平成15年10月23日
報道発表資料
慶應義塾大学
東日本電信電話株式会社
日本電信電話株式会社


21世紀知的社会基盤の実現に向けた
広帯域ネットワーク共同実験について
−映画一本を1秒で送受信可能にする世界最高速43Gbit/s実験回線の運用を開始−


 慶應義塾大学(東京都港区、塾長:安西祐一郎、以下慶應大学)、東日本電信電話株式会社(東京都新宿区、代表取締役社長:三浦 惺、以下NTT東日本)、日本電信電話株式会社(東京都千代田区、代表取締役社長:和田紀夫、以下NTT)は、慶應大学を実フィールドとして世界最高速の43Gbit/s超高速実験ネットワークの運用を開始します。これは、本年7月15日(火)に共同実験に関する協定書の調印を行い、超高速実験ネットワーク等の実験システムの構築を進めて参りましたが、この度実験参加者の準備が完了したため、10月24日(金)から運用を開始するものです。本共同実験では、今回構築した超高速実験ネットワーク等の実験システムを用い、慶應大学が進める「文部科学省21世紀COEプログラム」“次世代メディア・知的社会基盤”をはじめ様々なプロジェクトで検討されている次世代アプリケーションを運用・評価することにより、日本の未来社会で必要となるブロードバンドアプリケーションをサポート可能な、次世代ネットワークの実現を目指します。


1. 背景
 インターネットの本格的な普及に伴い、FTTH、xDSLなどによるアクセス網のブロードバンド化が進んでいますが、今後は映像コンテンツのストリーミング配信、ピア・ツー・ピア(P2P)通信、放送番組のインターネット配信、大容量ファイル転送システムなど、ネットワーク大容量化を前提としたアプリケーション技術の普及によって、飛躍的なトラヒックの増大と多様化が予想されます。一方、基幹光ネットワークは“1本のファイバ当りテラビット”以上の大容量化が可能となっていますが、大容量化に加え、種々のインタフェースプロトコルに対しても柔軟に対応可能なシステムの実現が求められるようになっています。
 このような状況の下、将来の知的社会基盤を実現するために様々な大容量コンテンツや広帯域アプリケーション開発を行う慶應大学は、NTT東日本、NTT未来ねっと研究所と共同で、ブロードバンド時代に必要とされるこれらの大容量ネットワークの要求条件を明らかにし、大容量ネットワークの長期運用によるネットワーク品質評価及び、ネットワークシステム運用面での課題抽出を行います。
 本共同実験での評価・課題抽出を通して、今後の知的社会基盤に求められる条件を明らかにする事で、超高速ネットワークの特性を最大限に利用した新たなブロードバンドアプリケーションの創出や、インターネット系の超高速・大容量バックボーンネットワークやデータセンタ間など、高速情報転送網への適用を目指したシステム開発が進み、将来の日本社会で求められる知的社会基盤の実現に役立つものと期待されます。


2. 実験の概要
 慶應大学の矢上キャンパス並びに湘南藤沢キャンパスに、NTT未来ねっと研究所が開発した43Gbit/sOTN多重化装置を設置し、その間を43Gbit/s光信号を伝送可能な光中継伝送路で結びます。矢上キャンパスと湘南藤沢キャンパス間では、慶應大学が保有する大容量コンテンツや次世代アプリケーションを用いたデータ伝送を行います。これにより、将来のデータセントリックな通信環境を実現し、接続信頼性の検証、マルチプロトコル伝送評価、ネットワーク監視・制御に関する評価、長期運用における安定性の評価等を行います。

(1)実験期間  平成15年10月 〜 平成17年3月

(2)実験システムの構成  別紙資料による。


3.参加者の役割
(1)慶應大学
 矢上キャンパス並びに湘南藤沢キャンパスのフィールドを提供すると共に、大容量コンテンツ配信環境の整備や高精細コンテンツ配信アプリケーションの開発、広域分散IPストレージを構築し、超高速実験ネットワーク上での実用性やデータ伝送品質等に関して共同で評価を行ないます。また、大容量・低遅延ネットワークに適したトランスポートプロトコルの開発・評価を行います。また、「文部科学省21世紀COEプログラム」で実施している先進的な実証実験を通じて、知的社会基盤アーキテクチャーに対する研究を行います。

(2)NTT東日本
 43Gbit/s超高速実験ネットワークの構築にあたり、光中継伝送路の設計、構築、品質維持並びに、実フィールドとなる慶應大学キャンパスバックボーンネットワークへの43Gbit/sOTN多重化装置接続に伴うシステムインテグレーションを行います。
 実験期間中は、実フィールド運用における「43Gbit/sOTN多重化装置間」での品質保持を行うとともに、長期運用を前提としたメンテナンス・遠隔監視の適用性などを評価し、将来のデータセントリックな通信環境に求められるサービス品質設定並びに、システムインテグレーションのノウハウ蓄積を行います。

(3)NTT未来ねっと研究所
 波長多重光ネットワークの新国際標準を適用した、世界初の43Gbit/sOTN多重化伝送実験システムを提供します。本実験で用いる43Gbit/sシステムは、NTT提案標準化の光ネットワークの新国際標準OTN(*1)に準拠しており、誤り訂正符号を用いることにより、32チャンネルのGbE信号を、そのまま信号変換をせずに高品質に伝送することができます。さらに、NTTが開発した帯域圧縮符号(CS-RZ符号*2)と、本符号のトーン変調による自動分散等化機能を適用することにより、高密度波長多重アップグレードが可能となり、テラビットクラスのデータ信号を波長多重長距離伝送することが可能となります。本共同実験では、実フィールドでの長期運用における安定化試験を行い、各種特性データの蓄積及びシステム設計の妥当性など伝送システム運用の検証、評価を行います。



<用語解説>
*1:OTN
Optical Transport Networkの略。NTT提案標準化の波長多重を用いた光ネットワーク。新国際標準ITU−T G.709勧告に準拠。

*2:CS-RZ符号
CS-RZ符号(Carrier suppressed Return to Zero 符号)。光ファイバ伝送路の伝送劣化の最重要課題である波長分散の自動補償技術を容易に実現可能とし、高密度波長多重長距離伝送に適した光伝送符号。



別紙資料 共同実験システム構成図


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