエ」のパテシエ、杉山修一さん。ゼリー専門店というのも珍しい上に、ご紹介した写真からもお分かりのように、キラキラと色鮮やかで、可愛らしい花形のゼリーに感動です。天然ゼラチン100%を使用した、プルンと弾力のあるゼリー。「優しい味」とは正にこのこと?、とゼリーの固定観念が変わるかもしれません。
◎ゼリーのイエ:http://www.zerry-house.com/