平成16年10月22日
報道発表資料
東日本電信電話株式会社
NTTアドバンステクノロジ株式会社


高機能・高精度な「雷サージ波形記録器」の開発について

〜小型・軽量かつ低消費電力で設備のどこにでも容易に設置可能〜


 東日本電信電話株式会社(東京都新宿区、代表取締役社長:三浦 惺、以下 NTT東日本)は、通信設備や電力設備等への落雷により発生する雷サージ※1を高精度に測定・記録する測定器「雷サージ波形記録器」を開発しました。
 本機器は小型・軽量化かつ低消費電力を実現し、様々な場所へ容易に設置することが可能です。また、雷の大きさ・継続時間を高精度に測定・記録できるため、収集したデータから雷の侵入経路と故障箇所との因果関係を明らかにし、今後の雷防護対策に役立てることが可能です。

 NTTアドバンステクノロジ株式会社(東京都新宿区、代表取締役社長:石川 宏、以下 NTT−AT)は、EMC※2技術の研究支援や機器開発の実績による豊富な技術経験をもとに、NTT東日本が開発した「雷サージ波形記録器」を平成16年11月1日(月)より販売開始します。

※1 雷サージ
 落雷等により一時的に発生する異常電圧です。電子機器等へ影響を与えることがあります。
※2 EMC(ElectroMagnetic Compatibility)
 装置またはシステムが他の装置に電磁妨害を与えず、且つ電磁環境下においてもそれぞれの装置またはシステムが満足に機能するように両立させることです。


1.本機器の概要
 本機器は、雷の進入が推定される様々な経路に予め設置して、落雷によって鉄塔(アンテナ)、電力線、通信線等から設備に侵入する雷サージ波形を高精度に測定・記録する測定器です。

<本機器の主な特長>
(1) ダイナミックレンジ※3が60dB以上あり、大小さまざまな雷サージ波形を高精度で測定・記録することが可能です。
(2) NTT東日本の独自技術であるORトリガ機能※4により複数の記録器を連携・同期させてサージ波形を測定・記録できるため、確実なデータ収集が可能です。
(3) 小型(幅94×奥行き150×高さ55mm)、軽量(530g)、低消費電力(1.2W以下)を実現し、雷の進入が推定される様々な経路に設置することが可能です。
(4) 内部電池により、停電時においても最低10時間は測定・記録を持続することができます。
(5) 500波形以上のデータをコンパクトフラッシュメモリに記録できるため、付属ソフトを用いてパソコンで波形描画や印刷することが可能です。
(6) 雷サージの他にインバータノイズ※5や単発ノイズ※6などの低周波のノイズ測定ができます。


2.販売価格
 約30万円(税別)
オプションの構成等により価格が異なる場合がありますので、詳細はNTT−ATまでお問い合わせください。


3.本機器の活用法
(1) 雷害が多発している設備にとって最適な雷防護対策を見いだす設計ツールとして活用できます。
(2) 既に実施されている雷防護対策の効果や限界等の評価ツールとして活用できます。
(3) 故障原因が雷によるものか低周波ノイズによるものかといった切り分けの実施を目的とした長期間の監視ツールとして活用できます。


4.想定されるお客様
 雷研究機関、雷観測会社、鉄道・電力会社、損害保険会社、NTTグループ会社等で幅広くご利用いただけることを想定しています。


【参考】本機器の開発背景

 近年、情報通信装置の電子化・低電力化等が進み、イミュニティレベル※7が低下しています。また、雷に対する耐力も低下しており、雷故障を低減する適切な雷対策が求められています。そのためには、装置に侵入する雷サージの侵入経路・波形・大きさや設備内での雷サージ電流(電圧)の振る舞い等と装置故障との因果関係を明らかにし、雷に対する設備の耐力を向上させる等の効果的な対策を実施することが必要です。
 しかし、従来、落雷と設備故障との関係を示すデータを得るためには、大がかりな測定器や無停電電源を設置するとともに、ケーブルを張り巡らして観測システムを構成せざるを得なく、手軽に雷観測を実施することが困難でした。そのため、小型・軽量かつ無停電電源が不要であり、装置内、装置上、屋根裏、床下などへ「ねずみ取り」のように場所を選ぶことなく容易に設置でき、なおかつ精度の高い雷サージ波形を測定・記録できる機器が求められていました。
 本機器は上記課題の解決を目的として開発されました。なお、NTT東日本では今後、本機器を用いて重要設備における雷観測を実施し、雷害メカニズムを解明するとともに有効な雷害対策を行い、ユーザサービスの向上に活かしていきます。



※3 ダイナミックレンジ
 信号の再現能力を表す数値で、最小値と最大値の比率をdB(デシベル)単位で表します。ダイナミックレンジの値は、機器がどれだけ細かい信号まで再現できるかを示し、実質的に利用できる分解能の高さを意味します。
※4 ORトリガ機能
 オシロスコープ等で複数チャンネルの入力がある場合、その中のいずれか一つの入力から信号が入ると全てのチャンネルで波形取り込みの起動がかかる機能のことです。本機器の場合、複数の機器を設置してトリガケーブルを接続しておき、いずれかの機器に信号が入ると全機器が波形取り込み動作に入るようになっています。
※5 インバータノイズ
 スイッチング周波数が数10kHzから数百kHzで動作している整流器から発生するノイズです。このノイズが他の機器に影響を与えることがあります。
※6 単発ノイズ
 常時発せられるノイズに対し、単発ノイズは一過性のノイズを指します。その発生頻度も1日に1回または1ヶ月に1回のように、稀にしか発生しないノイズです。このようなノイズが電子機器に害を与えている場合、探索が困難であり、長期の観測が必要になります。
※7 イミュニティレベル(電磁耐性レベル) 電磁波や雷の影響からどれだけ耐えられるかのレベルです。



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