NTT東日本及びNTT西日本(以下 NTT東西)は、地域情報の流通を活性化させるため、インターネット上で地域に密着した情報を簡単かつリアルタイムに発信できるとともに、地理情報システム(GIS)*1と連動させることによりインターネット利用者がそれらの情報を表示された地図上から簡単に検索・閲覧することができる「地図連動型Web-DBアプリケーション」を共同開発しました。
また、本アプリケーションを石川県金沢市で実施している「FTTH金沢トライアル実験*2」で提供されている「商店広告サービス*3」に適用し、その利用実験を平成12年9月11日(月)から行います。
1. 開発の背景 |
 | インターネット上で地域情報の流通を活性化させるためには、地方公共団体や企業等による地域情報の公開だけでなく、個人や地元の商店等による地域生活に密着した情報の発信が不可欠であるとともに、それらの情報をいかに簡単かつリアルタイムに入手し有効に活用できるかが課題です。
しかし、地域に密着した情報をリアルタイムに発信するためのホームページの立ち上げや情報の更新には専門的な知識が必要であるため、ほとんどの場合、情報発信者自身による情報の発信や更新が行われていません。
また、情報を収集する側においては、地域に密着した情報を探したい場合、複数のホームページを別々のキーワードで検索し情報を絞り込む必要があるなど、欲しい情報を簡単かつリアルタイムに入手できていないのが現状です。
NTT東西では、こうした地域情報流通における課題を解決するために「地図連動型Web−DBアプリケーション」を開発しました。 |
2.概要と特徴 |
 | 「地図連動型Web−DBアプリケーション」は、「情報発信テンプレート」と地理情報システム、およびVOD等の各種マルチメディアアプリケーションとを組み合わせて構成しています。
(1)「情報発信テンプレート」による情報発信の簡便性 |
|  | 「テンプレート」と呼ばれる定型的な入力様式を用いることにより、WWWブラウザ上でテキスト入力やメニュー選択等の簡単な操作を行うだけでホームページを作成できますので、パソコンに不慣れな初心者でも簡単にインターネットを通じて情報発信できます。
また、「テンプレート」*4は、商店の情報提供だけでなく、広告や観光案内等の様々な情報発信に柔軟に対応することができます。 |
 | (2)地図情報検索機能の充実 |
|  | 「情報発信テンプレート」で作成されたホームページを地図上で簡単に検索できます。
検索したいエリア(住所)やジャンルをマウス操作で絞り込み、検索結果をリスト表示すると同時に地図上にアイコン表示します。また、表示された地図上のアイコンをクリックすることで、各ホームページの内容を簡単に表示することができます。 |
 | (3)多彩な情報の発信 |
|  | 「情報発信テンプレート」で作成したホームページには、VOD等のマルチメディアアプリケーションを組み込むことができますので、テキスト情報だけでなく、デジタル写真、音声、動画等の多彩な情報をホームページから発信することができます。 |
 | (4)ネットワークを駆使した各種DB(データベース)からの情報収集 |
|  | NTTサイバーコミュニケーション総合研究所が開発した地図−DB連動システム構築ミドルウェア「MM情報マップディレクトリ*5」を採用しており、ネットワーク上に分散した複数のDBをあたかも1つのDBのように扱うことができますので、各DB毎に固有のインタフェースを用意する必要がなく、開発期間の短縮とDBの有効利用が図れます。 |
 | (5) 地図著作権の保護 |
|  | NTTサイバーコミュニケーション総合研究所が開発した地図著作権保護技術*6を採用しており、地図情報の他への不正流用を未然に防ぐなど、著作権の保護が可能です。 |
 | (6)他の分野への拡張性 |
|  | サーバの機種やOSに依存しない汎用性に優れたプログラム言語である「Java」でアプリケーションを開発していますので、動作環境を選びません。
そのため、既存で個別に運用している行政、市民サークルといった分野での情報公開にもすみやかに機能を拡張できます。 |
3.利用実験について |
 | (1)実験の概要と目的 |
|  | 本アプリケーションの実用化に向けて、問題点や課題を抽出するため、FTTH金沢トライアル実験において、各機能の検証やユーザニーズの抽出を行います。
具体的には、本アプリケーションを適用した「商店広告サービス」を試験的に運用し、システムの実負荷試験を行うとともに、実験参加者の声を本アプリケーションへフィードバックし、機能改善等を行います。
実験期間 |
平成12年9月11日(月)〜平成13年5月17日(木) |
対象者・役割 |
情報 発信者 |
・ |
商店広告サービスに参加していただく情報提供者(商店主ほか)約100名程度を想定 |
・ |
商店広告の情報提供(統計データとして活用)及びアンケート回答を実施 |
