報道発表資料

平成11年11月9日

株式会社東京放送
日本電信電話株式会社
東日本電信電話株式会社
NTTコミュニケーションズ株式会社


TBSとNTTグループがHDTVライブ映像の共同伝送実験
「HD-WAVE」を実施

──幕張と横須賀を結び、「Inter BEE'99」会場にてライブ映像を中継──


 株式会社東京放送(以下TBS、東京都港区、代表取締役社長:砂原幸雄)、日本電信電話株式会社(以下NTT、東京都千代田区、代表取締役社長:宮津純一郎)、東日本電信電話株式会社(以下NTT東日本、東京都新宿区、代表取締役社長:井上秀一)、NTTコミュニケーションズ株式会社(以下NTT Com、東京都千代田区、代表取締役社長:鈴木正誠)の4社は、本年11月17日(水)〜19日(金)の3日間、幕張メッセ(千葉県千葉市)にて開催される「Inter BEE'99(国際放送機器展)*1」会場において、HDTVの公開伝送実験「HD-WAVE」を実施します。

 これは、世界に先駆けHDTV番組制作の基礎となる光/無線デジタル中継システムの技術検証を行うものです。

 期間中は、展示会場内(幕張メッセ)と映像発信地点(NTT横須賀研究開発センタ)との間を、NTTグループの光伝送サービス『ATMメガリンク*2 』と、TBSの無線システム『OFDM*3デジタルFPU (Field pick-up Unit:地上無線中継装置 )』の2系統でパラレルに結び、MPEG-2圧縮したHDTV映像の伝送実験を行います。


1.目的

 高品質なHDTV映像コンテンツを技術的な制約や混乱なく制作し、確実に視聴者のもとにお届けしていくために、HDTV映像に最適化したデジタル放送技術や機器の開発、通信事業者による高品質、大容量のデジタルHDTV映像コンテンツ中継配信用インフラの開発、整備が急務となっています。
 今回の実験は、TBS、NTT、NTT東日本、NTT Comの4社が、各々の事業分野で培った技術とノウハウを集結させ、HDTV映像伝送技術の総合的な実用検証を行うことを目的としています

2.実施内容

 NTT横須賀研究開発センタ(横須賀市)と「Inter BEE'99」会場である幕張メッセを、ATMメガリンクとOFDMデジタルFPUで結び、NTTが開発した世界最小、最軽量のポータブルHDエンコーダを使用してHDTV映像を会場内の複数モニターに実況中継します。
 具体的には、ATMメガリンクとOFDMデジタルFPUによる「伝送折り返し*4実験」、ATMメガリンクによる「双方向通信実験」及び「マルチキャスト*5実験」を、実際の番組放送と同様の中継スタイルを通じて実施します。
 なお、本実験における各社の作業分担は、TBSがHDTV番組制作及びOFDMデジタルFPU装置の実証、NTTがポータブルHDエンコーダの各種中継システムとの接続性の実証、NTT東日本とNTT ComがATMメガリンクによるデジタルHD映像伝送の技術評価及びネットワークサービスとしてマルチキャスト機能を試験提供した場合の技術評価を担当します。

3.実験の技術的ポイント

(1)世界最小、最軽量のポータブルHDエンコーダ
 「HD-WAVE」で使用するエンコーダは、試作段階ながら、NTTが独自に開発したMPEG-2ビデオエンコーダ用LSI「Super ENC」を9個並列連結したもので、世界最小サイズ(従来体積比約1/2〜1/4)を実現しています。また、低消費電力(従来品比約1/2)なのでDC12V電源動作が可能となり、機動力が要求される屋外中継での使用が可能となりました。
 本エンコーダは複数のLSIチップが分担して画像処理を行いますが、新開発の「マルチチップ間最適符号量配分制御法」により、高画質・高圧縮効率のエンコードを実現しました。

(2)安定した映像・音声伝送を可能にするOFDMデジタルFPU装置
 アナログFM方式に比べ電波の変動や障害に強く、安定した映像・音声の無線伝送を実現するのがTBSが開発したOFDMデジタルFPU装置です。
 本装置を利用することにより、例えばマラソン中継など建造物による電波障害が起きやすい移動中継でも、コース沿いの受信点の数を従来より減らしながら乱れのない映像が得られるなど、高品質なHDTVコンテンツの制作が可能となります。

(3)ATMメガリンクを利用したデジタルHD映像伝送とマルチキャスト映像分配
 本実験のインフラ面での基盤になるのが、高速・広帯域なNTTグループの光伝送サービス『ATMメガリンク』です。NTT横須賀研究開発センタで撮影された映像をMPEG-2 HDTVエンコーダによりデジタル化し、ATMメガリンクでNTT幕張ビルへ伝送します。
 そこでATM-SLT(ATM Subscriber Line Terminal)というノード装置*6でセルコピーした後マルチキャストでデコーダ等の機器に分配して映像信号に戻します。こうして、幕張メッセ内の複数のモニターに表示します。

4.今後の予定

 Inter BEE'99での実験後も、引き続きフィールド実験を行っていきます。


<用語解説>
*1Inter BEE

 主催は社団法人日本電子機械工業会。国内最大の放送機材関連の展示会。主な出展者は放送機器メーカ、プロ用音響機器メーカなど。

*2ATMメガリンク

 従来の伝送方式(同期式)とは異なるATM伝送方式(非同期式)を採用したNTTグループの通信サービス。音声、映像などのさまざまな情報を「セル」と呼ばれる53Byteのブロックに分割して転送することにより、高速・広帯域の通信ニーズに対応することが可能。

*3OFDM (Orthogonal Frequency Division Multiplexing)

 移動伝送に強く、周波数の有効利用が可能なデジタル変調方式の無線伝送技術。建物等の反射によるゴースト妨害や電波の変動がある場合でも、アナログFM方式に比べ安定した伝送が可能。

*4伝送折り返し

 送信側から送られてきた情報を受信側でそのまま送信側に送り出すこと。今回の実験では、横須賀から幕張はOFDMデジタルFPUで送り、幕張から横須賀は、ATMメガリンクで折り返す。

*5マルチキャスト

 1対多の形式での通信技術。複数の受信者に同一の情報を送信する場合、途中まで同経 路ならそこまでは1つの情報を送り、分岐点で複製をつくって伝送することにより、ネッ トワーク負荷や伝送コストの低減が図れる。

*6ノード装置

 ネットワーク内で、ネットワークを管理する機能、交換する機能、伝送する機能を持つ装置のことをいう。ATM-SLTはATMネットワークのアクセス系に設置される加入者伝送路に向けたNTTグループ内の最終位置にある装置。




ポータブルHDエンコーダ


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