INTERVIEW桑早生選手 ロングインタビュー

ROAD TO TOKYO 2020
東京2020パラリンピック出場内定までの道のり
2019〜2021

「パラスポーツ」の橋渡しとして

世界のトップパラアスリートとして、ロンドン2012パラリンピック、リオ2016パラリンピックと2大会連続出場している桑早生選手。リオ2016大会で樹立した女子100m(T44)13秒43はアジア新記録、日本新記録であり、未だ破られていないレコードホルダーである(2021年7月5日現在)。

桑選手は幼い頃から非常に運動能力の高い活発な少女だったが、中学1年の時に骨肉腫で左足を切断。その後も義足でありながらもソフトテニス部で大会に出場するなど、積極的に運動に取り組むなかでパラ陸上競技に出会い、高校から陸上をスタート。一気に才能を開花させていった。

生身の身体能力を競う健常者の陸上競技と違い、義足や車いすなどの道具を使いこなし、ときにはサポートを受けながら競技を行うパラ陸上競技。自身がこれまで体験してきたこと、数々の思い、そしてパラリンピックをはじめとする国内外の大会に出場した経験を通して、パラ陸上競技ならではの楽しさやパラスポーツ全体に興味をもってもらえるきっかけに自らがなれるよう、さまざまな活動を続けている。

東京への険しい道のり

東京2020パラリンピックの選考会、第一関門は2019年11月ドバイで行われた。約120ヶ国から1,500人を超える選手が参加した大会は、2019年の各競技種目の世界一が決定するだけでなく、4位入賞以内で東京2020パラリンピック内定が決まるとあり、11月でも30度を超えるドバイでまさに熱い戦いが行われた。
桑選手は女子走幅跳(T64)と女子100m(T64)に出場。近年特に力を入れている走幅跳は2015年の世界大会でも3位入賞の実績があり、入賞の可能性が期待されていた。
しかし結果は5m04で6位。同年4月に出した5m27の自己ベストに及ばず、4位の選手とは12センチの差。
わずかに届かなかった結果に悔しさが滲んだが、反省点をきちんと受け入れ、この結果を必ずプラスにするために、次の選考基準である「出場資格ランキング6位以内」入りを目指し、次の大会に向けて再び前を向いた。

出場資格ランキング6位入りを目指して

東京2020パラリンピック内定獲得の第二関門は2019年4月1日〜2020年4月1日の間に行われるWPA(国際パラ陸上競技連盟)公認大会での記録で作成される「出場資格ランキング」(※)6位以内かつ、先のドバイの選考大会での出場内定者を除き上位2名に入ることである。

※出場資格ランキングは種目・クラスごとに作成され、桑選手は女子T64クラスの100m、走幅跳のいずれかのランキング6位以内が必要。

桑選手はドバイの大会以降も「女子走幅跳(T64)5m27」で出場資格ランキング6位以内をキープしていたが、さらに上を目指すため2020年3月から国内で順次行われるWPA公認大会へ出場を予定。パラリンピックイヤーの到来とともに、スタートダッシュを決めたいところだったが、早春の芽吹きとともに世界中にコロナウイルスが蔓延。
国内の大会は次々と中止が発表され、もちろん海外の大会も出場不可能。そして3月24日には東京2020オリンピック・パラリンピックの延期が発表。

緊急事態宣言下の東京ではトラックでの練習もままならず、あらゆる道が閉ざされていったが、持ち前の明るさとアスリートである自分への誇りを胸に、いつか必ず訪れるチャンスに向けて、自身を磨き上げる日々が続いた。

その後2020年7月に選手選考規定が改訂され、出場資格ランキングの終了が2021年4月1日に延長された。国際大会へ出場できない状況を踏まえ、日本パラ陸上競技連盟は記録更新のチャンスを拡大するために、毎年夏〜秋に開催のWPA公認大会を2021年度は3月に繰り上げて開催を決定。そこで好記録を出すことが、ランキング終了までに6位以内に食い込むラストチャンスとなった。
実は桑選手は延長決定前の2020年4月の出場資格ランキングで走幅跳7位になっていたため、自己ベストの更新を最大の目標として大会に挑んだが、女子走幅跳(T64)、女子100m(T64)ともに自己ベストに及ばず、出場資格ランキングは走幅跳7位、100mは13位で終了。
残るチャンスは「ハイパフォーマンス標準記録突破選手を対象とした推薦出場枠」を残すのみとなった。

ラストチャンスをこの手に

「推薦出場枠」とは、2018年10月1日〜2021年6月6日までのWPA公認大会においてハイパフォーマンス標準記録を突破した選手のうち、出場内定未獲得の者でかつ、東京2020大会8位入賞の可能性のある選手を対象に選考委員会にて推薦順位を決定するというもの。
桑選手はすでに標準記録は突破していたが、ハイパフォーマンスランキングの更新を目指し、3月に続き、4月にも香川で行われた大会に出場。しかしここでも自己記録の更新はかなわず、6月6日でランキングが終了。
女子走幅跳(T64)は8位で終了となったが、日本人でランクインしているのは桑選手のみ。その結果に望みをつなぎ、7月の選考結果を待つこととなった。

