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セレクトショップオーナー 高橋省吾

高橋省吾

福島から4つの思いをカタチにしたピンバッジF-pins(エフピンズ)

 2011年3月の震災と原発事故以降、小さな子供を持つ母親のお客様が多いレディスセレクトショップBarnS(バーンズ)には、来店するごとに放射能の影響で子供を外で遊ばせられない不安を話すお客様が増え、高橋さんはお店として何か出来ないかを考えるようになったと話します。
 「3.11から2〜3ヶ月を過ぎた頃、お店でお客様と会えば必ずその話題になり、或るお客様から、西の会津地方の三島町で子供達に遊び場を提供して受け入れてくれる情報をお聞きしました。さっそく子供30人と大人10人のバスツアーを企画し、子供達と一緒にピザを作ったり、お絵描きをしてワークショップで一緒に遊びながら、子供達を外で本当に楽しく遊ばせることができました。お母さん達のストレスもかなり解消されて、一緒に楽しんでもらうことが出来て本当に良かったと思います。」
 2012年1月、高橋さんも参加をする、街中でお店を経営する有志により「LIFEKU(ライフク)実行委員会」が立ち上げられます。原発事故以降、福島から県外へ避難をする人が多い中、自分達の商売が続けられるのか不安を持ちながら、日頃から価値観を同じくする仲間が集まってLIFEKUを立ち上げた経緯をお聞きしました。
 「事故から半年程経った頃、仲間と話す機会があり、行政を頼らずに自分達で何かをやらなければ駄目だということになりました。その活動が自分達の仕事にも繋がる福島の商業振興となること、また自分達が日頃お世話になっている社会への貢献に繋げること、またお店同志のネットワークを構築して顧客を共有しながら協力と共存することを決めてLIFEKUを発足させました。それ以前にも洋服屋として何が出来るのかを考えていて、たまたま取引先にイラストレーターの藤本将(ふじもとすすむ)さんがいたことから、洋服に付けるピンバッジを是非デザインして頂こうと思い、5〜6回上京して打合わせを重ねました。」
 福島から声を出し、福島の現状を考えてほしいと、高橋さんと藤本氏が作り上げたピンバッジは、『子ども達の未来』、『福島からのメッセージ』、『エネルギーの考え方』、『自然の大切さ』の4つのメッセージをカタチにした「F-pins(エフ・ピンズ)」として完成し、発起人の高橋さんが運営事務局長となり、LIFEKUから販売されることになります。売上金からは、僧侶で芥川賞作家の玄侑宗久(げんゆうそうきゅう)氏が理事長を勤める、原発事故によって避難している子供や若者達を支援する「たまきはる福島基金」へ寄付され、LIFEKUプロジェクトの柱のひとつ『社会貢献』がカタチとなりました。
 「ファッション業に携わりながら福島を40年程見てきましたが、ここ10年近くは、音楽のイベントをきっかけに、福島市内を中心に、業種や年齢を越えた横の繋がりが出来てきて、県外の方々にも福島は優しくて親切な街というイメージを持って頂いています。そうして繋がった人達がそれぞれに福島を思い、考えて、是非お手伝いをしたいと声を上げて頂き、今、大きな広がりを見せています。F-pinsを付けていることで、それを見ることで福島の話題になり、風化をさせずに、忘れないことに繋がると思っています。」
 福島でセレクトショップを始めて30年間続けてきたなかで、今程仲間と同じ価値観を共有しながら、強く結束したことはなかったと話し、そこにこれからの福島の希望を感じていますと高橋さんは話します。

取材後記

今回、「ふくしま人」へご登場を頂いたのは、福島市で30年に渡り洋服のセレクトショップを営む高橋省吾さん。若さを保つ秘訣はおしゃれ心を忘れないこと、と洋服の素晴らしさを伝えています。そして震災と原発事故以降、子供達の心身のケアに配慮したバスツアーを企画。また、福島を考え、風化させないことを願い、『子ども達の未来』、『福島からのメッセージ』、『エネルギーの考え方』、『自然の大切さ』の4つのメッセージをカタチにした「F-pins(エフ・ピンズ)」を制作。福島からの声として静かに広がりを見せています。
PICK-UP/BarnS:http://www.pick82.net/
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LIFEKU:http://lifeku.jp/