2008年12月9日

国立大学法人北海道大学
日本電信電話株式会社
東日本電信電話株式会社


北海道大学とNTT、NTT東日本が連携プログラム協定を締結
―情報通信分野等の研究を幅広く推進し、
地域に根ざしたビジネス展開を目指し組織的に連携―


 国立大学法人北海道大学(北海道札幌市北区、総長:佐伯 浩、以下「北海道大学」)と日本電信電話株式会社(東京都千代田区、代表取締役社長:三浦 惺、以下「NTT」)と東日本電信電話株式会社(東京都新宿区、代表取締役社長:江部 努、以下「NTT東日本」)は、我が国の科学技術の向上及び人材の育成に資することを目的とし、技術・人材・設備といった世界で屈指の研究開発リソースの効率的かつ効果的な活用を通じて、情報科学分野およびナノテクノロジー分野等において世界をリードする技術革新を持続的に創出することを目標に、本日、連携プログラムの協定を締結いたしました。


【本連携の背景】
 北海道大学は大学院に重点を置く基幹総合大学であり、情報科学分野では、ハードウェアからソフトウェアまで、また、ナノテクノロジーやバイオテクノロジーの分野までをも視野に入れた異分野の融合を推進していることに特色があります。21世紀COEプログラム※1を通じて達成された、知識メディア・量子エレクトロニクス・知的通信といった異分野融合の成果を基に、現在、グローバルCOEプログラム「知の創出を支える知識情報科学の新展開」※2を推進しています。
  一方、NTTは、安心・安全で便利なブロードバンド・ユビキタス社会の発展を支える高度なネットワーク上での新サービスを実現する基盤技術を中心に、将来を見据えた基礎技術の研究開発まで、幅広い分野での研究開発を積極的に進めております。特に、次世代ネットワーク(NGN)については、IPネットワークの品質や安全確保に向け取り組み、世界に先駆けてNGNの商用化を実現いたしました。
 また、NTT東日本は、東日本における地域通信事業会社として、良質かつ安定的なユニバーサルサービスの提供や光・IP時代における新しいサービス・商品の開発・提供に取り組んでいます。
 北海道大学とNTTグループは、従来から、ブロードバンド社会を支える基盤技術に関する個別の共同研究を実施してきましたが、本協定締結により、従来に比べて組織横断的な共同研究をよりスピーディに実施できるようになります。


【共同研究分野】
 既に連携の実績のあるナノテクノロジー分野において、超低消費電力が期待される単電子デバイス※3の研究や電界効果スピントランジスタの実現に向けて鍵となる電子スピン制御※4の研究などを加速させる一方、3者の特徴を活かし、次世代半導体技術の開発や光通信・無線通信の高速化の研究開発を共同して行います。また、知識メディアとしてのライフログ※5など情報科学技術分野においても、人々の生活環境をより豊かにする手法やサービスに関する研究開発も実施する計画です。


【本連携の仕組み】
 連携成果の実用化を視野に入れながら、情報通信分野において多様化する社会ニーズに対応するべく、「連携プログラム協議会」を設置します。本協議会では、研究テーマのマッチングや新規テーマの発掘、そして、骨太な研究テーマ企画を立案していきます。
 特に、本連携プログラム協定では、従来から繋がりのある共同研究を一層強化・緊密化するとともに、従来北海道大学とNTTグループ間で連携が行われていなかった研究分野、あるいは、複数研究所・組織に跨る分野融合的な連携の創出と活性化についても取り組みます。また、研究成果の一層の実用化推進に取り組むとともに、大学院生・ポスドク等が共同研究・インターンシップに参加する機会を提供するなどそれぞれの強みを活かす相互補完的な人材育成活動にも取り組んでいきます。


(用語解説)
※1 21世紀COEプログラム:
「大学の構造改革の方針」に基づき、平成14年度から文部科学省の事業(研究拠点形成費等補助金)として措置されたもの。わが国の大学に世界最高水準の研究教育拠点を形成し、研究水準の向上と世界をリードする創造的な人材育成を図り、国際競争力のある大学づくりを推進することを目的としている。

※2   グローバルCOEプログラム「知の創出を支える知識情報科学の新展開」:
平成14年度から文部科学省において開始された「21世紀COEプログラム」の評価・検証を踏まえ、平成19年度から開始されたプログラム。北海道大学情報科学研究科がもつハードからソフト、応用を含む情報科学の統合的な教育研究拠点としての特質を活かし、平均年齢44歳の若手・中堅教員からなる事業推進担当者を中心に、先の21世紀COEプログラムの成果を発展させ、研究科の総力をあげて長期的な視野で次世代の情報科学を追及するものである。このプログラムでは、「知識連携」と「知識発見」を核として、知識創出のための次世代情報技術の世界的研究拠点を確立することを目標としている。

※3   単電子デバイス:
電子1個で電流スイッチが可能となる単電子トランジスタなど、電子1個によるデバイス制御や電子1個1個の操作や検出が可能となる電子デバイス。超低消費電力回路や高感度・高精度デバイスへの応用が期待されている。ナノテクノロジーを駆使して作製した極微小構造において、電子1個の電荷量による帯電エネルギーが熱揺らぎのエネルギーより大きくなることを利用している。

※4   電子スピン制御:
電子は、プラスやマイナスの電気という意味での「電荷」と共に、量子力学的な「スピン」を有している。本技術は、従来電子デバイスで使われてきた「クーロン力」(「電荷」に働く力)に代わって、これまで制御することの難しかった「スピン軌道相互作用/ゼーマン相互作用」(「スピン」に働く力)を用いて「電子スピン」を直接制御する最新技術である。ナノテクノロジー技術の発展によりこれらの力の局所的な制御が可能となったことが近年のブレークスルーに繋がった。「電子スピン制御」は、電子の量子力学的な状態である「波動関数の重ね合わせ状態」を実現/制御するために非常に重要な技術である。この技術の発展確立により、(1)電子スピンを用いた電界効果スピントランジスタなどの新機能デバイスの実現、(2)量子コンピューターの基礎となる電子スピン量子ビットの完全制御、(3)非磁性半導体に磁性を持たせることによる新たな磁気効果デバイス/磁気センサーの実現、等が期待されている。

※5   ライフログ:
人の行為をデジタル化して記録に残すこと。それを追体験することで、人間は過去を分析しながら行動できるようになり、現在、マーケティングの世界の活用が期待されている研究開発分野である。



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