平成14年4月24日
東日本電信電話株式会社
西日本電信電話株式会社


「電気通信事業法等の一部を改正する法律(平成13年法律第62号)の一部を施行するための政省令(ユニバーサルサービス関連)」に対する意見


 今回、ユニバーサルサービス基金を導入する目的は、例えば都市部等のみに限定した地域毎の参入が認められている中で、マイライン等による競争が既に進展し、今後さらに加速していく状況の下、不採算地域におけるユニバーサルサービスの安定的な提供を図るとともに、競争条件の中立性を確保することと理解しております。


 しかしながら、今回の政省令案は、基金導入の目的に照らし、また、諸外国の基金制度と比較してみても、以下の点において極めて問題であり、基金の実効性が全く期待できないことから、NTT東西としては適格事業者の申請をする意味がなく、また、今回の政省令案による基金制度では、ユニバーサルサービスの安定的な提供が担保されたとは到底言えないものと考えます。
 したがって、NTT東西としては、実効性のある基金制度とするよう今回の政省令案を見直す必要があると考えます。


【政省令案の問題点】

(1)

 採算地域と不採算地域の相殺による内部相互補助を前提とした算定方式は、「採算地域と不採算地域双方を提供する適格事業者」と「採算地域のみを提供する事業者」との間で競争上の不平等を生じさせることとなり、公正な競争を実現するための制度となっていない。
 なお、諸外国においても当該方式を採用している例はない。

(2)

 基金の算定にあたって、交換機等設備費用については長期増分費用モデルを採用している上に、営業関連費用については販売費等の除外により大幅に費用を圧縮しているにもかかわらず、収入については一部しか調整しないことによって、ユニバーサルサービスに必要な純費用が過少に算定されている。
 このような算定方式は、ユニバーサルサービスを維持しつつ、ユーザニーズに応え競争への対応を行っているという現実のサービス提供・企業運営の実態とはかけ離れた仕組みとなっている。
 また、販売費等の控除について諸外国の例をみた場合、「費用−収入方式」を採用している仏国では、費用から販売費等を除外すると収入においても調整が必要となるため、費用から販売費等を除外していない。
 米国の場合は、販売費等を除外しているが、「コスト−平均コスト」による算定方式の下、コスト及び平均コスト双方から販売費等を除外することで合理性が確保されており、日本のように費用から販売費等を除外し収入は一部しか調整しないという仕組みは採られていない。

【参考】政省令案とヒストリカルベースの収支差の比較
(注1) ヒストリカルベースと比べて、費用で4,320億円圧縮しているが、収入では890億円しか調整しておらず、収支差において約3,430億円もの差異が生じている。
(注2) 総務省は、ユニバーサルサービスに係る純費用について、上記のほか、き線点RTコストを端末回線に付け替える場合についても試算されているが、コストの付け替えは現実的には困難であり、また、き線点RTコストの回収方法を不採算地域の赤字補填を目的とするユニバーサルサービスで扱うことは、本来の制度導入の目的に沿わないものと考える。

(3)

 採算地域の黒字と不採算地域の赤字を相殺したうえで、適格事業者自ら提供するユニバーサルサービスの収入までも基金の負担対象とすることは、明らかな二重負担となり、仮にファンドが発動したとしても、全額補助されず、ユニバーサルサービスの安定的な提供を確保する仕組みとなっていない。

(4)

 基本料、市内通話、公衆電話、離島特例及び緊急通報サービスを全てまとめて1の種別とすることは、採算地域と不採算地域の相殺による内部相互補助に加え、対象サービス間での内部相互補助をも前提とするものであり、不採算サービスの安定的な提供を確保する仕組みとなっていない。

(5)

 また、今回の政省令案は、上記に加え、以下のような問題があると考えます。

<1>

 格安な料金設定のIP電話については、既に本格サービスが提供開始され、加入電話からIP電話へのVoIPサービスについても、今後「0A0」の番号付与により急速に普及すると考えられるが、いずれにおいても市内/市外通話の区別がなじまないものであり、電話の「市内通話」のみをユニバーサルサービス対象と位置付けていることについて整理を図る必要があること。

<2>

 今回の政省令案は負担する事業者の収益の範囲等が不透明であるうえに、あまりに細分化されており、今後、他事業者においてもシステム改造費や事務コストの増大を招きかねないことから、負担対象収益についても見直しが必要であること。


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