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アナウンサー 浜中順子

浜中順子

ローカルテレビ局が後押しする3.11後の“フクシマ@ホーム”

 震災直後のテレビ局の現場では、伝えなければならない沢山の情報があるなかで、仕事場に泊まり込んで対応することも頻繁にあり、また取材に行きたくても行けない状況のもとで、様々な迷いや不安を抱えながらも、それぞれが自分のなかで熟思し、福島に残って暮らすことを選択した人達に対し、自分達はしっかりと情報を伝えていきたいと思ったと浜中さんは話します。
 「ニュースの現場では、震災直後からコマーシャルなしで生放送を続ける状態が3日間位続き、アナウンサーは交代で当番制で入りながら、その時伝えられる情報をメモなどを見ながら伝える形を採っていました。また、情報不足だったこともテレビ局のなかにいてもあり、首相の会見の言葉を一言一句書き留めて、それを情報としてお伝えすることもありました。そういうなかでどういう情報が皆さんが欲しいと思っていらっしゃるのかを考えた時に、震災前には一部の地域にしか関係のないことは、テレビの世界ではお伝え出来ない内容であっても、今、ここにいる人がプラスになるのであれば読むべきと社内会議を重ね、いろいろなFAXやメールを読まさせて頂きました。」
 帰宅もままならない睡眠不足のなかで、『アナウンサーが話す一言一言を待っている』という励ましのFAXやメールも届き、地方のテレビ局として伝言板の役割りも果たしながら、待っている人達がいることを励みにアナウンサー全員が取り組んでいたと当時を振り返り、序々に落ち着きを取り戻すなかで、浜中さんは新しい番組のプロジェクトメンバーとして携わることになります。
 「やっぱり素敵な福島なので、私が最初に惚れ込んで直ぐにファンになった福島を、もっともっと子供達が自信を持ち、『福島出身です、福島から来ました』と言える子供達に育てていきたいという想いが強くなりました。子供達を応援する企画番組を立ち上げ、そのメンバーでもありました。本当に素晴らしい福島なので、みんなに自信と誇りを持ってもらえるような街にしたいし、こういう機会があるからこそ福島へ目を向けて下さる一流の方々に福島へ来てもらい、子供達に素敵な授業をしてもらえれば、今まで福島で考えていた幅が更に広がり、もっと全国に世界に目が向くような子供達が増えるんじゃないかと思い、この番組に携わりました。ここで素晴らしい人達に出会うことも出来ましたし、そこから繋がって更に大きな企画に発展したものもあります。」
 現在、開局50周年の福島テレビは、『FTV@ホーム』(アットホーム)のキャッチフレーズのもとで様々な企画番組を放送するなかで、郡山市出身の写真家鈴木心(すずきしん)氏を起用し、福島の人や場所を写真で紹介する短い映像作品企画を番組の合間に放送し、震災を経験した被災地にあるテレビ局として『FTV@ホーム』の企画に寄せる想いと、震災後3年目の新年を迎えた今年に寄せる抱負を最後にお聞きしました。
 「今、福島テレビは開局50周年ということで、『FTV@ホーム』という企画で福島の素晴らしい人達や場所を紹介しています。これは当り前に思っていたことが、実は本当に素敵なことだと気付かされることが多く、もっと多くの人に福島の素敵な人や場所を紹介し、残していきたいという想いで、写真家の鈴木心さんの写真で紹介する企画を進めています。当り前じゃなくて本当に誇れることだと福島の人にも気付いてもらいたいし、そういう想いでみんなで福島を盛り上げて全国に発信し、そんな福島にしていくことが私達の仕事だと思っています。震災関連の情報をしっかり発信することも情報機関として大切な仕事ですし、それと同時に気持ちのなかでみんなが前向きになれることを、福島にあるローカルテレビ局としてドンドンやっていきたいと思っています。私自身がこの福島に育てて頂いて、ここまで頑張ってくることが出来ました。その恩返しという想いでも、みんなとホントに手を携えて肩組んでという感じでやっていきたいと思います。」
 浜中さんは「取り留めもなく話しちゃいましたかね」と最後に苦笑しながら、普段テレビで見る通りに終始笑顔を絶やすことがなく、インタビューを終えると、「アナウンサーは土地によって育てられるんですよ」と話し、その印象的な言葉に浜中さんのアナウンサーとしてのキャリアを実感した取材となりました。

取材後記

今回、「ふくしま人」へご登場を頂いたのは、新年最初の「ふくしま人」にふさわしい、福島テレビアナウンサー、浜中順子(はまなかじゅんこ)さん。被災地にあるテレビ局の報道部アナウンサー担当部長という重責にいて、当時の報道現場の困難な状況での対応や、その後の福島の情報機関としての内外への発信、そして福島の復興へと繋がる様々なプロジェクトへの関わりと、その多忙さはテレビの画面からは見えないところ。今回、直接お話しをお聞きしてみると、普段通りの親しみやすい明るさと明快な口調で、局内からの信頼や数多くの視聴者のファンを持つ理由は、やはりその人柄にあると思えた取材でした。
◎福島テレビ株式会社:http://www.fukushima-tv.co.jp
◎浜中順子アナウンサー日記:http://www.fukushima-tv.co.jp/blog/hamanaka/index.html