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ニュースリリース

2021年9月8日

東日本電信電話株式会社 千葉事業部
千葉県ナシ栽培スマ農コンソ

労働力不足などの農業現場の課題解決に向けたナシ栽培スマート農業の実証を開始
〜自動追従ロボットによる運搬支援、気象データに基づく農薬散布適正化、AI生育診断〜

このたび、千葉県が代表機関を務めるコンソーシアム(千葉県ナシ栽培スマ農コンソ)では、千葉県市川市および成田市のナシ農園をフィールドに、ロボットやAI、ICTを活用したスマート農業技術の体系化に向けた実証事業を開始しました。労働負荷の軽減や気候変動などへの対応のため、

  1. 1ヒトを自動で追従する運搬ロボット作業車
    1. 2ほ場ごとの気象データに基づく病害発生予測と農薬散布適正化ナビゲーション
    2. 3ナシ園の棚下から画像を収集し、AIが生育解析を行うシステム
    について実証します。


    なお、本事業は農林水産省事業「スマート農業技術の開発・実証プロジェクト」を活用しています。

1.本実証の背景と対応する課題

千葉県はニホンナシの産出額、栽培面積ともに全国1位を誇ります。二ホンナシは海外からの需要も高まっているため、生産量や品質の向上に期待が寄せられています。
一方で、農業全体の課題である高齢化・労働力不足により、その生産量は減少傾向にあります。
また、気候変動の影響による生育ステージのばらつきにより、作業適期の判断が困難になっており、生産量や品質に影響が生じています。

具体的な課題として、夏季に行う収穫作業は収穫台車を人力で押しながら果実を摘むため、労働強度の高い作業となっています。
また、高品質のナシ生産に欠かせない病害虫の薬剤防除について、昨今の気候変動により適期実施するタイミングの判断が難しくなっています。
さらには、開花の時期も年々早まっていることから、従来通りの生育予測では農繁期の雇用調整や出荷予測も困難になっています。

海外からのニーズにも合った高品質のナシを効率よく生産するため、本コンソーシアムではロボット、AI、ICTなどの先端技術を活用したデータ駆動型のスマート農業システム構築のため、以下の実証事業の取り組みを開始しました。

課題と対応方針


2.事業内容と期待される成果

本事業では市川市、成田市にほ場を持つヤマニ果樹農園で以下の実証に取り組んでいます。


実証テーマ

内容と期待される効果

ヒト自動追従ロボット作業車の開発・実証

ロボット作業車

【実証内容】

ヒトに自動追従するロボット作業車を導入し、収穫、せん定枝回収・結束のほか、除草剤散布モジュールを搭載し、汎用利用する。また、作業者が装着したウェアラブル端末の心拍変化などから軽労化の効果を検証する。

【期待される効果】

従来の人力で動かす収穫台車を電動のロボット作業車に代替し、汎用利用することで大幅な省力化を実現する。

ほ場ごとの気象データに基づく病害発生予測と農薬散布適正化ナビゲーション

微気象センサー設置イメージ

【実証内容】

  1. (1)アメダスなどでは取得できない詳細な気象データ(微気象データ)を広範囲に収集するセンサネットワークを構築し、データを自動で栽培支援用スマホアプリ「梨なび」に反映させる。

  1. (2)「梨なび」アプリにより、黒星病の感染危険度をリアルタイムで予測し、農薬散布による防除適期をナビゲーションする仕組みを実用化する

    黒星病…糸状菌と呼ばれるカビが原因で、黒い斑点が広がり裂果が生じる病気。

【期待される効果】

黒星病

  1. (1)ほ場ごとの微気象データが自動で収集され、アプリで分かりやすく把握できる。
  2. (2)微気象データ等から、各ほ場に合わせた細やかな黒星病等の発生予測と、防除計画の立案が容易になり、使用する農薬の種類の削減(目標:通常38成分を26成分まで削減)に貢献する。
ナシの棚下から自動で画像を収集し、AIが生育解析を行うシステム

