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建築家・クリエイター アサノコウタ

アサノコウタ

地方(福島)からの可能性をカタチにする建築以下クリエイティブ

 2011年の暮れ、二本松市の商店街の空き店舗のひとつに、これまでの定型的な指向とは趣きを異にする、311後の二本松市の現状に即した、子供達と大人達のためのコミュニティスペースが生まれました。
 「屋内の大地」と名付けたそのコミュニティスペースには、連日地元の子供達と親御さんらが集い、店舗内部に作られた大地で、子供達は土遊びを楽しみ、それを見守る大人達が、草原のなかで大人同士の会話を楽しみながら、情報交換の場としての役割りを果たしています。
 今回「ふくしま人」へご登場を頂いたのは、二本松市のNPO法人「まちづくり二本松」の松本太さんら有志の皆さんと共に、共同で「屋内の大地」を主宰されている、建築家・クリエイターのアサノコウタさん。アサノさんは2007年慶應義塾大学環境情報学部を卒業後、2009年同大学院政策・メディア研究科修士課程を卒業、同年、郷里の福島市へ戻られてBHIS(ビューティ・ハッピー・アイランド・スタジオ=うつくしま・ふくしま・スタジオ)を設立。活動の拠点として郷里福島を選び、BHISを設立した経緯からお話をお聞きしました。
 「SFC(慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス)での6年間は、メディアやグラッフィック、建築以外にも古民家の研究をしていて、特にスローライフのような生活をしている島根県には毎年行っていました。人の多い東京は余り好きじゃなく、古民家なら福島にも一杯あり、日本全体の人口が激減していくなかでは、特に人口が多い東京で何かを作ったりデザインをすることよりも、実は人口の少ない地方の福島で作ることの方が、東京や世界よりも進んだものが作れるんじゃないかと思っていました。“うつくしま、ふくしま”をひとつのコンセプトとして捉えて、“ふくしま”に関わるデザインや空間、建築を作りたいと思っていました。」
 アサノさんは建築士の資格を持たない自身の現状を“建築家以下”といい、社会に起こせるアクションが制約されるこの中にこそ、実は面白い領域が隠されていると話します。
「余り知られていませんが、建築士の資格を持たない誰もが、木造100u以下と30u以下のRC造や鉄骨造などが作れます。敷居の高い建築ではなく、誰もが建築を楽しめる“建築以下”のもの。このコンセプトを実現できたのが「環境の棚」です。ホームセンターで買える合板を使い、古民家の2階へスッポリと入る、細分化した格子状の棚だけを提供しました。使い手が作り手となり、格子ひとつひとつに仕上げを施すことで、愛着の湧き上がる豊かな生活環境を育てることができます。」
 2011年8月、福島市で開催された野外音楽イベント「プロジェクトFUKUSHIMA!」のメイン会場「四季の里」には、全国から集まった膨大な布を縫い合わせた「大風呂敷」が、約6,000平米の広大な公園に敷き詰められました。アサノさんは水戸を拠点とする美術家・中崎透(なかざきとおる)氏と共に大風呂敷プロジェクトのディレクターを務め、場所の特性に沿った配置を前提に、2.5×2.5m、5×5m、10×10mに細分化した3単位の大風呂敷を組み合わせた配置計画を作り、広大な公園を敷き詰めました。
「大風呂敷プロジェクトの経験は、沢山の人が関わって作られるプロジェクトの面白さを感じました。そして、県外からも大きな支援を頂けることが分かり、今後SNSを使って呼び掛けをすることで、集まったもので何かを作ることができることに興味を持ちました。」
 「プロジェクトFUKUSHIMA!」の「大風呂敷」を敷き詰める経験は、次に、関わったプロジェクト「屋内の大地」にも生かされることになり、引き続きお話しをお聞きしました。