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麻酔科・ペインクリニックセンター

人の動き

3月に浦濱聡先生が退職し、4月からは高田幸昌先生を新たに迎えました。田村亜輝子先生が8月から産育休に入り、9月には杉本美幸先生が退職されました。しかし、大学からの人員増はなく−1.8人となり、ほぼ毎日大学からの出張医応援を送ってもらいながらの麻酔科運営でした。

診療・業務内容

臨床麻酔

麻酔科管理手術件数の推移は2013年2392件でしたが、2014年2490件に、そして2015年2743例、2016年2751例、2017年2866例と増加しています。呼吸器外科と乳腺外科が充実した結果と思われます。これは札医大麻酔科関連病院の中でも上位に入る症例数であり、脳神経外科以外の各科手術が毎日活発に行われています。

臨床研修制度により当科には1年次研修医が2か月必修として研修します。医師として必要なマスク換気・気管挿管手技と脊髄くも膜下穿刺の技術取得に加えて、循環、呼吸、輸液などの全身管理の習得を目指します。2年目に麻酔科選択した研修医は、各自の目指す専攻科に合わせて上記技術のレベルを上げながら硬膜外穿刺、エコー下神経ブロックなど一段進んだ麻酔技能習得と、帝王切開術、開心術など特殊麻酔管理も行える事も目指します。麻酔科志望の研修医の場合は入局後と同様の指導を行います。一年目から研修医の諸君は麻酔科にとっては大変貴重な戦力であり、手術室の安全運営に欠かせない存在になっています。

手術室の安全管理運営は重要な項目です。当科では安全な麻酔管理を行うために必要なシステムの一つとして、朝8時から当日の麻酔全症例検討会を行い、各症例の情報を共有しています。こうすることで麻酔困難症例を見逃すことなく全員でそれを認識し、チームとして対応できるように取り組んでいます。

ペインクリニック

ペインクリニックは痛み、機能障害に対し、主に神経ブロックを応用して治療を行う診療部門です。単に痛みなどの症状を軽減させることを目的としているのではなく、まず症状の原因を診断し、その病態に応じた手段により治癒、症状の緩和を図ることが診療の基本です。

椎間板ヘルニアなどでは神経ブロックを中心とする治療により自然治癒を促進させ、手術を回避できる場合がしばしばあります。また、腰部脊柱管狭窄症、閉塞性動脈硬化症などの痛みに対しても神経ブロックにより患者さんのADL改善が期待できます。その他三叉神経痛、帯状疱疹関連痛、複合性局所疼痛症候群、がんによる痛みも治療対象です。近年、薬物療法を主体とする緩和医療の発展によりがんの痛みに対する神経ブロックは以前ほど行われなくなりましたが、膵がん、胃がんなどの腹痛に対する内臓神経ブロック、直腸がん手術後の旧肛門部痛に対するサドル・フェノールブロックが著効し在宅での生活が可能となるケースも珍しくありません。これらがんの痛みには施行する意義のある治療と考えています。

神経ブロックにはX線透視を必要とする場合があるほか、透視を用いることにより完成度の高い神経ブロックを行うことができる場合があります。下にX線透視下神経ブロック件数を示します。当科では手術予定の患者さんに対して当日朝にX線透視下に硬膜外カテーテル挿入を行う場合があります。このような方法で硬膜外カテーテルを挿入している施設は他に例を見ないと考えますが、確実なブロック効果を期待でき、術後の鎮痛のためにも有用です。

