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大堀相馬焼半谷窯 半谷貞辰

半谷貞辰(はんがいていしん)

浪江の空を望む工房から新たな作品をイメージする陶芸家夫妻

 浪江町を離れた21の窯元でつくる大堀相馬焼協同組合では、役場機能を置く二本松市の協力を受けて、市内の小沢工業団地に新しい拠点施設を構えることを決め、中小企業基盤整備機構の被災地支援のもと、2月のオープンに向けて工事を進めています。施設内には5台の轆轤(ろくろ)と大小2基のガス窯、展示販売所などを備え、大堀相馬焼特有の青ひびを産む釉薬を安定して確保するために、福島県ハイテクプラザへ分析依頼した釉薬作りも進められ、各窯元が交代で施設を利用することで、再び大堀相馬焼を復興し、新しい拠点として前進して行こうとしています。
 ご自身も避難を余儀なくされ、困難な状況からそれぞれの立場で前へ進もうとする仲間を思い、半谷さんは次のように話します。
「産地のそれぞれの窯元は、今バラバラに避難している状態で、いわきへ移って再開した人、私のように先達窯の清水さんの支援で再開できた者など、様々です。この施設を利用することで、また物作りができるようになり、一歩ずつ前進して行ければと思っています。」
 昨年の7月から先達窯で制作を再開してから、半谷さんは既に4回の窯上げを行い、福島の地で伝統の青ひび・走り駒・二重焼の大堀相馬焼を作り上げています。今後の制作活動の抱負をお聞きすると、
「320年もの大堀相馬焼の歴史と伝統を残していくことと、時代の動きにマッチした、新しい形や意匠でチャレンジする流れが以前から生まれていました。半谷窯でも定番の椿の意匠や野の花をモチーフにした意匠で、新しい相馬焼の作品を作ってきましたが、震災後、先達窯の清水さんの工房を使わせてもらいながら、清水さんの磁器とのコラボレーションで、何か新しい分野の挑戦をして行きたいと思っています。」
 半谷さんが轆轤で茶碗や花瓶などを成形し、奥様の菊枝さんが絵付けを担当する。常に二人三脚で制作するスタイルが、震災と避難で「窯元が途絶えてしまうのでは」という不安の日々で中断し、またこうして「皆さんのご親切で、また今までのように作品を見てもらえる」と、作品を前にお二人は笑顔を見せます。
 先達窯の在る高台の工房前からは、中央に信夫山を配した美しい福島盆地の眺望が広がり、北から半田山、霊山、明神岳へと続く青い稜線が連なります。青空が広がる真下の稜線の向こうに浪江町があり、それを確認できる景色を背景に半谷さんの撮影をしていると、
「浜通りの浪江町と比べると、福島はやはり寒いです。でもここから見える風景は本当にきれいです。清水さんは、いつもこの風景を見ながら作品を作っていたんですね。」
撮影の様子を見守る奥様と話しをしながら、既にお二人は清水さんとのコラボレーションへ向けたイメージを膨らませているようでした。

取材後記

今回ご登場を頂いたのは、昨年の震災と原発事故による避難から、浪江町から会津若松、会津東山温泉、裏磐梯、福島市へと避難をされ、現在、福島市の陶芸家先達窯(せんだちがま)の清水文博さんの工房で制作を再開された、大堀相馬焼半谷窯(はんがいがま)半谷貞辰(はんがいていしん)さん。陶芸家同士の友情と、二人三脚で制作される半谷ご夫妻の信頼と絆、そこから生まれる作品の温かい表情に、感動を覚えた取材でした。
◎先達窯(清水文博):〒960-2262 福島市庭坂字栃清水40 TEL:024-591-3293
◎半谷窯(半谷貞辰):〒960-2262 福島市庭坂字栃清水40先達窯内 TEL:090-5597-8041