1. 業 績 の 概 況

 当期におけるわが国経済は、世界経済の減速を背景として、輸出や生産が減少し、設備投資や企業収益も減少に転じるとともに、個人消費の低迷が続くなど、期末にかけて一部に景気底入れの動きがみられるものの、景気悪化による厳しい状況が続きました。
 情報通信分野においては、情報通信技術の飛躍的な進展を背景として、インターネットや移動体通信の急速な普及・拡大が進み、市場構造が急激に変化するなか、競争激化による伝統的メガキャリアの凋落や通信事業者の経営破たんなど、世界的な「IT不況」が進行しました。国内においては、外資系通信事業者の積極的な進出や、VoIPなど最新の技術を活用したベンチャー企業等の新規参入が進み、地域通信から長距離・国際通信に至るまで、激しい競争が展開されています。地域通信市場においては、中継系事業者の市内通話市場への本格参入や、IP電話サービスを提供する新規事業者等の参入により、料金値下げや顧客獲得競争が激化するとともに、ブロードバンド・アクセス網分野における電力会社の直接参入や新規事業者の相次ぐ参入により、DSL、光ファイバ、無線、CATV事業者等の激しい競争が急速に進展しています。
 このような市場構造の変化や厳しい事業環境において、当社は、地域のお客様に密着した「サービス事業会社」として、「安く」、「使い易く」、「信頼のある」魅力的なサービスをタイムリーに提供することを事業運営の基本として、新たな収益源の開拓と経営体力の強化に努めることによって、電話から情報流通への事業構造の転換を図るとともに、国家的重点課題となっている「e−Japan戦略」の推進に積極的に貢献していくため、さまざまな取り組みを実施しました。
 まず、急速にブロードバンド化や低廉化が進むインターネットのアクセス回線に対するお客様のニーズに対応して、定額インターネット・アクセスサービスの拡充および料金値下げに努めました。具体的には、現在提供中の「フレッツ・ISDN」、「フレッツ・ADSL」の提供エリアの拡大と料金値下げを実施するとともに、昨年12月には「フレッツ・ADSL」について、最大8 Mbpsのタイプを追加しました。また、一昨年12月に試験提供していた「光・IP通信網サービス(仮称)」を昨年8月から「Bフレッツ」として本格提供を開始するとともに、光サービスの利用拡大に向けて料金の低廉化とサービスメニューの拡充に努めました。さらに、これらフレッツ・アクセスサービスをご利用のお客様に対し、地域IP網上に、コンテンツ配信可能な環境を提供する「フレッツ・オンデマンド」の提供を昨年11月に開始するとともに、「フレッツ・ISDN」、「フレッツ・ADSL」のマイラインプラスとのセット割引や、「フレッツ・ADSL」に期間限定の特別料金を設定するなど、サービスの充実に努めました。
 これらに加えて、家庭の電話から簡単・便利・安価にインターネット上の情報検索やメールの送受信ができる「Lモード」サービスの提供を昨年6月に開始し、ディジタルデバイドの解消やインターネット利用者の裾野拡大に努めました。
 また、優先接続制度の導入に対応して、昨年5月の「マイライン(電話会社選択サービス)」・「マイラインプラス(電話会社固定サービス)」の提供開始にあたって、昨年1月の市内通話料金の値下げに続き、昨年5月にさらなる市内通話料金の値下げと割引サービスの拡充等を実施し、お客様の利便性向上とマイラインプラスの登録獲得に向けた積極的な取り組みを全社を挙げて推進しました。
 このほか、ブロードバンド時代のリッチコンテンツの配信や多彩なアプリケーションを提供するため、昨年3月から開始した、光ファイバと高速無線技術(AWA)を利用したパーソナル・ワイヤレス・ブロードバンド「バイポータブル」の実験を昨年8月末まで実施するとともに、光ファイバを利用した本格的な超高速ブロードバンドサービスや光サービス向けのコンテンツ需要の急速な拡大に対応するため、新しい技術の開発やアプリケーション等の検証を目的として、インテル株式会社、日本ヒューレット・パッカード株式会社と共同で昨年9月に光サービス向けコンテンツ配信トライアルを開始しました。
 また、平成12年度に導入された長期増分費用方式に基づき、引き続き事業者間接続料金の引き下げを行うとともに、当社が保有する光ファイバの情報開示や低廉な料金による接続を開始するなど、公正競争の確保に努めました。