神経ブロック以上に当院ペインクリニックにおいて特色ある治療は胸腔鏡下交感神経遮断術、脊髄刺激療法です。胸腔鏡下交感神経遮断術の最もよい適応は手掌多汗症ですが、頭部・顔面多汗症、腋窩多汗症、赤面症、手の末梢循環不全に対しても行われます。2014年より北海道において原発性局所多汗症に対してこの手術を行う施設は当科のみとなっており、年間40件前後の手術を行っています。原発性局所多汗症に悩む患者は人口の4-5%とも言われますので、まだ多くの患者さんが潜在していると考えられます。手術という選択肢について周知を図ることが今後の課題です。脊髄刺激療法は脊椎手術後に残存する痛み、四肢の末梢血管障害、複合性局所疼痛症候群などの難治性の痛みに対して施行しています。最近は機器の進歩もあり、この治療により職業の継続が可能となる事例が増えています。脊髄刺激療法も北海道で施行可能な施設が少ないため全道から患者さんが受診されます。

これらの手術療法、神経ブロックが適応とならない患者さんには漢方を含む薬物療法、理学療法などによる治療を行います。どのような治療法を選択するにしても患者さんになるべく苦痛を与えずに安全で質の高い医療を提供することを当科の信条としています。また、痛みの治療を志す若い先生方の研修機関として彼らとともに研鑽を重ねていきたいと考えています。

最近5年間のペインクリニックの動向

  2013年 2014年 2015年 2016年 2017年
新患数(名) 570 642 730 536 571
延患者数(名) 6,879 7,335 7,931 6,613 6,249
入院患者数(名) 114 110 96 97 98
透視下ブロック件数(件) 1,176 1,086 1,288 994 1,203
多汗症手術件数(件) 33 46 42 32 33

2017年のX線透視下神経ブロックの内訳(件)

頭部 GGB 10 腰部 one shot硬膜外ブロック 308
頸部 one shot硬膜外ブロック 208 神経根ブロック 111
神経根ブロック 32 神経根ブロック(サーモ) 32
神経根ブロック(サーモ) 6 椎間関節ブロック 53
椎間関節ブロック 9 椎間関節ブロック(サーモ) 11
腕神経叢ブロック 93 腰部交感神経節ブロック 12
胸部 one shot硬膜外ブロック 159 椎間板造影・加圧 15
神経根ブロック 25 経皮的髄核摘出術 2
神経根ブロック(サーモ) 19 腰神経叢ブロック 5
肋間神経 1 硬膜外ブラッドパッチ 3
胸部交感神経節ブロック 2 仙骨部 経仙骨孔ブロック 14
胸部交感神経節ブロック(サーモ) 6 経仙骨孔ブロック(サーモ) 4
腹部 内臓神経(アルコール) 8 仙腸関節ブロック 7
下腸間膜(アルコール) 1 硬膜外洗浄 38
上下腹神経(アルコール) 2 その他 脊髄刺激電極挿入(puncture trial) 4
不対神経 1 その他 1
不対神経(アルコール) 1 合計 1,203

※サーモ:高周波熱凝固による

研究活動について

原著・症例報告

■英文原著

  1. Hideaki Sasaki, Masanori Yamauchi, Takafumi Ninomiya, Haruyuki Tatsumi, Michiaki Yamakage:Possible utility of contrast-enhanced ultrasonography for detecting spread of local anesthetic in nerve block.J Anesth (2017) 31:365-373
  2. Kazuma S, Tokinaga Y, Takada Y, Azumaguchi R, Kimizuka M, Hayashi S, Yamakage M. Desflurane inhibits endothelium-dependent vasodilation more than sevoflurane with inhibition of endothelial nitric oxide synthase by different mechanisms. Biochem Biophys Res Commun. 2018 Jan 1;495(1):217-222.

■症例報告

  1. 宮本奈穂子、御村光子、佐々木英昭、福田玲於奈、山澤弦:MRI拡散強調画像(DWI)が診断に有効であった神経系悪性リンパ腫の一症例. ペインクリニック 2017:38:1473-8.
  2. 石岡慶己、 関根利佳、 高田幸昌、 山蔭道明 札幌医科大学医学部麻酔科:複発性帯状疱疹に対して発症早期からの神経ブロックが著効した1症例. 日本ペインクリニック学会誌 24(2): 130-133, 2017.

