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人工膝関節形成術(TKA)

はじめに

このホームページは、人工膝関節形成術(TKA)の手術を受けられる患者様に、安心して入院期間をお過ごしいただけるように、入院から退院までの経過とリハビリテーションについてまとめたものです。
また、変形性膝関節症とは何かを知っていただくため、膝のしくみについての簡単に説明してあります。

手術前から読んで頂き、退院後も活用していただければ幸いです。
また入院に際し、同様の内容のパンフレットをお渡ししますので入院される際は必ずご持参ください。

治療の経過には個人差があり、リハビリテーションの予定を若干変更することもあります。不明な点があれば、いつでも主治医、理学療法士、看護師にご相談ください。

膝のしくみ

膝は、大腿骨(ふともも)と脛骨(すね)と膝蓋骨(ひざの皿)の3つの骨により構成されています。体重を支えるために大腿骨と脛骨は軟骨、半月板などを介してがっちりと接しています。またこれらの骨を靭帯が支え安定した膝関節が成り立っています。それぞれの骨表面は軟骨で覆われています。軟骨は氷よりもつるつるしています。

変形性膝関節症とは

軟骨、半月板が摩耗や消失し、大腿骨が内側に倒れてくる

スムーズな動きを保つには骨の表面にある軟骨が重要な役割を担っていますが、だんだんと軟骨がすり減り、半月板が傷み、周囲の骨が変化していきます。その軟骨のすり減りによって生じてくる状態を「変形性膝関節症」といいます。悪化に伴い、大腿骨が内側に倒れ膝がO脚となっていきます。

  1. 原因
    加齢、外傷(骨折、靭帯などのけが)、肥満、素因(遺伝)
  2. 主な症状
    • 歩き始めに痛い、階段を降りるのがつらい
    • 膝が腫れる
    • 膝が伸ばしづらい
    • 膝が曲げづらい
    • O脚が進んで、脚がガクガクする
  3. レントゲンでの進行度の分類。
    その進行度は通常、5期(北大分類)に分類されます。

I期(初期) 骨の周囲が硬化してきたり、骨棘(骨のとげ)ができてくる
II-III期(進行期) 少しずつ軟骨のすり減りがみられる。関節の隙間が減少する
IV-V期(末期) ほぼ軟骨はすり減ってしまって、骨と骨がぶつかって見える

人工膝関節形成術(TKA)

1. 人工膝関節形成術とは

人工膝関節形成術とは、傷んでしまった膝の表面の軟骨を切り取り、膝の変形を直し、人工物で出来ている人工関節をかぶせる手術のことです。イメージとしては虫歯の治療のように悪いところを削り、金歯をかぶせることを想像してもらえればよいかもしれません。

膝がとても痛くて、上記分類での末期 (分類4期、5期)で60歳以上方に適応があります。
またリウマチの患者さまにも行います。

膝や他の部位が化膿している方には人工関節手術ができません。

2. 人工膝関節形成術をうけると

  • 手術により痛みが軽くなり、膝の変形が直ります。
  • それらにより快適な日常生活を送ることを目標にしています。
  • 手術後の膝のまがりは手術前の状態にもよりますが、110-130度くらいが標準ですので、イス中心の日常生活に慣れて頂くことになります。
  • また、過度の負荷がかかる重作業も控えることが望ましいです。

3. 当科で使用している人工関節の特徴

  1. 当科では、北海道大学 スポーツ・再建医学 安田和則教授と当科 井上らとの共同研究にて開発された、セラミックを応用した人工膝関節(LFA) を使っています。 通常、人工関節の材料としてはコバルト合金、チタンなどが使われているのが一般的ですが、セラミックは摩擦がおこりにくく、磨耗による人工関節のゆるみの発生を抑えることができます。強度は金属と同等です。日本メディカルマテリアル(JMM)社製。
  2. また、汎用されている人工関節の多くは、外国製で外人のサイズに合わせた人工関節ですが、この機種は日本人の膝から得られたデータを元に開発されたデザインであり、外国製の機種よりも日本人の膝にあっており非常に良好な結果が得られています。

透明のテンプレートを作り脛骨コンポーネントの被覆率の調査を行った。左がLFAで骨の輪郭にぴったりあうが、中央、右の機種は矢印の後内側で骨が十分に覆われていない。

人工膝関節形成術後のリハビリテーション

膝のリハビリテーションにて重要なのは、膝の筋力とくに大腿四頭筋(ふとももの前の筋肉)訓練と膝を曲げる練習です。

1. 膝関節の手術後は早くから曲げ伸ばしの訓練を行います。動かさないでいるとすぐに膝が硬くなってしまいます。
はじめは曲げる器械を使って、持続的に、ゆっくり、膝の曲げ伸ばしを行う訓練を行います。
さらに、訓練室で理学療法士により、愛護的に膝の曲げ伸ばしの訓練を行います。

2. 仰向けや横向きで膝を伸ばしたまま、挙上する訓練(下肢挙上訓練)

手術後心配な事

ゆるみ

人工関節は長い年月が経つと、骨との間にゆるみが生じてくることがあります。これが人工関節の最も大きな問題で、現在のすべての人工関節はいつかは、ゆるみが発生する危険性があります。どんなに具合がよくても、手術を受けられた患者様には最低毎年1回の定期健診をお勧めしています。

感染(化膿)

人工関節のはいっている部位に、感染(化膿)が起きてしまうと、人工関節を抜去する事になり、治療は長期間にわたってしまいます。当院では、感染を予防するために、専用のクリーンルーム(無菌手術室)の使用、抗生剤の予防的投与、定期的血液検査などの対策をとっています。

深部静脈血栓症

下肢の静脈に血栓(けっせん)という血の塊ができる合併症は、肺塞栓症という呼吸困難を伴い、場合によっては死亡にいたる重症な合併症を引き起こします。日本人では約2割程度に起こりうるもので、当院ではフットポンプを用いた予防を行うとともに、早期発見、早期治療に努めています。万が一起これば専門の心臓血管外科医に治療していただきます。

膝の曲がり

おおよそ110-130度位です。はじめは多少痛みがありますが、曲げる練習がんばりましょう。

違和感

大きな人工関節が入るので、手術後3ヶ月くらいは多少の痛み、違和感、熱感がありますが、次第になじんでいきます。

人工膝関節形成術を行うために入院になったら

手術の前後の予定表(クリティカルパスといわれるもの)です。参考にしてみてください。

フットポンプ

現在では変形性膝関節症の原因、そして予防策が少しずつ解明されてきています。また決して画一的な治療で無く、患者さまの状態にあった多くの治療法があります。膝の調子が気になる方、手術に不安、疑問のある方は気軽に相談してみてください。