東北自動車道の郡山ICから、国道49号線を猪苗代方面へ車で5分程走らせると、道路沿いにシンプルな3階建の白い社屋の横に、黒字に白くLa VidaとサインされたURLのディスプレイが目に入ります。
La Vida(ラ・ビーダ)とは、「いのち・生活・人生」を意味する言葉。この場所に2005年(平成17年)に社屋をリニューアルしたラ・ビーダは、80年ほど前に小野町で創業した指物職人の先々代から、職人であり家具屋を始めた先代の後を受け継いで、24年前にLa Vida(ラ・ビーダ)と屋号を改め、真正面から人と生活と向き合った、家具屋の視点から考える住まいづくりを提案しています。
今回「ふくしま人」へご登場を頂いたのは、人と家具と自然との関わり方をデンマークの家具や文化に学び、3代目にして「循環・継承する家具屋」へ辿り着き、生命(いのち)と暮らしを抱く器は、生命と暮らしをなぞって「あつらう」こと、と話すラ・ビーダ代表取締役、渡部信一郎さん。
「ラ・ビーダは、3代約80年に渡って、より良い生活のための家具を作ってきました。山に入ってきちんと丸太から購入し、優れたデザインと優れた職人の手によって、ひとつひとつ丁寧に、真心を込めて作ることができる、数少ない家具屋だと思っています。ただ、家具というのは函(はこ)ができてからの後付なので、家具を納品すると、住宅の広さや仕様にマッチングしていないケースを何度も見てきました。そこで、より良い生活をもたらす家具が入る、家具屋の視点から見た、より良い住宅を作らなければ駄目だと思うようになり、7年前から住宅事業を始め、現在まで約40棟の住宅を作ってきました。」
より良い暮らしに添う物を作るためには、「ORDER=オーダー」では足りず、頼み手と作り手が心を重ねて、お互いの信頼関係のなかで、ひとつの願いを込めて形作る行為だと話し、それを支える材と技、職人の覚悟と自尊で「あつらう」ことだと渡部さんは話します。
「ラ・ビーダが作る家具や住宅の材料は“木”で、それは200〜300年前から生きてきたものです。自分達の世代ではなく、何代も前の先祖達が作ってきた財産を、今、私達が使っています。その自然から生まれる日本人の暮らし、暮らしから生まれる日本人の文化、そして日本人の心が育まれてきたのだと思っています。でも、先の震災と原発の事故で、それが壊滅的に失われてしまいました。ラ・ビーダは、自然がなければ存在し得ない、成り立たない、生きては行けないのだと実感しました。」
渡部さんは、先の震災と原発事故の前から、先人が繋いできた知恵と技の本質は、この国の自然や風土のなかにこそあって、豊かな四季と景観に馴染んだ住まい方や、自然の理(ことわり)に従った日々の暮らし方が、古くからあった、あたりまえで“普通”の幸福だと思い、“住まいと生活が調和した、うつくしい情景を創造する”ことがラ・ビーダの使命と考えていたと話し、
「先の震災を経験して、改めてその使命を言霊(ことだま)として得ました。木の仕事を通して、またもう一度自然を再生したいと考えています。100〜200年とかかっても、確実に次ぎの世代へ繋いでいきます。」
生命(いのち)と心に添う家具や住まいを作ることは、風土と言霊に従って歴史の軌跡を繋ぐことと、渡部さんは着実に前へ歩みだしています。