■その他

  1. 御村光子:書評. 山口重樹編集「痛み診療におけるオピオイド治療:ブプレノルフィン貼付薬の可能性」臨床麻酔 2017;41(12)1681.
  2. 御村光子:第42回札幌市医師会医学会ポスターセッション司会印象記「麻酔科・ペインクリニック」.札医通信増刊2017、595、13-4

学会発表

■全国学会

【日本麻酔科学会第64回学術集会(神戸)】2017.6.08-10

  1. 木村さおり、御村光子、宮本奈穂子、佐々木英昭、浦濱聡、山澤弦:当院ペインクリニックにおいて悪性腫瘍の診断を得た症例の検討.

【日本ペインクリニック学会第51回学術集会(横浜)】2017.7.20〜22

  1. 御村光子、佐々木英昭、宮本奈穂子、山澤弦、硲光司、浦濱聡、田村亜輝子、木村さおり、杉本美幸、高平陽子:胸腔鏡下交感神経遮断術を含む交感神経ブロックにより顕著な改善をみた突発性難聴の3症例.
  2. 佐々木英昭、御村光子、山澤弦、宮本奈穂子、木村さおり、平陽子、浦濱聡、田村亜輝子、杉本美幸、硲光司 : ペインクリニック領域における治療手技習得のための試み

【日本産科麻酔学会第121回第学術集会(大阪)】2017.11.8

  1. 宮本奈穂子、小松彩友香、杉本美幸、高平陽子, 木村さおり、御村光子:帝王切開および周産期の血行動態管理におけるクリアサイトシステムの有効活用

■研究会・地方会

【第33回北海道ペインクリニック学会(札幌)】2017.9.23

  1. 佐々木英昭、御村光子、木村さおり、山澤弦、宮本奈穂子、平陽子、高田幸昌、田村亜輝子、杉本美幸:当ペインクリニックにおいて合併する悪性疾患の診断を得た帯状疱疹の5症例
  2. 高田幸昌、御村光子、杉本美幸、田村亜輝子、高平陽子、佐々木英昭、木村さおり、宮本奈穂子、山澤弦:一時的脊髄電気刺激療法が痛みの軽減と運動療法施行に有用であった複合性局所疼痛症候群の一症例
  3. 高平陽子、佐々木英昭、御村光子、田村亜輝子,木村さおり、宮本奈穂子、杉本美幸、高田幸昌、山澤弦:窮屈な下着に起因する感覚異常性大腿神経痛と考えられた一症例

【第5回北海道SCS症例検討会(札幌)】2017.5.27

  1. 佐々木英昭 : 複合性局所疼痛症候群に対する脊髄刺激療法

【第23回日本胸腔鏡下交感神経遮断研究会(横浜)】2017.10.7

  1. 御村光子、佐々木英昭、山澤弦、宮本奈穂子、高田幸昌:耳鼻咽喉科疾患に対する胸腔鏡下交感神経遮断術の効果
  2. 佐々木英昭、御村光子、宮本奈穂子、木村さおり、平陽子、高田幸昌、田村亜輝子、杉本美幸、山澤弦:手掌多汗症に対して胸腔鏡下交感神経遮断術を施行した症例の職業調査

【第4回北海道疼痛研究会(札幌)】2017.10.28

  1. 山澤弦、御村光子、高田幸昌、佐々木英昭:一時的脊髄刺激両方が痛みの軽減に有用であった複合性局所疼痛症候群の二症例

【第14回麻酔科学サマーセミナー(沖縄)】2017.6.30-7.2

  1. 長門真美、中山禎人、山澤弦、山蔭道明:困難気道モデルにおける新型Airway scopの有用性―Airtaraq,Macintosh喉頭鏡との比較検討―第2報

