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建築家・クリエイター アサノコウタ

アサノコウタ

二本松の空き店舗から世界へ発信する屋内の大地からの声

 地方の商店街が共通に抱える空き店舗の拡大に対応する方策として、行政や商工会議所などの活性化支援などにより、様々なコミュニティスペースが提案・運営されているなか、地域に定着し、継続的に運営されるものは少なく、2011年の震災以降、地震の被害と放射能汚染から、更に空き店舗化に拍車が掛かることが危惧されています。
 そんななか、空き店舗を活用した新しいコミュニティスペースを模索していた、二本松市のNPO法人「まちづくり二本松」の松本太さんらは、以前からイベントなどで協力し合っていたアサノさんと共に、2011年10月「屋内の公園」実行委員会を立ち上げます。
 「“屋内の大地”を始める切っ掛けは、僕自身が福島の子供達をバスで新潟へ連れて行き、新潟の自然に触れさせるワークショップを開いたことがあり、その時に見た子供達の喜んだ表情を、普段の日常の生活のなかでも見たいと思ったからです。人が他所へ移動するのではなく、汚染されていないものを屋内に集めて、そこで安心して子供達が遊ぶことができれば、ひとつのコミュニティスペースとして成立すると思いました。」
 空き店舗を利用して作られた「屋内の大地」には、赤松、桧、杉などの角材でできた「大地の躯体」と呼ぶ910×910mmの木枠が並べられ、その中へ「大地の素」と名付けた福岡県の土壌、鹿児島県屋久島の枯れ葉、佐賀県の貝殻、三重県伊勢神宮の銀杏、そして遠くボストンの落ち葉など、放射能に汚染されていない落ち葉や枝、植物、土壌などを入れて大地が作られ、そこで子供達が遊び、大人はそれを見守りながら会話を楽しむことで、情報交換のできる地域全体のコミュニティスペースとして機能しています。
 「最近は近所の子供達や親御さんが定期的に来て下さるようになり、常連さんも増えてきました。以前、8ヶ月の赤ちゃんを枯れ葉のベッドの中に埋もれさせ、8ヶ月になって初めて自然のものに直接触れさせることができたと喜ぶ、若いお母さんを拝見した時には、やはりこのプロジェクトをやってよかったと思いました。国内外を問わずいろいろなメディアからの取材も多く、取材をされることで、このプロジェクトが海外へ発信されることは、とてもいいことだと思います。様々な意見があることも承知しています。価値観の違う方へも発信されることで賛否両論の議論が起こることも、今の福島を忘れずに多くの人達で考え続けることだと理解し、間違いなくプロジェクトとしてはプラスだと思っています。」
 二本松市以外でも「屋内の大地」を楽しんでもらうために、週末のみの出張サービスも始まり、このプロジェクトから発信することで、この状況を多くの方に知ってもらい、考えてもらう機会を作れていることが嬉しいとアサノさんは話し、今後プロジェクトが発足して1年を過ぎて次のフェーズへ移行しても、その時々の状況に合わせて、今何を発信すべきかを的確に読み取って考え、“瞬発力”を持って、新しい活動の提案をしていきたいと話します。

取材後記

今回ご登場を頂いたのは、福島市の建築家・クリエイターのアサノコウタさん。SFCでメディアデザインやグラフィックデザイン、建築を学びながら古民家の研究を続け、地方である郷里の福島からのクリエイティブ活動が、都市よりもより新しいクリエイティブの可能性があると説く。コンセプトは「うつくしまふくしま」。福島に関わるクリエイティブの可能性を、常に現実のものとしてカタチにしている。
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