1. 業績の概況

 当期におけるわが国経済は、雇用情勢は依然として厳しいものの、個人消費は持ち直しの動きを見せるとともに、企業収益は改善し、輸出や設備投資が増加するなど、景気回復の兆しが見られました。
 情報通信分野におきましては、大容量の情報を高速で伝達する光アクセスサービスを中心としたブロードバンドサービスが急速に普及・拡大するなど、本格的な「ブロードバンド時代」の到来を迎えました。ADSL市場では、さらなる高速化が進展するとともに、低廉な価格での顧客獲得競争が激化しており、また、光アクセスサービス市場においても、需要が着実に拡大していくなか、電力系事業者等を含めた厳しい競争が展開されてまいりました。一方では、IP電話サービスの利用ニーズが高まり、各事業者がIP電話サービスの提供を開始するなど、当社を取り巻く事業環境は極めて厳しいものとなりました。
 このような事業環境のもと、当社は、「真のお客さま主導企業」を事業運営の基本とし、「構造改革」による経営効率化の実効性を高めながらブロードバンドサービスを積極的に展開していくことにより、新たな収益源の開拓と財務基盤の確立に努めてまいりました。あわせて、昨年7月に政府IT戦略本部で決定された「e-Japan戦略II」に対しても積極的に取り組んでまいりました。

 当期における主な取り組みは、次のとおりであります。
 まず、急速に拡大するブロードバンド市場におきましては、お客様ニーズに対応したサービスの拡充と料金の低廉化に努めてまいりました。ADSLサービスにおきましては、昨年7月に新たに下り最大速度概ね24Mb/s、さらに昨年12月には、下り最大速度概ね40Mb/sへの高速化を実現いたしました。また、企業向けデータ伝送サービスとして、低速から高速まで豊富な帯域から選択し、県内均一料金で経済的に拠点間ネットワークを構築できる「フラットイーサ」の提供を開始しました。
 このほか、IP電話に対するニーズに応えるため、「法人向けIP電話サービス」、並びに固定電話、公衆電話からIP電話(050番号)への通話サービスを開始いたしました。また、固定電話から携帯電話への通信につきましても、従来、携帯電話事業者が提供してきた料金より低廉な料金でご利用いただける通話サービスを本年4月から開始することとしました。
 一方、ブロードバンドコンテンツの充実と普及・拡大を図るため、国内外他企業とのアライアンスにより「DisneyBB on フレッツ」などのコンテンツを提供したほか、オンラインゲーム「GAME on フレッツ」のトライアル提供や新作映画公開にあわせた映画舞台挨拶のブロードバンドライブ配信等を実施いたしました。
 さらに、お客様の利便性向上を図るため、「Bフレッツ ニューファミリータイプ」や「県間IP通信網サービス」の提供エリアを拡大しました。また、フレッツ・サービスを安心してご利用いただけるよう、24時間365日故障修理対応を行うサービスである「アドバンスドサポート」の提供を開始するとともに、IPv6(次世代インターネットプロトコル)通信が可能となる「フレッツ・ドットネット」の提供を開始しました。
 また、Bフレッツ(「ニューファミリータイプ」、「マンションタイプ」)の月額利用料を値下げしたほか、Bフレッツ工事費半額割引キャンペーンを実施するとともに、フレッツ・ADSLの月額利用料の無料キャンペーン等を実施し、お客様がより気軽に利用いただけるよう料金の低廉化にも努めてまいりました。このほか、最新技術を活用した著作権保護技術、大容量配信サービスなどの実用化、利用実験にも積極的に取り組んでまいりました。
 ご利用の多い法人企業につきましては、「Team m@rketing solution」(チーム・マーケティング・ソリューション)というビジネスコンセプトのもと、ビジネスユーザ向け光アクセスサービスおよび最先端のデータセンター技術等を駆使し、急速に高度化、多様化するお客様ニーズに的確に対応するトータルなソリューションビジネスを展開したほか、法人営業本部「e-Japan推進部」および各支店法人営業部「e-Japan推進室」を中心に、政府「e−Japan戦略II」に対応した電子申請システム、電子入札システム、電子投票システムなどをはじめとする各種ソリューションについても積極的に取り組んでまいりました。
 また、新しい事業分野として、株式会社エヌ・ティ・ティ ファシリティーズ、並びに株式会社荏原製作所と共同で出資した「エヌ・ティ・ティ ジーピー・エコ株式会社」を昨年4月に設立し、環境ビジネスにも取り組んでおります。
 経営の合理化につきましては、昨年4月に支店営業企画業務、支店法人営業業務の一部、並びに本社コストセンタから設備構築・サービス運営等にかかわるオペレーション業務などを「構造改革」に伴い設立した県域子会社(※)に移行するとともに、本社コストセンタの一部を本社スタッフ部門等に統合するなどの本社組織の見直しを行いました。また、これにあわせ、「株式会社エヌ・ティ・ティ エムイー」の事業・ミッションを法人向け事業に特化させるなどの見直しも行いました。

県域子会社:都道県単位に設置した「株式会社エヌ・ティ・ティ サービス〔都道県名〕」、「株式会社エヌ・ティ・ティ・ビジネスアソシエ〔都道県名〕」、「株式会社エヌ・ティ・ティ エムイー〔都道県名・地方名〕」を商号とする各社


 このほか、コンプライアンス(法令遵守)の確立が企業の存続を左右する重要な課題であると認識し、平成14年11月にNTTグループ全体の取り組みとして日本電信電話株式会社が中心となり策定した「NTTグループ企業倫理憲章」に基づき、全役員・全社員に対する社内教育に努めるなど、企業倫理の確立に向けた取り組みを推進するとともに、特に、個人情報保護につきましては、一層の徹底を図ってまいりました。
 環境保全への取り組みにつきましても、平成11年12月に制定した「NTT東日本地球環境憲章」に基づき、紙資源対策、地球温暖化対策、廃棄物対策など、環境負荷軽減を継続して推進するとともに、情報通信のライフサイクルアセスメント(LCA)を実施したほか、環境にやさしい鋼管製電柱(エコ電柱)を開発・導入しました。さらに、全支店においてISO14001認証を取得し、「環境情報流通システム」による環境情報の収集・活用とともに「NTT東日本環境報告書2003」を発行するなど、地球環境保護の推進に努めてまいりました。

 以上の結果、当期の営業収益は2兆2,671億円(前期比3.6%減)、経常利益は978億円(前期比54.5%増)、当期純利益は579億円(前期は当期純利益30億円)となりました。


[戻る]