そんな中出場した6月の鳥取での大会。健常者を対象にした大会のパラ種目で女子100m(T64)に出場した桑選手は約5年ぶりに自身の持つ日本記録と同タイムの13秒43を樹立。さらに6月末の記録会でも13秒54の好記録を出し、本番に向けて好調をアピール。
これらの記録が示す明るい可能性が、東京へ導いてくれることを期待せずにはいられない。

そしてついに2021年7月6日、日本パラ陸上競技連盟より、最後のパラリンピック出場内定者が発表された。「ハイパフォーマンスランキング枠数」に基づく推薦内定選手である。
6月23日付でWPAから通知された国別割当数を国内3つのパラリンピック競技団体間で協議。日本パラ陸上競技連盟への枠数は男子5、女子3の狭き門となった。
それに向け、ハイパフォーマンス標準記録を突破した選手の中から、2019年ドバイの選考大会、2021年3月のWPA公認大会の結果より算出された換算順位に基づき検討の結果、桑早生選手が東京2020パラリンピックの推薦内定選手に選出された。2年以上に及ぶたゆまぬ努力と本番での可能性を評価された結果である。

競技開始ひと月半前でようやく獲得した3度目のパラリンピック出場権。過去2大会以上に過酷で苦難な道のりの果てに、栄光の舞台へのラストチャンスを自身の手でつかみ取った。
前回のリオ2016大会では自己記録をふたつも塗り替えた桑早生選手。今回も本番での勝負強さを発揮し、はじける早生スマイルでオリンピックスタジアムを大いに沸かせてほしい。

Profile近年の主な戦績

2012

ロンドン2012
パラリンピック

女子100m(T44)7位
女子200m(T44)7位

2014

アジアパラ
競技大会

女子100m(T44/47)3位

2015

世界パラ陸上
競技選手権

女子走幅跳(T44)3位

2016

リオ2016
パラリンピック

女子走幅跳(T44)5位
女子200m(T44)7位(予選で28秒77のアジア新記録)
女子100m(T44)8位(予選で13秒43のアジア新記録、日本新記録)

2017

世界パラ
陸上競技選手権

女子走幅跳(T44)5位

2018

アジアパラ
競技大会

女子100m(T44/62/64)1位
女子走幅跳(T42-44/61-64)5位

2019

世界パラ
陸上競技選手権

女子走幅跳(T64)6位

2021

東京2020パラリンピック出場内定

2012

ロンドン2012
パラリンピック
女子100m(T44)7位
女子200m(T44)7位

2014

アジアパラ競技大会
女子100m(T44/47)3位

2015

世界パラ陸上競技選手権
女子走幅跳(T44)3位

2016

リオ2016パラリンピック
女子走幅跳(T44)5位
女子200m(T44)7位
(予選で28秒77のアジア新記録)
女子100m(T44)8位
(予選で13秒43のアジア新記録、日本新記録)

2017

世界パラ陸上競技選手権
女子走幅跳(T44)5位

2018

アジアパラ競技大会
女子100m(T44/62/64)1位
女子走幅跳(T42-44/61-64)5位

2019

世界パラ陸上競技選手権
女子走幅跳(T64)6位

2021

東京2020パラリンピック出場内定

※2018シーズンより「片側に下腿義足を装着し競技する選手のクラス」が新設されたのに伴いクラス分け変更(T44→T64)

東京2020パラリンピック競技大会
陸上競技

【競技日程】
2021年8月27日(金)〜9月5日(日)
【試合会場】
オリンピックスタジアム(東京都新宿区)

Tokyo2020 Tokyo2020

■女子走幅跳(T64) 決勝:8月28日(土) 10:42〜

■女子100m(T64) 予選1組:9月2日(木) 20:55〜

試合結果はこちら

オリンピックスタジアム(東京都新宿区)Copyright:JAPAN SPORT COUNCIL

「これからも応援しています!」
〜職場からのエール〜

NTT東日本−南関東
神奈川事業部 総務部
佐藤 則之

東京2020パラリンピック、お疲れ様でした。
これまでのパラリンピック開催とは大きく異なり、さまざまな環境や制限がある中で、大舞台を楽しむことはできましたでしょうか。

出場された「走幅跳」と「100m」の結果は桑さんにとって悔しい結果であり、「もう少し」という思いが残った記録だったかもしれません。
ただ、神奈川事業部やその他NTTグループ社員などが大きな大きなエールを送っていた中で両種目に挑む姿とすばらしいパフォーマンスはとても感動的であり、今回のパラリンピックに出場した選手の姿は、桑さんにとってもうひとつの目標である「パラスポーツへの関心」を日本や世界に広めたものだと感じております。

少し早いですが次は来年、兵庫県神戸市での大会ですね。
まだまだこれからのがんばりに期待していますし、もっともっと応援させていただきますので、自己記録更新に向けてがんばってください!