 次に、法人向けの営業につきましては、「チーム・マーケティング・ソリューション」というコンセプトのもと、お客様とのチームコラボレーションを通して、ビジネスユーザ向け光アクセスサービスや最先端のデータセンタ技術等を活用した、先進的かつ効率的な情報流通ネットワークの構築によるトータルなソリューションを提供するとともに、急速に進展するブロードバンド時代において高度化・多様化するお客様ニーズに機動的に対応するため、昨年12月に法人営業本部の組織再編成を行いました。具体的には、データセンタを活用したプラットフォームビジネスの展開、高速光ネットワーク向けプロダクトの開発・営業およびIP・ブロードバンド市場における先進的ソリューションの提供等を目的とした機能別体制を構築し、営業力の強化を図りました。
 また、ブロードバンド時代のデータセンタに対するASP、ECビジネスサポートなど、高レイヤのサービスを含めたフルアウトソーシングニーズに迅速に対応し、当社との協業による競争力確保を目的として、「エヌ・ティ・ティ・ビズリンク株式会社」を昨年7月に設立したほか、テレビ放送事業者によるブロードバンド時代に向けた映像コンテンツ流通の事業化検討を行うため、一昨年9月に日本テレビ放送網株式会社等と設立した企画会社を「株式会社ビーバット」として昨年9月に事業会社化しました。
 このほか、お客様サービスの向上につきましては、インターネットを利用した新たなビリングサービス「@ビリング」の提供を昨年12月に開始するなど、インターネットの普及・高度化を背景とした、お客様利便性のさらなる向上に努めました。
 経営の合理化につきましては、市場構造の変化や厳しい事業環境に対応できる経営基盤の確立および事業構造の転換に向け、「中期経営改善施策」を着実に実行するため、平成12年度に引き続き、営業拠点の統廃合や本社・間接部門のスリム化、グループ各社への出向・転籍等による大規模な人員再配置、コスト・リダクションの一層の推進による設備投資の削減、新たな希望退職の追加実施など、全社をあげて取り組んでいます。さらには、急激に進展する市場構造や競争環境の変化による極めて厳しい事業環境を踏まえ、経営基盤の確立と将来の事業発展に向け、事業の抜本的な「構造改革」を図ることとし、「新たな業務運営形態」の実施を決定しました。具体的には、IP・ブロードバンド事業の拡大に向け、当社は、企画戦略・グループマネジメント、お客様へのサービス提供責任等に特化し、地域密着型の営業やオペレーション業務を担う新しいアウトソーシング会社を都道県単位に設置するとともに、51歳以上の社員に対する退職・再雇用の導入による雇用形態の多様化により、業務の抜本的アウトソーシングと人的コストの低減を図ることとしています。なお、「新たな業務運営形態」への移行につきましては、当社が100%出資し、販売・受付業務等を運営する「株式会社エヌ・ティ・ティ サービス各社(※1)」と、グループ各社との共同出資および既存会社の株式買取等により、設備オペレーション等を運営する「株式会社エヌ・ティ・ティ エムイー各社(※1)」、ならびに共通業務等を運営する「株式会社エヌ・ティ・ティ・ビジネスアソシエ各社(※1)」の計51社を含め、5月の業務開始(※2)に向けて準備を進めました。
 環境保全への取り組みにつきましては、平成11年12月に制定した「NTT東日本地球環境憲章」に基づき、引き続き、紙資源対策、地球温暖化対策、廃棄物対策など、環境負荷軽減を推進するとともに、情報通信のライフサイクルアセスメント(LCA)の実施、環境負荷の低い通信機器への環境ラベル「ダイナミックエコ」の表示、環境会計の本格的導入および「NTT東日本環境報告書2001」の発行など地球環境保護に対する企業責任の遂行に努めました。

※1  各社:都道県単位に設置し、各社共通の名称+都道県名を商号とした17社
※2  新たな業務運営形態の開始にともなう退職・再雇用等により、平成14年5月1日、約2.7万人が当社より各アウトソーシング会社(51社)へ移行しました。(既存子会社からの移行を含めると約4.5万人)

 以上の結果、当期の営業収益は2兆5,736億円(前期比7.9%減)、経常利益は75億円(前期比46.9%減)となりました。
 なお、特別損失として、事業構造改革費用など、3,272億円を計上したことにより、1,867億円の当期損失(前期は当期利益200億円)となりました。


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