【第18回北海道機能神経外科研究会(札幌)】2017.11.18

  1. 高田幸昌、御村光子、木村さおり、佐々木英昭、宮本奈穗子、山澤弦、高平陽子:微小血管減圧術、ガンマナイフ後に再発した三叉神経痛に対する神経ブロック

■講演等

【第7回 札幌耳鼻咽喉科カンファレンス(札幌)】2017.2.4

  1. 御村光子:特別講演「耳鼻咽喉科疾患と神経ブロック」

学会・社会活動

■審議会・委員等

御村光子:

<院内・学内>

  1. 札幌医科大学麻酔科同門会監事 平成23年〜

<院外・学外>

  1. 札幌市医師会学術・生涯教育委員会委員 平成27年7月〜
  2. 北海道ペインクリニック学会 常任幹事 平成28年度〜
  3. 日本胸腔鏡下交感神経遮断研究会 幹事 平成21年度〜
  4. 北海道痛みを考える会 幹事 平成22年度〜
  5. 北海道機脳神経外科研究会 世話人 平成28年度〜
  6. 札幌市麻酔・ペインクリニック医会幹事 平成18年度〜

■社会人学習などへの貢献

御村光子:

  1. 持田製薬社員研修、講演.「ペインクリニックにおける診断と治療」2017.09.20
  2. NTT東日本札幌病院第208回健康セミナー「ペインクリニックでの治療と診断:治る病気と軽くなる痛み」2017.07.29

■その他の社会貢献

①テレビ出演・新聞記事への貢献(ネット記事も含む)

御村光子:

  1. 寄稿文「麻酔科医と高齢化」札幌医科大学医学部麻酔科学講座開講60周年記念集. 札幌医科大学麻酔科学講座編、2017
  2. 寄稿文「麻酔方法の確立」.赤富士会誌. 札幌医科大学同門会編、2017、p12

■特記すべき参考資料

①座長・司会・モデレータなど

御村光子:

  1. 第42回札幌市医師会医学会(札幌)2017.02.19 司会.麻酔・ペインクリニック 一般演題4題.
  2. 第18回北海道機能神経外科研究会(札幌)2017.11.18 座長. 特別講演T「末梢神経ブロックに関する最新の知見」(演者:笹川智貴、旭川医科大学麻酔・蘇生学講座)

山澤弦:

  1. 第32回札幌麻酔科カンファランス(札幌)2017.10.06 座長.「神経と水の超音波による評価」(演者:山内正憲、東北大学大学院医学系研究科外科病態学講座麻酔科学・周術期医学分野教授)

高田幸昌:

  1. 第1回北海道PNB研究会(札幌)2017.8.5 座長「四肢手術に有用な神経ブロック」(演者:佐倉伸一、島根大学医学部附属病院 手術部 教授)

②その他

宮本奈穂子:

  1. 日本麻酔科学会第65回学術集会実行委員会 第4・小児・産科WGサテライトメンバー

高田幸昌:

  1. 第8回Thiel法固定遺体による麻酔ワークショップ(札幌)2017.1.28-29 実施分担者
  2. 第1回北海道PNB研究会(札幌) 2017.8.5 世話人・ハンズオンセミナー講師

教育活動

■授業など

高田幸昌:

  1. 医学部4年共用試験OSCE・救急 評価担当者

■実習指導

<院内・学内>

  1. 御村光子:第5・6学年臨床実習:20週間、4時間/週、X線透視下神経ブロック、症例紹介など。
  1. 山澤弦:第5・6学年臨床実習:20週間、4時間/週、X線透視下神経ブロック、臨床麻酔など。

宮本奈穂子:

  1. NTT東日本札幌病院 第10回緩和ケア研修会 講師・ファシリテーター、2017.10.27-28
  2. NTT東日本札幌病院 産科病棟・外来スタッフ向け無痛分娩講義、2017.10.17

■参加活動

宮本奈穂子:

  1. J-CIMELS 日本母体救命システム 公認講習会 ベーシックコース受講、2017.11.18