棚下画像からAIが葉の茂り方を解析

【実証内容】

ロボット作業車に搭載したカメラで棚下からの生育画像を撮影し、AIで解析。ナシの生育診断に活用する。

【期待される効果】

  1. (1)自動的に棚下からの画像を収集・分析をすることにより、生産者が感覚的に把握していた生育状況を、より客観的なデータとして把握することが可能となる。
  2. (2)微気象データを活用した黒星病感染危険度情報や、棚下画像のAI生育解析結果をクラウド上で共有し、リモートで普及員から指導を受けられるほか、生産者同士の情報共有を可能とする。




3.コンソーシアム推進体制

ナシ生産に係る諸課題の解消に向け、千葉県を代表機関として、コンソーシアムを結成し、令和3年度から2年間、スマート農業技術の実証事業に取り組みます。コンソーシアムには農家や農業関連団体のほか、ICT、自動化技術、農業用ロボットなどの技術を持つ企業などが参加し、ほ場の環境データの取得と解析による予測技術、および省力化機械の導入に向けた実証を行います。


名称 役割及び責任
千葉県
農林総合研究センター
担い手支援課
東葛飾農業事務所
  • 実証全体の推進
  • 実証フィールドのとりまとめ
  • ホームページによる広報、普及指導員への研修による情報共有と現地への普及活動
有限会社ヤマニ果樹農園
  • スマート農業技術のほ場実証
  • 実証技術における経営データの収集
株式会社NTTデータ経営研究所
  • 事業全般の管理・統括
  • 軽労化の検証
  • ビジネスモデルの検討
株式会社NTTデータCCS
  • ナシの棚下から撮影した画像からAIが生育解析を行うシステムの開発
アイ・イート株式会社
  • ロボット作業車の開発
株式会社イーエスケイ
  • 病害虫防除ナビゲーションシステムの開発、改良
東日本電信電話株式会社
  • 微気象データを収集するためのセンサネットワークの構築、効率的なデータ収集方法の検証
市川市農業協同組合
  • 輸出に関するデータの取得、生産者との連絡調整及び実証技術への改良・開発及び普及に向けて助言
全国農業協同組合連合会
千葉県本部
  • 開発する実証技術への改良・開発および普及に向けての助言
千葉県果樹園芸組合連合会
なし部会
  • 実証に関する調査への協力、農家の意見のとりまとめ、普及フェーズでの広報など
市川市
  • 市川市のナシ生産に係るスマート農業の推進

本実証課題は、農林水産省「スマート農業技術の開発・実証プロジェクト(課題番号:果3C2リ、課題名:千葉県ナシ栽培におけるスマート農業技術の体系化に向けた技術開発及び実証)」(事業主体:国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構)の支援により取り組んでいます。



4.お問い合わせ先

ナシ及び農業技術に関する内容
千葉県農林総合研究センター
最重点プロジェクト研究室 桑田・鶴岡 Tel:043‐291‐9992 /果樹研究室 押田 Tel:043‐291‐9992
実証の全般的な内容
株式会社NTTデータ経営研究所
社会基盤事業本部
ライフ・バリュー・クリエイションユニット
新見、増田、伊東、久保
Tel:03-5213-4110
ロボット作業車に関する内容
アイ・イート株式会社 柿木・高橋
Tel: 028-662-3332
E-mail:info@ieat-fresh.com
微気象データ取得、連携に関する内容
東日本電信電話株式会社千葉事業部 企画部
広報担当 北島・木島
Tel:043-274-2129
E-mail:kouhou-chiba-gm@east.ntt.co.jp
防除支援システムによる適正防除に関する内容
①千葉県農林総合研究センター
最重点プロジェクト研究室 桑田・鶴岡
Tel:043‐291‐9992
②株式会社イーエスケイ
河野・古関
Tel:0438‐40‐5290
AI生育解析に関する内容
株式会社NTTデータCCS 竹本、日置
E-mail:info-agri@hml.nttdata-ccs.co.jp

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