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陶芸家 安齊賢太

安齊賢太

漠とした不安〜脱サラで目覚めた自分の生き方としての陶芸

 今回「ふくしま人」へご登場頂いたのは、陶芸家の安齊賢太(あんざいけんた)さん。郡山市出身で大学進学と共に上京し、卒業後、医療・健康機器メーカーに就職しました。経済面での不安はなかったものの、そのままサラリーマンとして生活を続けていく自分の将来がイメージできず、不安を感じてしまったことが切っ掛けとなり、『せっかくなら自分のやりたいことをやろう』と会社を辞め陶芸の道に入ります。
 「ものをつくることは元々好きだったので、”ものをつくる仕事をしたい”と漠然と思っていました。サラリーマンの生活自体はそれほど苦しいものではなかったのですが、自分の将来がイメージできる仕事がしたいと考えた時に、思いついたのが陶芸でした。ですから陶芸について特別な憧れがあったわけではありませんでした。」
 会社を辞め、ものをつくる仕事として陶芸を選んだものの、陶芸に関する知識は全くなかったため、京都伝統工芸の後継者を育てる専門校としてあった当時の京都伝統工芸専門学校(現京都伝統工芸大学校)へ入学します。平日はもちろん土曜日にも自主的に学校へ通い、轆轤(ろくろ)の挽き方をはじめ、基本的なノウハウを2年間で習得。卒業後はイギリスへ留学します。
 「京都の専門学校では、技術的に上手になればいいものが作れると思っていたので、練習ばかりしていました。卒業後は、もっといろいろなカタチの陶芸を見てみたいと思いイギリスへ留学しました。語学学校へ通いながら、いろいろな作家のところで手伝いをして陶芸を学びました。イギリスでは人の巡りも良かったので、いろいろな作家のところで手伝う機会がありました。授業が終わると作家のところで土を揉んだり、窯のメンテナンスや釉薬(ゆうやく)の配合をしたり・・・」
 安齊さんは、イギリスの陶芸は日本の産地のようなものが殆どなく、陶芸作家が個々に始めた陶芸が多く、さまざまな種類があり、個人の作家が個人のやり方で作り、仕事としての陶芸というより、自分の生き方として陶芸をやって行くという感じだと話します。それを強く感じたのは、イギリス国内の新進気鋭の陶芸作家が紹介されている本の中で興味を持った一人「アーチウェイ・セラミックス」のダニエル・スミス氏のところで手伝いをさせてもらえるようになった時だといいます。
 イギリスの陶芸作家のスタイルや文化に触れることで充実した時間を過ごして帰国した安齊さんは、若手陶芸家の憧れである伊豆の陶芸家黒田泰蔵氏のスタジオを訪ねます。
 「イギリスへ行く前に一度お会いしていたのですが、帰って来てからもずっと気になっている方でしたので、一度お会いしたいなと思い訪ねる事にしました。すでに黒田さんのお手伝いをされている方がおられたので、旅館でアルバイトをしながら、休みの日だけ手伝っていました。そこではいろいろなことを学びました。今でも当時を振り返ると思い出されますが、一番憶えていることは、休み時間や食事の時に、いつも最後に仰っていた『結局、一生懸命やれっていうことだよ』という言葉で、今も心に残っている、一番大切にしている言葉です。技術的に上手くなればいいものが作れると思っていたのですが、そうではないんだという考えを凄く学ばせてもらいました。その言葉を胸に、仕事が終わった後に轆轤の練習をさせてもらったり、帰った後もアパートの台所の横に作った轆轤場で練習していました。」
 2010年(平成22年)、安齊さんは伊豆から郷里の郡山に戻って独立しましたが、その半年後におきた東日本大震災での当時の様子について引き続きお聞きしました。