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情報 閲覧者 |
・ |
金沢トライアル実験参加者(約120人)および一般インターネットユーザ |
・ |
地図、ホームページへのアクセス(統計データとして活用)及びアンケート回答を実施 |
※ |
以下のURLにアクセスすることにより、本実験へ情報閲覧者として参加することができます。
URL:http://mm-www.ch-i.ne.jp/servlet/kana.web.topmenu |
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ネットワークの 構成 |
実験参加者(約40回線/120人)とサーバ群をワイドLAN*7で接続した光アクセスネットワーク(最大10Mbit/s:ベストエフォート型)、ゲートウェイを介してインターネットに接続。 |
地図データ |
株式会社エヌ・ティ・ティ・エムイー北陸の1/2500縮尺のディジタル地図を使用 |
地図提供エリア |
金沢市内の一部地域*8 |
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(2)実験の検証項目 |
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<1> |
地図を活用した情報システムの技術検証
地図を活用した情報サービスの実現に向けたサーバ構築・運用技術を検証する。 |
<2> |
地図情報を活用した地域情報流通サービスの市場調査
インターネット上における地域生活に密着した情報の流通に対するニーズの把握や求められるサービス内容等の意見を集約し、市場性を判断する。 |
<3> |
ユーザインタフェースの検証
情報発信テンプレートによる情報登録の操作性、エリア表示による絞り込み検索と地図上への位置表示の有効性を検証する。 |
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4.今後の予定 |
 | 実験結果を受けて、本アプリケーションの一層の機能改善等を図るとともに、地図情報を用いた地域情報流通サービスの事業展開について検討します。
今回の実験では、本アプリケーションを商店の広告に利用しますが、事業展開の折には、商店の広告配信に限定せず、行政情報や市民サークルのコミュニケーション支援、観光情報、地域のイベント情報など、複合的な地域情報サービスとして展開できるよう、機能を拡張していく予定です。 |
*1: |
地理情報システム(GIS)
Geographic Information Systemsの略。地図をコンピュータで扱うシステムのこと。近年、パソコン単体で動作する安価なGISソフトやインターネットで目的地周辺を地図で案内するサービスが出てきている。個人利用も、カーナビゲーションやiモードなどで身近になってきている。 |
*2: |
FTTH金沢トライアル実験
NTTグループと松下グループが、情報流通ビジネス推進を目的として平成12年5月より開始した共同の実証実験。1年の実験期間を通じて、金沢市において地域に密着した情報流通サービスの提供に取り組む。
詳しくは、URL: http://www.ch-i.ne.jp/ を参照。 |
*3: |
商店広告サービス
商店の広告をネットワークを介して地域の生活者にお知らせするサービス。地図連動型Web-DBアプリケーションの特徴を活かし、リアルタイムの新鮮な情報の流通が可能。従来のチラシ広告と比較して、より安価に、かつ迅速に多くの生活者に情報を伝えられる。 |
*4: |
テンプレートを用いた新しいビジネスについては、NTT東西で特許共同出願中。 |
*5: |
MM情報マップディレクトリ
NTTサイバーコミュニケーション総合研究所が開発した、分散した複数のデータベース情報をネットワーク上で統合して、ディレクトリシステムの下でその情報を地図データと連動させて表示する技術。地図情報をベースとしたアプリケーションサービスのプラットフォームとして利用できる。 |
*6: |
地図著作権保護技術
NTTサイバーコミュニケーション総合研究所が開発したインターネットなどの公開の場に提供される地図情報に対して、その著作権を保護するために、不正コピーされた地図を識別する技術。 |
*7: |
ワイドLAN
NTT東西が提供しているネットワークサービスの1つで、シェアドアクセス技術(アクセス区間において複数回線で伝送帯域を共用する技術)を利用して広域なLANを実現するビジネスユーザ向けの光サービス。各拠点間で最大10Mbit/s (ベストエフォート)の高速通信が可能。 |
*8: |
地図提供エリア
兼六園、香林坊/片町の名所/繁華街を中心とした約60km2(約8.0kmx約7.5km)のエリア。 |
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