<背景> |
近年、ネットワークシステムを利用したサービスの進展にともない、暗号化をはじめとした安全で利用しやすいネットワークセキュリティシステムの開発が望まれています。
現行のID、パスワード方式では記憶上の制約から本人が覚えやすい番号等がよく用いられています。そのため盗用されやすく、セキュリティ上の問題から新しい本人認証方式が待ち望まれていました。
こうした状況のなか、今回、NTT東日本は、NTT研究所で開発した高性能指紋センサLSIを用いた指紋認証システムを開発し、社内システムで実用化実験を行うこととしました。 |
<指紋認証システムの特長> |
パスワードを用いた既存の情報処理システムに接続して、指紋での本人認証を行うことができるシステムです。
このシステムは、他に特別なハードウェアが不要で、パソコンの標準インタフェースに接続するだけで利用できるため、安い費用でどのような情報処理システムにも短期に導入できます。そして、指紋という個人の生体から直接得られた情報を用いているので、IDやパスワード方式に比べ高度な本人識別ができ情報処理システムのセキュリティが向上します。
本システムは、新しい指紋センサLSIを開発導入したため、 |
|
<1> | 静電耐圧が2kV以上と高く、静電気によるセンサチップの故障が減少します。 |
<2> | ピクセル※密度が500dpiと高精度で、認証精度が向上します。 |
| (dpi:1インチ、25.4mmあたりのピクセル数) |
| ※ | ピクセル:指紋画像は多くの点の集まりでできており、その1つの点をピクセルという。 |
|
また、認証アルゴリズムには、登録パタンを細線化したパタンマッチング方式を採用しているので指紋パタンの歪みや劣化に対して優れた耐性を持っています。 |
<指紋認証技術の特長> |
|
(1) | グランドウォール型指紋センサ技術 (別紙1参照) |
|
| | 静電容量型の指紋センサ電極を、グランド電位(接地)に接続した壁状の電極で四方を取り囲んだセンサ構造を実現する技術で、高い静電耐圧と読み取り感度を実現できます。 |
|
|
| | 指紋の凹凸を静電容量(キャパシタンス)の大小で読み取る指紋センサを、センサ回路などシリコンLSI回路の上に重ねて形成する技術で、ピクセルやチップの小型化が図れます。 |
|
|
| | 入力指紋と登録指紋を照合する手順として、指紋隆線(凸部)を細線化した登録指紋パタンと、指紋センサからの読み取り指紋パタンとの一致度を調べて照合を行うパタンマッチング方式です。 |
<実用化実験の概要> |
指紋認証システムでは、個人差があり、温度、湿度など環境変化によって変わる生体情報を利用しているため、実用化にあたって、多数の参加者で長期間に渡って認証精度などの評価実験を行います。
まず第一段階では、認証率や認証速度などシステムの性能評価を行います。次に第二段階では、生体情報という個人情報を利用するため、実際に業務で使用する人のヒューマンインターフェイス側面を評価し、一般利用の際の課題を明確にし実用性の向上を図ります。 |
|
(1) | 第一段階: | 社内システム試験環境による評価実験 |
|
| |
・ | 期間: | 平成12年2月〜平成12年4月 |
・ | 内容: | 指紋認証率、認証速度、指紋チップの耐久性等の基礎データを評価します。 |
・ | 規模: | システム台数10台、参加人員50名程度 |
|
|
|
| |
・ | 期間: | 平成12年5月〜平成12年9月 |
・ | 内容: | 支店の社内システムに接続し、社員が実際の業務で利用して、使い勝手や保守運用性等を評価します。 |
・ | 規模: | システム台数20台、参加人員100名程度 |
|
<今後の展開> |
この指紋認証システムの早期製品化を図り、社内はもちろん一般にも販売する予定です。
さらに、認証アルゴリズムの高性能化を進め、指紋の読取りから認証までを1つのLSIで実現するワンチップ型指紋センサ認証LSI(別紙4参照)の早期実用化を目指し、携帯情報機器やICカードの不正利用防止の本人認証に応用する予定です。
本システムの応用例を別紙5に示します。 |